再編による「規模のメリット」が見えない書店業界

もはや、業界再編の意欲をなくしてしまったようにも見える状況だ。ここまでM&Aが進まないのには、書店ならではの事情もある。第一に書籍は再販売価格維持制度で定価販売が認められており、価格競争がないこと。そのためM&Aで店舗網を拡大しても、大量仕入れ・大量販売による安売りで集客するという販売面での「規模のメリット」が活かせない。

第二に寡占化が進んで大手書店が巨大化した結果、経営難に苦しむ中小書店を買収したところでビジネスモデルが合わないこと。売場面積数千坪の大型店舗が当たり前の大手書店が、同100坪未満の中小店舗を運営するのは規模が違いすぎる。全く別立てで運営するにしても、大手が中小書店を傘下に入れるメリットはほとんどない。売り上げはそれほど伸びず、店舗運営も煩雑になってオペレーションコストが上昇するだけだ。

中小書店の場合は、店主の感性や知識などのキュレーション力を発揮した、他の書店にない独自の品揃えで専門書店として生き残るビジネスモデルが注目されている。中小書店が生き残るには、M&Aによる救済よりも個性化が得策だろう。

M&A Online

(画像=個性派書店として人気の「本屋ルヌガンガ」(高松市、同社ホームページより)、「M&A Online」より引用)

ただ、ネット書店経由の販売や電子出版が増える傾向は続き、リアル書店の経営環境はさらに厳しくなる。今後、巨大書店同士の業界再編が進む可能性は高い。丸善CHIホールディングス<3159>や紀伊國屋書店、カルチュア・コンビニエンス・クラブといった年商1000億円超の巨大書店の再編が、次の目玉だろう。

文:M&A Online