NISAはどのような制度なのか、何に注意したら良いのかなどについて知らないと、適切な利用ができません。本記事では、まだ投資について詳しくない人に向けて、NISAの概要から使い方、投資の注意点まで解説します。

NISAの概要

NISAの「つみたて投資枠」&「成長投資枠」の使い方
(画像=NyanTA/stock.adobe.com)

NISAは、株式や投資信託などの運用によって生じた利益に対して通常20.315%(復興特別所得税を含む)かかる税金が非課税になる制度です。国が推し進めている「資産所得倍増プラン」の根幹を成す制度であり、投資初心者から玄人までが多大な恩恵を受けられます。

制度の概要は、以下のとおりです。

投資枠の種類 成長投資枠 つみたて投資枠
対象商品 上場株式や投資信託など 投資信託やETF
年間の投資枠 240万円まで 120万円まで
非課税保有限度額 1,800万円
投資上限 1,200万円 1,800万円
投資可能期間 恒久化
購入方法 スポット購入、積立購入 積立購入のみ
一括購入 不可

ここからは、NISAを活用して投資をする際に、特に知っておきたい基礎知識を解説します。

つみたて投資枠と成長投資枠の併用

長期積立・分散投資に適した投資信託を投資対象とするつみたて投資枠と、上場株式やETFなど幅広い金融商品を投資対象とする成長投資枠を併用ができるので、運用方法に応じて各投資枠を使い分けることができます。

非課税保有限度額は投資枠ごとに異なる

金融商品を取得したときの価格ベース(簿価残高)で、1,800万円が非課税で保有できる限度額となります。つみたて投資枠は1,800万円まで利用できますが、成長投資枠は1,200万円が上限です。例えば、成長投資枠を1,200万円まで利用した場合、つみたて投資枠は残りの600万円までしか投資できません。

非課税保有限度額の復活

NISA口座で保有している資産を売却すると、その買付金額分(簿価分)の非課税保有限度額が復活し、売却の翌年以降に再利用できます。

NISAの対象商品

つみたて投資枠と成長投資枠は、投資可能な金融商品が異なります。それぞれの特徴を理解し、適切な投資先を選定することが重要です。各投資枠の対象商品は、以下のとおりです。

つみたて投資枠の対象商品

金融庁が規定する要件を満たし、長期積立・分散投資に適していると見なされた一定の投資信託が対象商品となります。2025年 2月14日時点で310銘柄(うちETF8銘柄)が対象商品です。

信託報酬などの保有コストが一定水準以下の投資信託が選定されており、銘柄数が限られる分、銘柄の選定はしやすいといえます。相対的にリスクを抑えながら、安定運用できる銘柄がリストアップされています。

成長投資枠の対象商品

つみたて投資枠の対象商品は成長投資枠でも購入可能ですが、「つみたて投資枠の対象外である株式やETFに投資したい」「まとまった金額の資金を一気に投資したい」、あるいは「自分が判断するタイミングで何回かに分けて投資したい」といった場合は成長投資枠を利用できます。

なお、2025年2月14日時点で、成長投資枠で購入可能なファンドは2,377銘柄(うちETF等334銘柄)あります。

つみたて投資枠の使い方4選

つみたて投資枠での運用は、中長期にわたり定期的に購入することによって、リスクを抑えた長期積立・分散投資の実現を目指すもので、以下のような運用方法があります。

インデックスファンドを中心に運用

つみたて投資枠対象商品の多くを占めるのが、国内外の代表的な指数(日経平均株価など)に連動した成果を目指すインデックスファンドです。指数と同じ値動きを目指すためパフォーマンスがわかりやすく、市場を構成する多くの銘柄に投資することになり分散効果も得られます。また、ファンドのなかでは相対的に保有コストが低いことも特徴です。

アクティブファンドを中心に運用

特定の指数を上回る成果を目指すのがアクティブファンドですが、つみたて投資枠の対象となっているファンドは多くはありません。インデックスファンドと比べると保有コストが高く、パフォーマンスが指数を下回る可能性もある点には注意が必要です。つみたて投資枠のなかでも大きなリターンを得ようとする場合は、アクティブファンド中心に運用することも選択肢となります。

長期投資を前提に保有を続ける

一般に運用は長期になるほど、複利効果が働いて資産の拡大ペースが高まる可能性があります。そのため、基本的に購入後は長期保有を続けることも投資の選択肢のひとつとして検討しましょう。

値動きや市場動向に合わせて銘柄を入れ替え

長期保有が有利に働く可能性を説明しましたが、状況によっては銘柄の入れ替えが必要になる状況もあります。経済環境の大きな変化や地政学的リスクの高まりなどにより、値動きが短期的に大きく変化すると予想される場合には、リスク低減につながる銘柄への入れ替えを検討してみましょう。

成長投資枠の使い方2選

投資対象の選択肢が広い成長投資枠は、使い方次第でパフォーマンスが大きく変わってきます。ここでは、成長投資枠の使い方を2つに分けて解説します。

キャピタルゲインを狙って売買

成長投資枠では、購入時よりも高い値段で売却すると、非課税でキャピタルゲイン(譲渡益・値上がり益)を得ることができます。前述の通り、NISAでは保有資産の売却で非課税保有限度額が復活するため、年間の投資枠以内とはいえ永続的に売買を繰り返すことができます。

インカムゲインを狙って長期保有

NISA口座で保有している株式や投資信託からインカムゲイン(配当金や株主優待、分配金など)が得られます。

株式投資の場合は、「配当金を毎年増やしている」「長期的に配当金を減らしていない」「魅力的な株主優待を配布している」などの銘柄などが長期保有の投資対象になります。

投資信託の場合は、分配金が基準価額(値段)に直接影響を与えるため、分配金の利回りではなく、トータルリターン(※)を確認することが大切です。中長期でトータルリターンが伸びることが期待できるのであれば、インカムゲインを狙った長期保有を検討してみましょう。

(※)投資信託の普通分配金を含む運用益から購入時手数料や信託報酬などを差し引いたもの。

リスクの高いNISAの使い方

なかには、「NISAの年間投資枠を目一杯利用しないと損だ」と考える人もいるかもしれません。非課税枠は、早く・大きく使うほうが恩恵も大きいですが、無理をすると損失も大きくなります。ここでは、どのようなNISAの使い方だとリスクが高くなるのかについて確認してみましょう。

いきなり両投資枠をフルで活用する

つみたて投資枠と成長投資枠を合わせると、年間360万円までを非課税で投資できます。投資資金には、貯金や給与などを充てることが多いと思いますが、資産形成のために生活に支障を来しては本末転倒です。

余裕資金がない場合は、投資枠をフル活用する投資は避けましょう。非課税保有期間は無期限化なので、焦らなくても非課税保有限度額を使い切ることは可能です。非課税保有限度額を埋めることを優先せず、自分に合ったペースで投資を続けることが大切です。

リスクを考えず高いリターンだけを追求する

投資の世界でリスクとは、価格変動の幅を意味します。高いリターンを追求するということは、同程度の損失(リスク)を負う覚悟が必要です。このようなリスクを理解したうえで高いリターンを求めるのは問題ありません。

そもそもリスクを適切に理解するためには、投資の勉強だけで不十分なこともあるので、少額から投資を始め、その経験を通じた学びも取り入れましょう。また、年齢や投資方法によって背負えるリスクは異なります。リスクとリターンのバランスを理解したうえで投資方法・投資対象を選ぶことが重要です。

投資知識ゼロからNISAを始める際の注意点

NISAで投資を始める場合、何に注意したら良いのでしょうか。ここからは、特に知っておきたい3つの注意点を解説します。

【注意点1】数百円〜数万円から投資を始める

NISAでは、毎月100円の積立投資や、株価が数百円の上場株式への投資からでも始められます。もちろん、最終的にはもっと大きい金額でなければ本格的な資産形成とはなりませんが、とにかく投資の第一歩を踏み出すことが重要です。

「投資できる金額がわずかだから投資しない」ということではなく、「少しでも余裕資金があれば投資に回そう」と考えることで、少額であっても「投資で利益を出せた」という感覚を実感することに意味があります。

【注意点2】理解できる金融商品から投資していく

NISAで投資できる投資信託や株式の種類は膨大な数に上り、選択は容易ではありません。だからといって、世の中にあふれる銘柄推奨に関する情報を鵜呑みにしてはいけません。

「どんな銘柄かわらないが株価が上昇するらしい」といった理由だけで投資判断を下すと、思わぬ損失を被る可能性があります。必ず自ら一次情報を確認し、投資対象として相応しいかどうか考える癖をつけましょう。

【注意点3】少額運用から始めて投資の勘やスキルを磨く

投資経験が浅い方ほど、失敗も含めて経験を積み重ねることが大切です。経験を積むために大きな資金を投下する必要はありません。少額の投資であっても自分の銘柄選定や投資タイミングの良し悪しを振り返ることで、投資のスキルが身に付きます。投資に慣れて利益を継続的に出せるようになったら、徐々に投資金額を増やしていくことで、大きな損失を避けられる可能性を高められるでしょう。

NISAとiDeCoの違いとは

NISAとよく比べられる金融商品に、iDeCoがあります。これから投資や資産運用をする人にとっては、NISAとiDeCoの違いを知ったうえで、「自分はどちらに投資したほうがよいのか」について考えることが必要です。ここからは、NISAとiDeCoの違いについて解説します。

iDeCoとは

iDeCo(イデコ)とは、個人型確定拠出年金(私的年金)のことです。毎月、掛金を拠出かつ運用先を選定すると、60歳以降に年金または一時金として受け取ることができます。掛金は全額所得控除でき、運用益は非課税となるのが特徴です。年金として受け取ったときも税の優遇措置を受けられる場合があり、とてもお得な制度になっています。

iDeCoは、掛金を自分で運用できるという特徴があります。例えば、公的年金となる国民年金・厚生年金の場合、自分で運用先は選べませんが、iDeCoの場合は自分で運用先を選ぶことができます。

NISAとiDeCoの違い

NISAとiDeCoには、次のような違いがあります。

NISA iDeCo
加入対象者 日本在住の18歳以上 国民年金加入者(65歳未満)
最低積立額 月100円から
(金融機関によって異なる)
※積立投資の場合
月5,000円から
投資上限額(年間) 360万円(つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円) 24万~81万6,000円(ほかに加入している年金制度などによって異なる)※
対象商品 <つみたて投資枠>
長期の積立や分散投資に適した一定の投資信託

<成長投資枠>
上場株式、投資信託など
<元本変動型>
投資信託

<元本確保型>
預金
保険商品
税法上のメリット 運用益や売却益がすべて非課税 運用益がすべて非課税
掛金が全額所得控除になる
受取時の税金優遇を受けられる可能性がある
運用期間 無期限 75歳まで
資金の引き出し 自由 原則60歳以降になるまで不可
※2025年2月22日時点の情報
※税制改正などで金額などが変更になる場合がありますので都度公式HPで最新情報を確認しましょう。

iDeCoの目的は、主に公的年金に上乗せして老後資金を確保することです。一方、NISAの目的は老後資金の確保に限らず、結婚資金や住宅取得資金の確保など、自分のライフプランに合わせた資産形成が行えることです。そのため、NISAのほうが大きな金額の投資ができるようになっているのが特徴です。

NISAに向いている人とiDeCoに向いている人

NISAとiDeCoでは、制度設計が大きく異なるため、NISAに向いている人とiDeCoに向いている人の特徴も違ってきます。NISAに向いている人とiDeCoに向いている人には、それぞれに次のような特徴があります。

・NISAに向いている人

NISAに向いている人は、主に投資初心者や老後資金以外の資金が必要な人、株式に投資したい人です。NISAは、少額から投資できるため、投資初心者に向いています。また、iDeCoではできない上場株式にも投資可能です。

・iDeCoに向いている人

iDeCoに向いているのは、主に老後資金を確保したい人や節税効果を受けたい人、60歳までお金を引き出さなくても良い人です。iDeCoは、原則60歳以降になってからしか資金の引き出しができません。そのため、60歳までお金を引き出さなくても良い人に向いています。また、運用益、掛金、受け取る年金それぞれに節税効果が期待できるので、節税したい人にもおすすめです。

まとめ

NISAは、投資を始めるにあたって優先的に活用したい制度です。最初の投資資金が小さくても長期の運用によって得られた利益が非課税になることで、NISAなどの税制優遇制度を使わない場合と比べると時間が経過するごとに資産に大きな差が生まれます。

※本記事はNISAに関わる基礎知識を解説することを目的としており、NISAの利用を推奨するものではありません。

(提供:Wealth Road