本記事は、川島 睦保氏の著書『シニアが無理なく儲ける株投資の本』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。

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(画像=Bird Photographer TH / stock.adobe.com)

銀行預金は銀行への寄付と同じ

2024年2月13日時点の銀行普通預金の金利は年0.001%である(税引き前、三菱UFJ銀行の場合)。100万円を銀行の普通預金口座に預けても、年間10円の利子しか得られない。

銀行の「貸金庫」利用の機会費用は年間4.5万円となる。銀行にまるごとおカネを寄付しているようなものだ。こんなバカバカしい話はない。

しかも、どの銀行の「貸金庫」も安全というわけではない。ここ十数年の低金利時代で地方銀行や中小金融機関の財務基盤はかなりぜい弱化している。今後のさらなるインフレや金利上昇を考えると、これまで安全資産として運用・保有してきた国債や社債で大量の売却損や含み損が発生する恐れがある。

銀行預金は政府が元利金を1,000万円まで保証している。しかしその限度額以上預けている人は、収益や財務の基盤がぜい弱で、取り付け騒ぎが起きる可能性があるような中小銀行に預金するよりも、経営基盤、財務基盤の安定している優良企業の株を買って配当金の4.5万円を手にしたほうがずっと安全な運用だ、 と考えてもおかしくない。銀行預金の大半が老後の備えの資金なら、目先の使い道が決まっているわけではない。すぐに換金する必要がないのなら株式に振り向けても心配ない。株価が一時的に値下がりしても、長期的に成長が見込める企業なら株価はやがて回復するからだ。

配当利回りが高いしっかりとした企業が投資先であれば、冷静に考えれば、株式投資の「機会費用」は低金利時代の現在はそれほど高くない。

これからのインフレによる目減りや金利の上昇による不良債権の増大を考えると、銀行預金は決して安全な「資金の避難先」とはいえなくなっている。

「銀行預金に預ける」くらいなら「銀行株を買おう」

執筆時点で、銀行預金の金利は普通預金0.001%(以下すべて年利、税引き前、三菱FUJ銀行の場合)、スーパー定期預金と自由金利型定期預金(大口定期)の金利はいずれも0.002%(1カ月~4年)、0.07%(5~6年)、0.1%(7~9年)、0.2%(10年)である。他のメガバンク、地方銀行なども似たり寄ったりだ。

普通預金に100万円預けたとしても年間10円の金利しか受けとれない。定期預金でも20円だ。お茶代の足しにもならない。

一方、ネット銀行は街中で多くの店舗を構えるリアルの銀行に比べて多少有利な金利を提示している。

東京スター銀行は普通預金(給与または年金の受取口座に指定した場合)で0.25%の金利だ。三菱FUJ銀行の250倍の金利水準だが、しょせんはコンマ以下の利率だ。100万円預けても年間2,500円にしかならない。超低金利時代はおカネを借りる人には天国だが、預金者にはひどい世の中としか言いようがない。

一方、株式では3~5%の配当利回り(配当金÷株価)の銘柄がけっこうある。

三大メガバンクのみずほホールディングスや三井住友フィナンシャルグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループはいずれも3%台の配当利回り(株価は2024年1月15日時点、配当予想は『会社四季報』2024年1集)だ。これらの銘柄の株式を100万円購入すれば年間3万円強の配当金が手に入る。

配当金は心の支え

株価の低迷に嫌気がさして、株式から何か別の金融商品に乗り換えようとしても、有利な投資対象が見当たらないのが現状だ。

銀行預金の利回りは前述のような体たらくだし、FX取引(外国為替証拠金取引)で外貨を買うのは株式投資よりもリスキーだ。

株式は株価が低下したとしても、売却しないかぎり損失が発生するわけではない。そのまま保有していれば株価は再び上昇に転じて含み損が消えてしまう可能性がある。その間、預金金利の10倍もの配当金を得ることができる。ほかに有利な運用先がなさそうなら、しばらく株式を保有しておくのが得策だ。

また運良く株価が値上がりして、結構な値上がり益を手にすることができても、すぐに売却してはいけない。「含み益」は株価低迷時のバッファーになってくれるから大切に温存しておくべきだ。私はそのおかげで商社株や自動車株を長いあいだ持ち続け、結構なパフォーマンスを得ることができた。

実際、私は保有株の一部の株価が一時的に低迷して買い値を下回る事態に何度も直面したが、「配当金」や「含み益」のおかげで、腹が立たなかった。いらだつこともなかった。

短期は損気。一時の感情にかられて行動すれば、結局、損をする。そうならないように、自分なりの〝安全装置〟を準備しておくことが大切だ。

高配当利回り狙いの戦法は、相場が一時的に上昇しても、下落しても株を持ち続けることを促してくれる安全運航装置付きの投資戦法なのである。

シニアが無理なく儲ける株投資の本
川島 睦保(かわしま・むつほ)
1955年生まれ。1979年横浜国立大学経済学部卒業、東洋経済新報社入社。1991年から92年までフルブライト・プログラムでハーバード大学経済学部客員研究員。2000年『オール投資』編集長、2002年『週刊東洋経済』編集長、2009年東洋経済新報社取締役出版局長を経て、2017年に退社し、フリージャーナリスト、翻訳家となった。訳書にニコラス・レマン著『マイケル・ジェンセンとアメリカ中産階級の解体:エージェンシー理論の光と影』(日経BP 2021年)、ダレル・リグビー, サラ・エルク, スティーブ・ベレズ著『AX戦略:次世代型現場力の創造:巨大組織の進化形』(東洋経済新報社 2021年)などがある。
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