本記事は、小日向素子氏の著書『ナチュラル・リーダーシップの教科書』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

リーダー
(画像=luckybusiness / stock.adobe.com)

人間は誰しも社会の中で「2つの檻」に閉じ込められている

ナチュラル・リーダーシップは、周囲の環境の変化に伴い、これまでの手法が通用しなくなってきたと感じている方に、特に役立つものだと考えています。

同時に、社会や周りに求められる理想の姿を目指し、演じてきた「私」に無理が生じて、自分らしさや目指す方向がわからなくなっている方にも、身につけていただきたいリーダーシップ論であり、考え方です。

もし、以下のようなことに思い当たるようでしたら、皆さんはまさに今、ナチュラル・リーダーシップと出会うべきタイミングと言えるでしょう。

  • 今まで順調だったのに、自らの成長にブレーキがかかっている気がする。
  • 自分自身のリーダーシップに行き詰まりを感じている。
  • 働き方や生き方に違和感がある。
  • 自分自身の在りように何らかの限界を感じている。

実は、牧場研修にいらっしゃるビジネスエリートと呼ばれる方たちの多くが、こうした壁にぶつかっています。

なぜ今、このような壁にぶつかっているのでしょうか。

私は、現代の人間が、免れることのできない社会の「檻」に閉じ込められているからだと考えています。

人間社会には「2つの檻」があります。

1つ目の檻は、私たちに他者との争いを強いる「競争の檻」です。社会では常に比較と競争にさらされています。

教育を通じて常に比較される子ども時代に始まり、就職活動で強いられる競争、社内での出世争い、企業同士の競争と、常に競争の世界に身を置いています。

2つ目の檻は、私たち人間が否が応でもとらわれる「言葉の檻」です。

私たちの思考は、常に言葉に縛られています。

自分の発した言葉。
他者から発せられた言葉。
社会から発せられた言葉。

こうして言葉が重視される一方で、言語化しがたい微細な感覚、「私」の根本から発せられる声なき声は、置き去りにされがちです。

この2つの檻を持つ社会に、私たちは生まれると同時に放り込まれます。

最初は親かそれに代わる人の庇護のもと、思考や価値観、振る舞いに、無意識のうちに影響を受けます。

その後は地域の文化、幼稚園や保育園、小学校など、自分が属する組織それぞれの型に自分を合わせます。

会社に入ると、その会社の風土や業界の慣習に影響を受けます。日本という国の価値観や、日本の属する資本主義という経済システムの価値観も、当然のものとして刷り込まれます。

歳を重ねるごとにより多くの情報を得て、「思考」が強化されていくのです。

自分の根っこを育てる間もなく、次から次へと社会の型が刻まれることで、「自分は本当はどう感じているのか?」「本当は何が好きなのか?」など、自分の内側から湧き出てくる感覚に鈍感になってしまうのです。

以前、社員50名ほどの会社を率いる40代の女性社長から、次のようなお話を伺いました。

「社員が求める社長像、期待される言動を常に先読みして演じているうちに、社員から嫌われはしないけれど、自分が何をしたいのか、わからなくなってしまいました。心から嬉しい、楽しいなどと思うことも、ほとんどありません」

日々、社員たちとの関係性、責務の重さに疲弊し、このような状態になってしまったというのです。

数日後、この女性社長の部下であるAさんとお話をする機会がありました。Aさんは、女性社長の同期で、仲の良い友人関係で、女性社長の疲弊ぶりを心配していましたが、「実は …… 」とこんな話をしてくれました。

「実は …… 、社長が頑張ってくれているからと社員も気を使ってしまって、言いたいことが言えなくて疲弊しているのです」

つまり、お互いが「檻」に閉じ込められ、不自然な状態になってしまっていたのです。

社会の檻の中でお互いが感覚・感情を殺して演じ続けていると、関係がいびつになり、お互いの可能性を奪ってしまったり、成長を止めてしまったりといった事態を引き起こしかねません。

檻の外に出るためには、檻の存在に気づき、染み付いた固定観念を剥がす作業をすること、そして、閉じた感覚を開き直すことが求められます。そのためにも、まずはリーダーが自らその実践に着手し、変化していく必要があるといえるでしょう。

これまでの私たちは、「リーダー」とは、ピラミッドの頂点に立つ能力の高い人である、という強烈な思い込みに支配されていました。

しかし今の時代、人間はより感覚に忠実に生き、自分らしさを取り戻すこと、そのうえで、他者とリスペクトある関係を築くことが求められます。

そのための「リーダーシップ」を発揮する手法が「ナチュラル・リーダーシップ」であり、既に、国内外のトップエリートの間では、この行動様式を身につける動きが始まっているのです。

その最初のステップが、自らにこびりついた固定観念を剥がす=アンラーンなのです。

ナチュラル・リーダーシップの教科書
小日向素子
株式会社COAS Founder, Owner
国際基督教大学卒業。NTT入社後、外資系に転じ、マーケティング、新規事業開発、海外進出等を担当。2006年、グローバル企業の日本支社マーケティング部責任者に、世界初の女性および最年少で就任。2009年独立。新たな学び・成長プログラムの開発を始動し、馬と出会う。2016年株式会社COAS設立。欧米各国の馬から学ぶ研修を巡り、米国EAGALA認定ファシリテーター取得。同時に、組織開発、リーダーシップ、コーチングを学び、スイスIMD Strategies for Leaders修了、キャリアコンサルタント試験合格、ICF認定コーチングコースアドバンスト受講。2017年、札幌に牧場を持ち、馬から学ぶリーダーシップ研修を導入。資生堂をはじめ様々な業種の企業研修として活用されるほか、エグゼクティブ、起業家、役員等、延べ2000名を超える受講者を輩出している。本書が初の著書。

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