M&A OnlineがM&Aデータベースで調べたところ、2023年に上場企業が子会社や事業を売却した件数は290件で、2014年以降の10年間では2021年の294件に次ぐ、2番目に多い件数となった。

コロナ禍の影響が出始めた2020年からは4年連続の250件超えの高い水準にある。

一方、取引金額は1兆3654億円で、2014年以降の10年間では7番目の低い水準となった。全金額の半分強を占める富士通による新光電気工業の売却案件(取引金額約6848億円、うち富士通分は2850億円)を含め、1000億円を超える案件が3件しかなく、100億円以上1000億円未満も12件と少なかったのが要因だ。

財務体質の強化や中核事業への経営資源の集中などを目的に、2020年に急増した上場企業による子会社や事業の売却は大きく縮小し、2023年の取引金額はピークの2020年の3分の1以下に減少した。

ただ件数は高水準を維持しているため、案件が小型化していることが分かる。目ぼしい子会社や事業の売却にめどがつき、急場をしのいだ企業が、最後の仕上げとして小規模な子会社や事業の整理に乗り出した姿が浮かび上がってくる。

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(画像=「M&A Online」より引用)

IT・ソフトウエアとその他サービスに集中

買い手企業の業種を見るとIT・ソフトウエアが最も多く、その他サービスが続いた。売り手企業の業種も同様でIT・ソフトウエア、その他サービスの順となり、対象企業はトップと2位が入れ替わり、その他サービス、IT・ソフトウエアの順となった。これら二つの業界の中で売り買いが活発に行われたことが見て取れる。

前年度は買い手企業のトップだった海外ファンドなどのその他金融は、2023年は買い手企業の3番目に後退した。

クロスボーダーは最多に

外国企業が買い手となったクロスボーダーは63件あり、過去10年間では2021年の63件と並び最多となった。

クロスボーダーの中で最も取引金額の大きかったのが、ENEOSホールディングスがチリに保有する「カセロネス銅鉱山」運営子会社を、カナダの鉱物資源・エネルギー会社Lundinに譲渡(取引金額は1246億円)したもので、2023年に上場企業が子会社や事業を売却した全案件中、3番目に大きな取引となった。

取引金額トップは新光電気

全案件中、取引金額がトップとなった新光電気の案件は、同社が政府系ファンドの産業革新投資機構のTOB(株式公開買い付け)などを受け入れて株式を非公開化するもので、産業革新投資機構が富士通所有分(50.02%)を除く株式を対象に買い付けを行ったうえで、新光電気が富士通所有分を自己株として取得する。

富士通によるグループ事業の選別と親子上場の見直しの一環で、TOBは2024年8月下旬に始まる予定。

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(画像=「M&A Online」より引用)

文:M&A Online