近鉄グループホールディングス<9041>は、近鉄エクスプレスの子会社化で業績が急伸している。

2023年11月13日に発表した2024年3月期第2四半期決算では、売上高が29.0%の増加となり、営業利益は3.29倍に跳ね上がった。同第1四半期も同様の状況で売上高は2.12倍に営業利益は3.48倍という大きな伸びだった。

2022年7月に近鉄エクスプレスを傘下に収めたことで、2023年3月はもちろん、2024年3月期の第1、第2四半期にも業績押し上げ効果が表れているのだ。

ただ先行きについては暗雲が立ち込めており、2024年3月期の業績予想は当初予想よりも1770億円の減収、40億円の営業減益を見込む。業績急伸の要因、下方修正の要因はともに近鉄エクスプレスのM&Aにある。そこには何があるのか。

国際物流業貨物量が減少、販売価格も下落

近鉄エクスプレスは1948年に近畿日本鉄道(現近鉄グループホールディングス)の一部門として、国際貨物、旅客の取り扱いを始めたのがスタート。1955年に近畿日本ツーリストに社名を変更。その後1970年に同社から近鉄航空貨物として独立。1989年に近鉄エクスプレスとなった。

2022年当時、近鉄グループは、近鉄エクスプレスの株式47%余り(間接保有を含む)を保有し、持ち分法適用関連会社としていた。

コロナ禍やウクライナ情勢などで国際物流の環境が変化する中、近鉄グループとして経営資源の最適配分を行えるよう、TOB(株式公開買い付け)を実施し子会社化した。

TOB直前の近鉄エクスプレスの決算(2022年3月期)は、コロナ禍の影響で減少していた国際輸送需要が大幅に増え、海上コンテナ物流の需給の逼迫や運賃の上昇などにより、売上高は9804億4100万円(前年度比61.0%増)、営業利益は624億7500万円(同82.8%増)と大幅な増収増益となった。

M&A Online

(画像=「M&A Online」より引用)

こうした数字が2024年3月期はフルに加わってくるため、当初は2024年3月期の売上高を18200億円(前年度比16.6%増)、営業利益840億円(同25.1%増)と予想していた。

ところが2024年3月期第2四半期決算時に売上高を1兆6430億円(同5.3%増)に、営業利益を800億円(同19.1%増)に引き下げたのだ。

理由は国際物流業で貨物の取扱量が減少しているほか、価格競争の激化により販売価格も下落しているためという。

同社では、運輸業、流通業、ホテル・レジャー業で需要の回復が想定を上回ると見込んでいるものの、国際物流の落ち込みをカバーできず、売上高は1000億円を超える減少を余儀なくされた。

減収に伴って営業利益も減少、前年度に比べると2ケタの営業増益とはなるものの、M&Aの効果が薄まることは避けられない。