この記事は2024年3月13日に「第一生命経済研究所」で公開された「賃上げ率は大幅上振れへ(春闘集中回答日)」を一部編集し、転載したものです。
満額回答相次ぐ。5%台乗せの可能性も
今日は春闘の集中回答日であり、既に多くの企業において回答が発表されている。
今年の春闘の特徴の一つとして、昨年に比べて早期に賃上げ機運が盛り上がった点が挙げられる。23年春闘では、物価の伸びが急加速するなか、23年入り以降に賃上げムードが一気に盛り上がったが、24年春闘では23年冬の時点で既に賃上げ機運が高まっており、春闘での交渉を待たずして高い賃上げ実施を表明する企業が相次いだ。横並びを重視する日本の企業では、同業他社の賃上げ実施を無視することは難しい。競うように大手企業での賃上げ表明が相次ぎ、賃上げムードは24年に入ってからも一段と強まり続けた。 こうした流れの中で迎えた本日の集中回答日では満額回答が相次ぎ、なかには組合の要求を上回る賃上げを認める企業も現れた。満額回答が目立つことはある程度予想されていたとはいえ、それにしても強い印象を受ける。
なお、連合が3月7日に公表した2024年春闘での要求集計結果では、賃上げ要求の平均が5.85%と非常に高いものとなっていた。数十年ぶりの賃上げと言われた23年春闘での4.49%を1.36%Ptも上回っている。もちろんこの要求がすべて実現するわけではないが、本日の集中回答日における企業の前向きなスタンスを踏まえると、過去の例を超えてここから大きく下振れるという可能性は低いだろう。ちなみに、官製春闘と言われた2014年春闘以降における要求と回答の差をみると、概ね1%Pt程度となる(23年春闘は要求4.49%、回答3.58%)。このことを踏まえると、回答結果は4%を超えてくることはほぼ間違いなく、4%台後半が十分視野に入る。まさかの5%乗せの可能性も否定できない情勢だ。なお、連合による第1回回答集計は3月15日に公表されるが、第1回集計値は最終集計値よりも若干高く出る傾向がある(*1)(23年春闘では第1回集計3.80%、最終集計3.58%)。そう考えると、第1回集計では5%台の数字が出てくる可能性もあるように思える。賃上げサプライズに注意が必要だ(*2)。
*1:賃上げ率が相対的に高い大手主要企業の方が回答が早いことを反映しているものと思われる。
*2:ESPフォーキャスト調査(日本経済研究センター集計)における2月上旬段階でのコンセンサスは3.88%。
もちろん、こうした高い賃上げ率は、賃金情勢に注目し続けてきた日本銀行にとって強い追い風だ。中小企業の賃上げの行方を見守るとの選択肢もあるが、大企業でこれだけ盛り上がった以上、人材確保の観点から中小企業での賃上げもある程度は実施される可能性が高く、最終集計の結果を待つ必要性はさほどないとも言える。3月15日に公表される連合による第1回回答集計値は、3月会合でのマイナス金利解除を後押しする大きな材料となるだろう。