今後は介護分野でのM&Aが中心に

そして今回は自社を「買収」することになった。ベネッセ創業家がスウェーデンの投資ファンドのEQTと組んで、TOB(株式公開買い付け)を実施し、全株式の取得を目指す。買付代金は最大2079億円。少子化による学童人口の減少や、入試改革に伴う旧来型の通信教育や模擬試験の需要低下など、国内教育市場をめぐる経営環境が厳しさを増す中、中長期的な視点で事業構造改革に取り組むのが狙い。TOBは2024年2月上旬をめどに始める。

買付主体はEQTが設立した買収目的会社ブルーム1。ベネッセ株の買付価格は1株につき2600円で、TOB公表前日の終値1791円に45.13%のプレミアムを加えた。買付予定数は7998万331株。下限は所有割合49.56%にあたる4781万8900株で、創業家の資産管理会社2社の保有分17.11%(TOBには不応募)と合わせて66.67%となる。

公開買付代理人には野村証券を起用する予定。ベネッセはTOBに賛同し、株主に応募を推奨している。TOBが成立すれば、東証プライム市場への上場が廃止となる見通しだ。

ベネッセの2019年3月期から2023年3月期までの5カ年の中期経営計画では、最終年に売上高6000億円、営業利益600億円の目標を掲げていた。しかし、2023年3月期の業績は売上高4118億円(前期比4.6%減)、営業利益206億円(同2.2%増)と、大幅な未達に終わっている。

ベネッセは現在グループの利益を支えている「コア教育」が少子化の流れを受けて市場成長性が低いと予想されることから、介護・保育事業の「コア介護」、大学・社会人教育や海外事業といった「新領域」にシフトする方針だ。MBOによる非公開化で、ベネッセは目先の業績にとらわれることなく、大胆な事業ポートフォーリオの組み換えにチャレンジできる。

M&A Online

(画像=ベネッセホールディングスの2024年3月期業績見通しの対前年比較(同社ホームページより)、「M&A Online」より引用)

注目の分野は収益性が高く、今後も確実な需要が見込める介護事業。2021年6月には介護・福祉・医療分野の広告関連事業を手がけるプロトメディカルケアを42億5000万円で買収しており、介護分野で大型M&Aを加速する可能性が高そうだ。


ベネッセホールディングスの沿革と主なM&A

出来事
1955岡山市に福武書店を創立。中学向けの図書や生徒手帳の発行を開始
1962高校生向けの「関西模試」を開始
1969高校生向け通信教育講座の「通信教育セミナ」を開講
1993米ベルリッツをグループ会社化
1995ベネッセコーポレーションに社名を変更
1995大阪証券取引所市場第二部、広島証券取引所に上場
1997大阪証券取引所市場第一部に上場
2000東京証券取引所市場第一部に上場
2000介護付高齢者向けホームを手がける伸こう会の経営権を取得
2001米ベルリッツを完全子会社化
2003進研アドを子会社化
2005アビバをグループ会社化
2006お茶の水ゼミナールを完全子会社化
2007東京個別指導学院を子会社化
2009ベネッセホールディングスに社名を変更。新設分割会社ベネッセコーポレーションを設立
2010介護付有料老人ホーム運営のボンセジュールを子会社化
2010アビバを譲渡
2012アップをTOBで完全子会社化
2020社会人向け短期集中型英会話教室などを手がけるスタディーハッカーを子会社化
2021介護・福祉・医療分野の広告関連事業を手がける子会社のプロトメディカルケアを買収
2022米ベルリッツを譲渡
2023MBOを実施し、株式を非公開化

この記事は企業の有価証券報告書などの公開資料、また各種報道などをもとにまとめています。

文:M&A Online