ストライク<6196>とコンサルティング先の歯科医院が590を超えるPMC(札幌市)は2023年11月19日に「加速する歯科医院M&Aの実態 歯科医院経営者のための最新のM&A戦略を専門家が解説!」と題したオンラインセミナーを共同で開催した。

歯科医師や歯科医院経営者らを対象にしたもので、PMC代表取締役会長兼CEO(最高経営責任者)の中野善夫氏が、歯科医院のM&A戦略を立案実行する方法について講演し、ストライクのヘルスケアチームアドバイザーで公認会計士、税理士の浅見雄人氏が歯科医院のM&Aの現状などについて解説した。

譲渡価格設定に知見が不足

セミナーではまず、中野氏が、歯科医院の出口戦略として、M&Aへの関心が高まっているものの、譲渡価格や譲渡後の生活について不安を持つケースが多いと現状を分析。このため同社には、標榜診療科目(小児歯科や一般歯科など)によって譲渡価格は変わるのか、自費診療中心の経営と、保険診療中心の経営ではどちらの事業価値が高いのか、さらにレセプトの枚数や患者単価は譲渡価格に影響するのか、といった質問が多く寄せられているという。

こうした状況を踏まえ、営業権(のれん)価値を高めて、歯科医院M&Aを成功へ導くためにはどのような準備をすればよいのかについて言及。その第一が「かかりつけ歯科医療機能強化型歯科診療所(か強診)機能の獲得と強化」であり「歯周病予防と長期管理」や「地域包括連携の実現」に取り組むべきだとする。

生活習慣病や生活習慣病に関わるさまざまな病気のスタートが、う蝕(虫歯)と歯周病といわれており、厚生労働省は歯科医療に対して治療中心型から口腔機能管理型にシフトすることを要望している。

中野氏は厚生労働省のこの方針に沿った形で歯科医院を運営することで、将来の価値である営業権(のれん)価値を高めることができ、M&Aを成功に導くことができると説く。

歯科医院の特殊性を知らなければ不利に

さらに歯科医院は一般企業と違って、のれんの評価に特殊性があり、これを知らずにM&Aを行うと譲渡側の歯科医院に不利な状況が生まれることがあるとしたうえで、のれん価値を高める方法として「保険診療ボリュームの獲得と自費診療域の拡大」「人材戦略 (歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士)の確立」「医療DXへの取り組み」「診療効率改善と生産性向上」などを挙げる。

この中で、収益性を高めるために自費診療を増やす医院が多いものの、一般的には自費診療は院長が中心となって行われており院長が引退すると、価値付けができなくなる。自費診療が少なく、保険診療のボリュームが大きい医院の方が安定しているため、のれんの価値が高くなるという。

また、人材戦略に注力している歯科医院でなければ、のれん評価を高くすることが難しいとし、例として研修医の教育機関としての認定を持つ医院は、ドクターを集め、教育し、定着してもらうという機能が強いため、のれんの評価は高くなるとした。