生産性の向上とのれんの算出について

生産性については、一般の歯科医院はドクターや歯科衛生士、受付などすべての人員を含めた一人当たりの月間の収入が76万円ほどであり、同社のクライアント107院の平均は130万円ほどと高く、この107医院のうち「か強診」認定取得医院は101医院に達することを公表。全国での「か強診」の取得率は18.3%で、この3年ほどは変わっておらず、生産性を高めるためには「か強診」取得は不可欠とした。

M&A Online

(画像=「M&A Online」より引用)

さらに、治療型なのか定期検診型なのかについては、治療型医院の場合は、のれんの評価は低く、定期検診型の医院はのれんの評価が高いという現実があるとし、定期検診型への移行に取り組めば生産性は必ず向上するとした。

最後にのれんの算出方法に触れ、税引き前利益の3年分に0.8をかけた数字をのれん評価として提示する仲介事業者が多いとしたうえで、出口戦略を実現するまでの間に価値を最大化するためにやるべきことは明白で「是非そうしたことに取り組んでいただき、(歯科医院経営者に)幸せな将来をつかみ取っていただきたい」と締めくくった。


相談はM&Aの3年前でも早くはない

ストライクの浅見氏は、歯科クリニックのM&Aが増加しており、今後ますます増加していくとの予測を披露。その理由として歯科医院の高齢化をはじめ、個人クリニックが減少し、医療法人が増加していることや、人口減少に伴い患者数の減少が見込まれることなどを挙げた。

厚生労働省の2020年のデータによると、60歳以上の歯科医師は全体の33.5%に達しており、歯科医師の3人に1人が60歳以上となっていると指摘。歯科クリニックの数については、2022年10月時点の歯科診療所数は6万7755で、このうち個人は5万896、医療法人は1万6241となっており、前年同期よりも個人が754減少し、医療法人が606件増加していると報告した。

さらに日本では、高齢化率の上昇とともに人口が減少傾向にあり、将来は患者数の減少が見込まれるとし、これら3点から歯科クリニックのM&Aは増加傾向にあると結論づけた。

このあとストライクが支援した、理事長が60代と高齢なものの後継者がいなかった関西の歯科クリニックや、理事長が早期の引退を希望していた矯正歯科専門の関東の歯科クリニックなど三つのM&A事例を紹介。続けて歯科クリニックの価値算定方法について説明し、利用されることが多いマルチプル法について解説した。

最後に、M&Aを検討する時期について触れ、M&Aは通常半年から1年くらいの時間がかかり、M&A後の引継ぎなどを考えると1年から3年ほどの期間が必要になる。

このため自身が引退したい年齢の3年ほど前から相談しても早くはない。さらに将来価値を高めたいとの考えがあるなら5年前、10年前から準備を始めることもあり得るとし、医療法人が抱える多くの課題の解決策の一つの手段としてM&Aが有効なため「ぜひ一度相談いただけたら」と結んだ。

文:M&A Online