大手ゼネコンの大成建設<1801>がM&Aで大きく変わろうとしている。
同社はこれまで企業や事業の買収にはほとんど手を出してこなかったが、2024年3月期を最終年度とする中期経営計画の中で、重点施策の一つとして成長が見込まれる電気通信分野や、他社から後れをとっている分野、エリアでM&Aを行うことを明記した。
その取り組みの一つとして現在、ピーエス三菱<1871>に対するTOB(株式公開買い付け)を実施中で、2023年12月11日まで買い付けを行っている。
2031年3月期を最終年とする「TAISEI VISION 2030」でもM&Aについては前向きで「M&Aの活用などによる事業領域の拡大」を戦略として掲げる。創業150年の老舗企業がM&Aでどのように変わっていくのだろうか。
M&Aの真価が
M&A Onlineが構築したM&Aデータベースによると、2008年以降同社が適時開示したM&Aは、今回のピーエス三菱に対するTOBが初めて。同社が公表している沿革でも、1966年に実施した吸収合併(子会社の完全子会社化は除く)以来となる。
このことからは2023年を最終年とする中期経営計画でM&A戦略を打ち出したのは、同社にとっては大きな変化だったことがうかがわれる。そのピーエス三菱へのTOBでは、最大240億円ほどを投じて株式の50.2%の取得を目指す計画だ。
ピーエス三菱の筆頭株主であるUBE三菱セメント(東京都千代田区)や、第2位株主の太平洋セメント<5233>がTOBに応募する予定で、ピーエス三菱もTOBに賛同しているため、このTOBが成立する可能性は高い。
ピーエス三菱は成長が見込まれる高速道路のリニューアル分野やコンクリート橋梁新設工事などに強みを持っており、傘下に収めることで事業領域の拡充が可能になる。
ピーエス三菱の2024年3月期の売上高は1170億円、営業利益は58億円の見込みで、TOBが成立すれば、この数字が加わることになるわけで、業績予想は上振れする見通しだ。
ただ、現状は厳しく、2024年3月については、売上高を700億円引き下げ(減少率4.0%)、1兆6900億円に下方修正した。ピーエス三菱がどこまで、この下落分をカバーできるのか、M&Aの真価が問われそうだ。
数多くの企業を設立
大成建設は1873年に大倉喜八郎氏が、大倉組商会を創立したのが始まり。当初は機械などの輸入とともに施設などの建築を手がけていた。
1887年に日本土木会社を設立して、大倉組商会の土木関係に関する事業を切り離し、この事業を継承。その後、大倉土木組や、大倉組土木部、日本土木、大倉土木などを経て、1946年に大成建設に改称した。
大倉喜八郎氏は、日本を代表する実業家である渋沢栄一氏らとともに、帝国ホテルや帝国劇場など数多くの企業を設立した人物で、東京経済大学や関西大倉学園など学校の設立にも力を入れた。