新分野への出資も

一方、スマートフォンの台頭など視聴環境の変化に合わせ、2017年度からは冒頭で触れた「360°戦略」を展開し、放送分野にとどまらず組織を大きくしている。


その戦略にもとづく出資が次のようなものだ。テレビ朝日ホールディングスでは、2020年にバーチャルイベントプラットフォームを展開するクラスターへ、2023年にリアルメタバースプラットフォームを展開するPsychic VR Labへ出資。テレビ朝日は2020年にEC・通販事業のイッティを買収して完全子会社化。さらに、360°戦略のシンボリックな投資と位置付ける、電子書籍ストア運営のBookLiveへ出資し、持分法適用関連会社化している。

今後のM&A戦略は?

このうち、BookLiveへの出資は2025年までの中期経営計画で定めた戦略投資の第一弾となる案件で、オリジナルコンテンツの共同制作や、次世代クリエイターの育成・獲得につなげ、IP活用を進めていく方針だ。

この戦略投資の規模だが、M&Aを含み約250億円を想定。M&Aの対象になるのは、報道情報・バラエティ、ドラマ・映画、アニメといった「コンテンツ・IP」、広告配信、DX・デジタルコンテンツなどの「インターネット」、ショッピングを始めとした「ビジネス」分野だ。

このほか、M&Aの対象になるとは明記されていないが、注力する新領域として、「アニメ・ゲーム」「メタバース」を挙げており、定年後のシニア世代に向けたコンテンツ制作として、「アクティブシニア」の事業化、テレビ朝日が出資するeduleap、SOZOWなどの「教育系事業」と連携も模索する。

M&A Online

(画像=経営計画2023-2025より、「M&A Online」より引用)

これまでの傾向を見る限り、追加出資をして段階を踏んで子会社化することが多い。出資には非常に慎重な様子も見て取れ、M&Aを行うにしても、一気に経営権を獲得し完全子会社化するケースは想定しづらいが、果たして今後はどうだろうか。

文:M&A Online