7~9月金額は8499億円と振るわず

1~9月累計の取引金額は6兆777億円で、前年を27%上回った。四半期別にみると、1~3月の2兆5910億円、4~6月の2兆6367億円に比べ、足元の7~9月は8499億円と低調だった。7~9月は1000億円超の大型案件がゼロに終わり、9月のオムロンによるJMDC子会社化の855億円が期間中、最も大きかった。


日本テレビ、ジブリを子会社化

9月に話題を呼んだのが日本テレビホールディングスによるアニメ制作会社「スタジオジブリ」(東京都小金井市)の子会社化だ。ジブリの設立は1985年。世界的にも知られる日本のアニメ界を象徴する存在だが、高齢となった創業者の宮﨑駿監督(82)、プロデューサー・社長の鈴木敏夫氏(75)の後継者問題を理由に、日本テレビの傘下に入ることになった。

日本テレビはスタジオジブリの株式42.3%を取得(10月6日付)する。取得金額は非公表。所有割合は50%を下回るが、社長を派遣し、実質支配力基準によりジブリを子会社化する。日本テレビはジブリ作品のテレビ放映に加え、映画製作への出資や、「三鷹の森ジブリ美術館」(2001年開館、東京都三鷹市)設立の支援など、長年緊密な関係にあった。

日本テレビとしてスタジオジブリは今年3件目の買収。9月初めにeスポーツ大会運営のJCG(東京都江東区)の子会社化を発表したほか、5月にはファッションEC(電子商取引)サイト大手のla belle vie(ラベルヴィー、東京都港区)を傘下に収めた。在京テレビキー5局の中でM&Aへの積極姿勢が際立つ。

M&A Online

(画像=日本テレビホールディングスが傘下に収める「スタジオジブリ」の本社(東京都小金井市)、「M&A Online」より引用)

DMG森精機、同業の倉敷機械を子会社化

工作機械メーカー中堅のTAKISAWAに対するニデックのTOBは予告通りに9月14日にスタートした。モーター大手のニデックがTAKISAWAに買収を予告したのは7月半ば。TAKISAWAは当初、賛否を示さず、敵対的買収に発展するかどうかが注目されていたが、TOB開始前日に買収の受け入れを表明した。ニデックにとってこの2年余りで国内工作機械メーカーの買収は3社目となる。

こうした動きに触発されるかのように、工作機械トップのDMG森精機はクラボウ傘下で同業の倉敷機械(新潟県長岡市)を子会社化すると発表した。倉敷機械の全株式を10月末に45億円で取得する。DMG森精機は業界最大級の品ぞろえを持つが、倉敷機械が主力とするCNC(コンピューター数値制御)横中ぐり盤は手がけていなかった。

実は、DMG森精機がM&Aを手がけるのは8年ぶり。2015年に旧森精機製作所が約2200億円を投じて欧州最大手の独ギルデマイスター(DMG)を子会社化して以来で、この大型買収が業界トップに立つ原動力になった。

工作機械業界では9月、もう一件あった。中堅の岡本工作機械製作所が産業機械・生産設備製作の大和工機(宮崎県都城市)を子会社化することになった。九州で半導体関連装置の新たな製造拠点として活用する狙い。