この記事は2023年11月11日に「CAR and DRIVER」で公開された「【誉れ高き血統】ランドクルーザーは「どこへでも行き、生きて帰ってこられるクルマ」。昔も今も、クロカン4WDの頂点である!」を一部編集し、転載したものです。


【誉れ高き血統】ランドクルーザーは「どこへでも行き、生きて帰ってこられるクルマ」。昔も今も、クロカン4WDの頂点である!
トヨタ・ランドクルーザー250。250は従来のプラドの後継となる中核モデル。ランドクルーザーの「ユーザーの生活と実用を支える」という原点に回帰して質実剛健を追求。スクエアを基調とした造形はプロツールに共通する機能美を追求。またオフローダーらしく壊れにくく、壊れても修理しやすい設計を導入

ルーツは1951年のトヨタ・ジープBJ

ランドクルーザーは、現役の日本車で最も長い歴史を刻んできた。誕生70周年を超えた国産唯一のブランドだ。
乗用車で大成功を収める前のトヨタは、トラックが主体のメーカーだった。その経緯もあり早くからクロカン4WDに力を入れてきた。ランドクルーザーの源流は、1951年、警察予備隊の要請で試作されたトヨタ・ジープBJ。BJは自社製のトラックのパワートレーンとシャシーを改造して組み合わせた小型高機能4WDだった。

BJは圧倒的なオフロード性能を発揮したものの、警察予備隊車両には採用されなかった。失意のエンジニアは、その実力を証明するために、史上初めて富士山の6合目(標高2700m)に挑戦。難なく到達する偉業を達成した。その結果、国家警察のパトカーとしての任務を授かることとなったというエピソードが残っている。

【誉れ高き血統】ランドクルーザーは「どこへでも行き、生きて帰ってこられるクルマ」。昔も今も、クロカン4WDの頂点である!
【誉れ高き血統】ランドクルーザーは「どこへでも行き、生きて帰ってこられるクルマ」。昔も今も、クロカン4WDの頂点である!

BJジープは商標権の問題から改名を余儀なくされ、与えられた車名がランドクルーザー(以下ランクル)だった。クロカン車の世界で名声を博していた英国のランドローバーに対し、ローバー(海賊)を駆逐するクルーザー(巡洋艦)になるという決意が込められていた。

やがてランクルは1955年に20/30系に、1960年には後継の40系に進化した。改良を重ねながら24年にわたり現役を務めた40系は堅牢性が高く支持され、トヨタの名を世界に知らしめた。
一方でRVとしての価値も追求した1967年登場のステーションワゴンタイプの50系や、上級装備を充実させた1980年デビューの60系という乗用系も誕生。ランクルは元来のヘビーデューティ系と乗用系という2つの流れを確立する。

ランクルはクロカンの王者。基本の70系は世界中で愛され、再導入が決定

40系の後を受け、1984年に70系が登場すると、ランクルの輸出比率は生産台数の過半数を大きく超えた。それは、ランドローバーの独壇場だったクロカン4WDの世界でランクルが名実ともにトップの座についたことを意味した。巡洋艦が海賊を駆逐したのだ。

【誉れ高き血統】ランドクルーザーは「どこへでも行き、生きて帰ってこられるクルマ」。昔も今も、クロカン4WDの頂点である!
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ランクルがなによりも重視するのは、耐久性と信頼性、そして悪路走破性である。クロカン4WDに大切な性能は何かを考え、それを徹底的に追求し、発展を重ねてきた。その結果、世界中の悪路で素晴らしいパフォーマンスを発揮。過酷な条件下で使われる海外での評価をますます高め「世界一タフ」という評価を確立する。

ランクルのタフさを象徴するのが、トヨタBJの直系といえる70だ。登場からまもなく40年が経過するが、基本設計を変えずに生産を継続。世界には「70でないと生活が成り立たない」という国や地域がいくつも存在する。

日本国内における70の販売は2004年に終了した。しかし2014年には誕生30周年を記念して期間限定で再販。そして今回、時代に即した改良を施し、見た目もリフレッシュしたうえで、日本でも販売される方針が明らかにされた。新たな70の日本仕様は2.8リッター直4ディーゼルターボと6速ATの組み合わせ。定評のオフロード性能はそのままに、オンロードの乗り心地もリファインされているという。

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ランクルのもうひとつの個性、乗用系は高級SUVとして名を馳せることになる。60系の後継として1990年に登場した80系は、車体が一気に大柄になり、丸みを帯びたラグジュアリーな雰囲気に大変身。その8年後に登場した100系は、オイルマネーで潤った中東で人気が爆発。2007年登場の200系でその地位を揺るぎないものとし、2019年にはシリーズ累計生産台数が1000万台を超えた。

2021年に登場した現行の300系の評価も高い。これまでのランクルが築いてきた価値を一段とハイレベルに引き上げ、「クロカン4WDの頂点」という地位を不動にした。300系の特筆ポイントは、TNGAに基づくメカニズムの全面刷新。約200kgの軽量化を果たすと同時に、エンジンはガソリン自然吸気のV8が廃止されて、V6ターボになったほか、ディーゼルが復活したことが特筆できる。

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ランクルの本質は、「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」ことにある。日本ではそこまでの性能は必要なくても、圧倒的なオフロード性能と品質こそランドクルーザーの価値である。乗用系が高級SUV市場の覇権を握ったのは、性能の裏付けがあるからだ。

最新250のルーツとなるプラドは70系の乗用ワゴンとして誕生

70系をベースに乗用車の要素を身につけたシリーズが、プラドの成り立ちだ。本流のヘビーデューティな70バン系と区別するため、トヨタはバンを70ヘビー系、ライトデューティなワゴンを70ライト系と呼んだ。70ライト系ワゴンを4ドア化して乗用車テイストのデザインを与え、プラドのサブネームを付けたモデルが1990年に誕生。RVブームもあって一躍人気モデルとなった。

1996年に登場した2代目はハイラックス・サーフと共通性の高い内容。2002年に3代目に、2009年に4代目に進化した。ランクルの自販連・公表値はプラドとの合計で、200系のモデル末期など多いときには9割がプラドを占める時期もあったほどだ。

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発表された最新の250は、プラドのサブネームが外され、300系の弟分、というよりも、むしろこちらを中核に据えていくという意思表示がなされた。250は、より多くの人々の生活を支えるために、ユーザーが求める本来の姿に戻すという基本理念を受けて大変身。質実剛健を追求し、ランクルの原点に回帰することをコンセプトに開発を進めてきたという。

代替わりのたびに、やや軟派な路線となっていた外観は、ガラリと雰囲気が変わった。かつてのFJクルーザーとの類似性も見て取れるが、かなりスクエアになったフォルムから、クロカン4WDとしての王道への回帰が感じられる。
中核となる世界戦略車らしくボディサイズは大柄になり、30年あまり前に80系で最適値として導き出された2850mmのホイールベースは、300系に受け継がれただけでなく、250にも採用された。

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また、数々の先進装備はもちろん、マルチテレインセレクトや、スタビライザーを任意でON/OFFできるなど凝ったデバイスが与えられている。日本仕様は2.8リッターディーゼルターボと、2.7リッターガソリンの構成だが、北米・中国向けには、ランクル史上初のハイブリッド車が設定される点も注目である。

【ルーツ物語】世界の道を知り尽くした、かけがえのない相棒として発展

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ランドクルーザーの歴史は1951年から始まった。誕生のきっかけは、警察予備隊(現在の自衛隊)用として1950年に国が、国産メーカー数社に多用途4WD車の開発を依頼したこと。トヨタが試作車を完成させたのは、1951年1月。これがランクルのルーツ、「トヨタ・ジープBJ」だった。BJは予備隊車両には選ばれなかったものの、タフさとパワフルさが海外で高く評価され生産を拡大。1960年に登場した40型で人気を確定する。現在の300系の直接的なルーツは、1967年デビューのFJ56V型。今回250型に発展したプラドは1990年にデビューした。FJ56V型は、4ドアワゴンボディと、高出力6気筒エンジンの組み合わせで世界最強4WDと評価された。一方のプラドは、70型(1984年)の信頼性をそのままに、快適性を磨き上げたクロカン4WDとして人気を博す。デビュー当初は2.4リッターディーゼルターボを搭載。コイルバネ式のサスペンションを採用していた。

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Writer:岡本幸一郎、Photo:TOYOTA


(提供:CAR and DRIVER