M&Aへのアクセルを加速

答えはノーだ。むしろコロナ禍を境に、M&Aにアクセルを踏み込んでいる。

2000年以降取り組んだ買収は合計7件で、途切れた年はない。2020年、21年各1件、22年2件、23年はここまで3件に上る。いずれもターゲットは地場の運送・倉庫会社だ。地域も各地に散らばる。

今年の顔ぶれをみると、7月にトラック運送業、ウインローダー(東京都東村山市。売上高8億9000万円)の株式を追加取得し、子会社化した。2014年に資本・業務提携し、ウインローダーの株式を約14%取得していたが、今回、持ち株比率を約75%に引き上げた。

10月初めには、丸嶋運送(奈良県天理市。売上高16億3000万円)、山一運輸倉庫(静岡県富士市。売上高19億5000万円)の全株式を取得し、子会社化した。

丸嶋運送は中小ロット便を強みとし、関西と関東に配送網を持つ。一方、山一運輸倉庫は地元の富士市の主要産業である製紙関連の物流をメーンとする。

それ以前は、2020年に御幸倉庫(愛知県春日井市)、21年に高岡通運(富山県高岡市)、22年にサンライズトランスポート(岩手県一関市)を傘下に収めた。

トナミHDは商品の保管・配送を一括して請け負う物流受託(3PL)の拡大に力を入れており、倉庫業を併営する運送会社の買収が総じて目立つ。

次期中計で大型買収の出番は?

同社は現在、3カ年の中期経営計画「TONAMI New Plan2023」(2022年3月期~24年3月期)の最終年度にある。DX(デジタルトランスフォーメーション)による生産性向上、物流サービスと輸送事業の連携強化などを中計の基本方針とする。

中計に掲げる2024年3月期の業績目標は売上高1600億円、営業利益80億円。これに対し、現時点の売上高予想は1500億円と計画を100億円下回る。営業利益は80億円と計画通りの着地を想定しており、業務効率化やコスト管理の強化が奏功する形だ。

ただ、売上高1500億円については前回の中期経営計画の最終年度(2021年3月期までの3カ年)で掲げていた目標と同じで、達成時期が3年遅れとなる。

複数の荷主の貨物をまとめて全国に運ぶ路線トラックの分野ではセイノーホールディングスを筆頭に、福山通運、トナミHD、名鉄運輸が4強を形成する。この分野をめぐっては今年8月、名鉄運輸と日本通運が2025年1月までに段階的に事業統合を進めることで合意。業界再編の引き金になる可能性も秘める。

国内総貨物量は人口減少や産業構造の変化などの影響を受け、減少に向かうことが予想されている。こうした中、トナミHDが「100年企業」に向け、持続安定的な成長基盤をどう確保していくのか。次期の新中計の期間中に、大型買収の出番も十分にありそうだ。

◎トナミHDの歩み

主な沿革と出来事
1943 戦時下、11運輸業者が合同で「礪波運輸」を富山県礪波市に設立
1952 本社を富山県高岡市に移転
1961 東証、大証の各2部上場(1984年に各1部上場)
1962 トナミ運輸に社名変更
1996 日本運輸(横浜市、現トナミ国際物流)を子会社化
2002 更生会社の京神倉庫(京都市)を子会社化
2005 中国・上海に事務所を設立
2007 阿南自動車(長野県諏訪市)を子会社化
2008 持ち株会社制へ移行し、トナミホールディングスに社名変更
2010 INPEX傘下の第一倉庫(現トナミ第一倉庫物流、名古屋市)を子会社化
2011 中国・大連に托納美国際貨運代理(大連)有限公司を全額出資で設立
タイのトラック輸送会社マハポーントランスポートを子会社化
2013 タイの物流企業エイチアンドアールフォワーディングを子会社化
情報システム開発のシー・フォーカス(現トナミソリューションズ、京都市)を子会社化
2014 三菱マテリアル傘下の菱星物流(現関東トナミ運輸、埼玉県熊谷市)を子会社化
2016 中央冷蔵(広島市)を子会社化
テイクワン(埼玉県川口市)を子会社化
2018 ケーワイケー(千葉県柏市)を子会社化
2020 新生倉庫(広島市)を子会社化
御幸倉庫(愛知県春日井市)を子会社化
2021 高岡通運(富山県高岡市)を子会社化
2022 サンライズトランスポート(岩手県一関市)を子会社化
東証プライム上場に移行
2023 7月、ウインローダー(東京都東村山市)を子会社化
10月、丸嶋運送(奈良県天理市)を子会社化
10月、山一運輸倉庫(静岡県富士市)を子会社化

文:M&A Online