「加給年金」という仕組みをご存じだろうか。配偶者や子どもがいて一定の条件を満たしている場合、年金額が加算される仕組みのことだ。対象者であっても受給のための申請・手続きをしないと受け取れない。見過ごされがちな制度であるため、注意が必要だ。

本記事では、加給年金の基礎知識とともに、ほかにも忘れがちな申請について解説する。

「加給年金」とは ?

知っておきたい「加給年金」の仕組み ! うっかり申請忘れで大損の人も ?
(画像=Romolo Tavani / stock.adobe.com)

日本年金機構の公式サイトでは、加給年金について「厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある方が、65歳到達時点 (または定額部分支給開始年齢に到達した時点) で、その方に生計を維持されている下記の配偶者または子がいるときに加算されます」と説明されている。

冒頭でも触れた通り、この仕組みを活用すれば支給される年金額が加算されるため、年金生活を迎えて収入が減ったとしても、配偶者や子どもを支えやすくなる。

加給年金の基礎知識

続いて、加給年金の基礎知識を説明していこう。

どんな条件がある ?

加給年金の対象となるには、被保険者が生計を維持している配偶者や子どもがおり、さらに配偶者と子どもがそれぞれ一定の条件を満たしている必要がある。

例えば配偶者の場合は「65歳未満」であること、子どもの場合は「18歳未満」または「1級・2級の障害の状態にある20歳未満」であることが求められる。

また、配偶者や子どもに一定以上の所得があると、加給年金の対象とならない。具体的には、前年の年収が850万円未満であるか、所得が655万5,000円未満である必要がある。さらに、同居していることや、離れて暮らしている場合は仕送りをしていることなども求められる。

どれくらいの金額を受け取れる ?

条件を満たしている配偶者がいる場合は、年間で22万8,700円に生年月日に応じた特別加算額 (3万3,800~16万8,800円) を加えた金額が加給年金として加算される。

条件を満たしている子どもがいる場合は、1~2人目の子どもの分はそれぞれ年間22万8,700円、3人目以降の子どもの分はそれぞれ年間7万6,200円が加給年金として加算される。

手続きはどこで行う ?

加給年金の加算には手続きが必要となる。手続きは年金事務所か年金相談センターで行う。不明点がある場合、まずは年金に関する相談窓口である「ねんきんダイヤル」を利用したい。

ねんきんダイヤル:0570-05-1165

手続きを忘れていたらどうなる ?

加給年金は手続きをしなければ受け取ることができない。手続きを忘れても5年前までの分であれば遡って請求することができるが、5年以上が経過してしまうとそれもできなくなってしまう。

加給年金と振替加算

加給年金について知識を得たら、「振替加算」についても知っておきたい。

振替加算は、配偶者が65歳になったために加給年金による加算が打ち切られる代わりに、配偶者の老齢基礎年金に加算が行われる仕組みのことを指す。一定条件を満たしている人が対象で、振替加算の金額は配偶者の生年月日によって変わってくる。

ほかに忘れがちな申請は ?

加給年金の制度を知らない人は多く、注意が必要なことは前述の通りだが、年金に関してはほかにも申請漏れに気を付けたい仕組みがある。それが「控除」だ。

年金は額面通りの金額を受け取ることができるわけではなく、所得税などが差し引かれて支給される。この所得税を算出する際、課税対象となる所得の金額が小さいほど所得税も少なくすむ。この課税対象となる所得を小さくできる仕組みが控除だ。

代表的な控除としては、扶養親族などがいる場合の控除のほか、医療費控除や生命保険料控除などがある。扶養親族などがいる場合の控除は「扶養親族等申告書」の提出により可能で、医療費控除や生命保険料控除には確定申告が必要となる。

これらの控除が適用されなければ、実質的に所得税を払いすぎることになるため、申請・手続きは忘れずに行おう。

「年金+α」の視点を早いうちから持とう

「加給年金」と聞くと得をするように感じるが、この制度の趣旨はあくまで配偶者や子どもの生活の維持を助けるためのものであり、一定金額が加算されるからといって、老後の生活の安心度がそれほど高まるわけではない。

もちろん加給年金の申請を忘れないことは非常に重要ではあるが、リタイア後の生活のことを考えるのであれば、年金以外の方法で資産を増やす視点も大切だ。

資産を増やす方法の一つとしては、投資による資産運用がある。資産運用に関する知識がない場合はハードルが高いと感じる人もいるかもしれないが、金融機関の資産運用コンサルティングサービスを利用するといった方法もある。

個人個人に合わせてリスク許容度を加味した提案をしてくれるため、ぜひ利用してみてほしい。

老後に備えるための資産運用の検討を

本記事では、主に加給年金の仕組みについて解説してきたが、最後に紹介したように「年金+α」の視点を持ち、老後に備えるための資産運用を考えることも意識してほしい。年金以外に頼れる収入の柱を作っておくことで、老後の資金に関する不安も解消しやすくなるだろう。

(提供:大和ネクスト銀行


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