2030年度に2兆5000億円に
「TAISEI VISION 2030」は、中長期の建設市場が減少傾向にあることや、建設業の担い手の減少が見込まれるなどの厳しい状況はあるものの、同社にとってはまだ拡大の余地があるとの判断を踏まえて策定した。
その中で、2031年3月期に売上高2兆5000億円、当期利益1500億円の目標を掲げた。その第一歩となるのが、2022年3月期から2024年3月期までの中期経営計画で、最終年度に売上高2兆円、当期利益1000億円を目指している。
同社が2023年11月13日に発表した2024年3月期第2四半期決算時に業績を修正し、売上高を引き下げた(1兆6900億円)結果、目標の2兆円に対し、現状は3100億円届かない状況にある。
営業利益(640億円)と経常利益(670億円)は据え置き。1000億円を目標としている当期利益は、20億円引き上げた(増加率4.4%)ものの、目標の半分にも届かない470億円にとどまる見通しだ。
ピーエス三菱のTOBが成立すれば、同社の数値が加わるわけだが、仮に2024年3月期の数字が全額加わっても、売上高2兆円、当期利益1000億円の目標には到達しない公算が高いと言える。
M&A投資は別枠で実施
3カ年の中期経営計画では、投資についても目標値を設定しており、技術開発投資に600億円、情報投資に600 億円、DX(デジタルトランスフォーメーション=デジタル技術で生活やビジネスを変革する取り組み)に300億円といった状況で、3年間の累計で2500億円を投じる計画だ。
M&Aについては、これとは別に「事業領域拡大を目的とするM&A投資などは別枠で実施する」としており、M&Aに対する期待の高さがうかがわれる。
2031年3月期を最終年度とする「TAISEI VISION 2030」でも、M&A投資については金額を定めていないものの、同様の取り組みが予想できるため、ピーエス三菱に次ぐM&Aは、そう遠くない時期に表面化する可能性は低くはない。
4期ぶりの増収営業増益に
直近の建設業界は、工事量は多いものの、採算性の低い工事が多いことに加え、建設資材の高騰などの影響で、利益が圧迫される状況にある。
大成建設のここ数年の業績推移を見ると、2021年3月期はコロナ禍で建設投資が減少した影響で、2ケタの減収、営業減益に陥り、2022年3月期はコロナ禍後を見据えた設備投資や都市部での大型再開発事業などで回復傾向が現れたため増収に転じものの、建設資材の高騰やウクライナ情勢などから、営業減益を余儀なくされた。
さらに2023年3月期は、民間建設投資が拡大したことや公共投資が底堅く推移したことなどから、2期連続の増収となったものの、建設資材の高騰に加え、施工中工事の是正工事に伴う損失が発生したことなどで、大幅な営業減益に陥った。
そうした中、2024年3月期は4期ぶりに営業増益に転じる計画で、コロナ禍の影響が少なかった2020年3月期(6.1%の増収、9.4%の営業増益)以来の増収営業増益(2.9%の増収、16.9%の営業増益)を達成できる見込みだ。
ピーエス三菱のTOBをはじめM&Aが今後の業績にどのような影響を与えてくるのか。2030年に向けた動きに注目が集まる。
文:M&A Online