書店の減少が止まらない。東京商工リサーチによると、2014年以降に書店の倒産・休廃業が新設を上回る状態が続き、10年間で764社が姿を消した。政府も危機感を強めている。一方で、M&Aによる業界再編は進まない。なぜ書店のM&Aは進まないのか?

倒産・休廃業が相次ぐのに進まない書店の再編

負債額1000万円以上の書店倒産は、2014年から2023年の10年間で140社に達している。ピークの2016年には25社が倒産。その後は倒産は小康状態にある。2023年の書店倒産は13社だった。だが、休廃業や解散を含めると年間60社前後での高止まりの状況が続く。2023年の倒産と休廃業・廃業社数は67社だった。

出版文化産業振興財団の調査によると、書店が一つもない無書店自治体は、全市町村のおよそ4分の1にのぼる。地域の文化基盤となる書店の激減に危機感を抱いた経済産業省は5日、大臣直属の「書店振興プロジェクトチーム」を設置すると発表。全国で減少する地域密着型書店の支援に乗り出した。

一般に市場が縮小した場合は、M&Aによる業界再編が進む。ところが書店業界では、事業者が激減しているにもかかわらず動きが鈍い。上場企業による書店関連の買収は、電子書籍などを含めても2008年以降で11件しかない。とりわけ倒産のピークだった2016年以降の8年間では、わずか3件だ。

No.公開日取得金額案件内容
 1 2008年11月4日   250 ブックオフコーポレーション<3313>、青山ブックセンターなど書店12店舗を取得
 2 2009年7月28日     20 ngi group<2497>、オンライン書店運営の富士山マガジンサービスを経営陣に譲渡
 3 2012年3月28日 非公表 近鉄百貨店<8244>、書籍販売のビッグウィルをジュンク堂書店に譲渡
 4 2013年6月27日 非公表 イマジカ・ロボット ホールディングス<6789>、編集プロダクションの角川エディトリアルを子会社化
 5 2014年7月31日     ― スタートトゥデイ<3092>、電子書店「マガストア」運営のヤッパを子会社化
 6 2014年9月29日 非公表 文教堂グループホールディングス<9978>、関西のキャップ書店から8店舗を取得
 7 2015年3月12日   186 イーブックイニシアティブジャパン<3658>、オンライン書店運営のブークスを完全子会社化
 8 2015年8月18日 非公表 [中止]TAC<4319>、教科書出版の桐原書店から全事業を取得
 9 2016年9月12日 非公表 大日本印刷<7912>、傘下の文教堂グループホールディングス<9978>を日本出版販売へ譲渡
10 2017年10月30日 1,174 図書印刷<7913>、高校生向け教科書発行の桐原書店を子会社化
11 2023年6月5日 非公表 トップカルチャー<7640>、蔦屋書店内で「タリーズコーヒー」を運営するメソッドカイザーを子会社化