本記事は、小日向素子氏の著書『ナチュラル・リーダーシップの教科書』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
ナチュラル・リーダーシップは3ステップで身につける
私たちは日々の生活の中で、様々な「ルール」や「常識」にとらわれています。
この「ルール」や「常識」が思い込みや固定観念を生み出し、知らず知らずのうちに「このような場面では、こうするのが当たり前」などと、自ら行動を縛っていることがあります。
こうした縛りから自由になるには、「自然」の助けを借りるのがもっとも効果的です。
自然界には、人間界の常識が存在しません。自然と向き合う時に、常識を前提に接しても、感覚は刺激されません。
ただ無の状態になって、自身の感覚を開き、他者・周囲と対峙する。誰のものでもない、自分の感覚が湧き上がってきた時、そこから生まれる感情や思考は、過去のそれとは違ったものになっています。その結果、行動も変わっていきます。
このような考えに基づいて、ナチュラル・リーダーシップは構築されています。
生き物としての人間らしい感覚をベースに、自分らしさを取り戻したうえで、他者との関係性を再構築するリーダーシップとも言えます。
ナチュラル・リーダーシップを身につけ、高いレベルで発揮できるようになると、今までとはまったく違った視点から、ビジネスに取り組むことができるようになります。
ナチュラル・リーダーシップは、次の3つのステップに沿って身につけていきます。
- ナチュラル・リーダーシップを身につける3つのステップ
ステップ1 個人の内部が変容(Lead Self)
感覚が研ぎ澄まされ、脳と統合される、「高度に心身一致」の状態となる。感覚・感情・思考・行動が連動し、ブレがない。
ステップ2 二者間の関係性が変容(Lead Relationship)
既存の言葉やルールにとらわれすぎないやりとりが生まれ、互いに「リスペクト(尊重)」を持った関係になる。
ステップ3 組織での関係性が変容(Lead Relationship with Others)
皆が「組織の一部」として存在していると感じ、ヒエラルキーが固定化しない関係性になる。
※ この概念は、米国の行動心理学ベースのエグゼクティブ研修のプログラム設計方式からインスパイアされて導入したものです。
3つのステップは、表の通りです。順番に見ていきましょう。
ステップの内容 | |
---|---|
ステップ1 個人の内部が変容 (Lead Self) |
高度なレベルで心身が一致する |
ステップ2 二者間の関係性が変容 (Lead Relationship) |
他者とリスペクトのある関係性を築く |
ステップ3 組織での関係性が変容 (Lead Relationship with Others) |
個々が自分らしくいながら全体と調和している 組織のヒエラルキーが固定化しない |
◎ステップ1 個人の内部が変容
(Lead Self)
まず、自分自身をバージョンアップさせます。
具体的には、常に思考優位で、思い込みや固定観念に縛られていること、また、考えていることと感じていることがバラバラな状態であることを自覚します。
そのうえで、思考優位の影ですっかり埋もれている「感覚」を取り戻すことに注力します。目指すのは、感覚と思考のバランスが取れている状態、つまり、考えていることと感じていることに大きなズレがない状態です。
◎ステップ2 二者間の関係性が変容
(Lead Relationship)
ステップ1で感覚を鍛え、自分らしさを再構築したら、次に、他者との関係性をバージョンアップしていきます。
感覚を働かせることができる状態の人は、他者の感覚にも敏感になります。
また、既に自分らしさを体得しているので、他者に対しても関心を移しやすくなります。これは、逆説的に考えるとわかりやすいでしょう。
自分の感覚を無視し、自分を犠牲にしている時は、余裕がなく、他者に対しても心を寄せにくいものです。自分に不満足感がある状態では、「自分は××したいのに」「(自分は)相手に△△してほしい」という、エゴが先立ってしまうのです。
しかし、ステップ1で自らの感覚に目を向け、自分らしさを自覚し、受け入れられるようになると、自分のエゴが薄れ、他者に関心を移すことができるようになります。
◎ステップ3 組織での関係性が変容
(Lead Relationship with Others)
最後は、組織での関係性に応用していきます。
皆が感覚を使い、自分らしさを大切にしながら、同時に、互いの強みや弱みを感じ取り、尊重しあう組織になれれば、組織の運営形態が変化し、ヒエラルキーが固定化しないフラットな組織へと変わっていきます。
以上の3つのステップを実行していくことで、ナチュラル・リーダーシップは身についていきます。記事内では紹介しきれませんでしたが、ステップをより確実に実行するために、3つのステップを実践的内容に落とし込んだ行動様式を学ぶのも有効です。
国際基督教大学卒業。NTT入社後、外資系に転じ、マーケティング、新規事業開発、海外進出等を担当。2006年、グローバル企業の日本支社マーケティング部責任者に、世界初の女性および最年少で就任。2009年独立。新たな学び・成長プログラムの開発を始動し、馬と出会う。2016年株式会社COAS設立。欧米各国の馬から学ぶ研修を巡り、米国EAGALA認定ファシリテーター取得。同時に、組織開発、リーダーシップ、コーチングを学び、スイスIMD Strategies for Leaders修了、キャリアコンサルタント試験合格、ICF認定コーチングコースアドバンスト受講。2017年、札幌に牧場を持ち、馬から学ぶリーダーシップ研修を導入。資生堂をはじめ様々な業種の企業研修として活用されるほか、エグゼクティブ、起業家、役員等、延べ2000名を超える受講者を輩出している。本書が初の著書。※画像をクリックするとAmazonに飛びます。