特集「令和IPO企業トップに聞く 〜 経済激変時代における上場ストーリーと事業戦略」では、IPOで上場した各社のトップにインタビューを実施。コロナ禍を迎えた激動の時代に上場を果たした企業のこれまでの経緯と今後の戦略や課題について各社の取り組みを紹介する。

株式会社ブシロード
(画像=株式会社ブシロード)
木谷 高明(きだに たかあき)――代表取締役社長兼CEO
1960年生まれ。石川県出身。武蔵大学経済学部を卒業後、山一證券株式会社を経て、1994年に株式会社ブロッコリーを設立。2007年にカードゲーム商品等を手がける会社として株式会社ブシロードを設立し、2019年に東京証券取引所マザーズ市場(現:グロース市場)に上場を果たす。2020年6月に株式会社ブシロードの代表取締役会長、2022年7月には代表取締役社長に再度就任し、コンテンツ開発の最前線に立つ。
トレーディングカードゲーム、デジタルゲーム、音楽ライブ、グッズ、プロレスなど、様々なエンタメを世界へ発信する。2007年創業、2019年東京証券取引所マザーズ市場(現:グロース市場)に上場。多角的な事業をグループ内に有することで、知的財産(IP)の新規創出や持続的運用を行う「IPディベロッパー戦略」をとる。主なIPとして「カードファイト!! ヴァンガード」、「ヴァイスシュヴァルツ」、「バンドリ! 」、「新日本プロレス」がある。

目次

  1. 創業時からの事業変遷
  2. 上場を目指された背景や思い
  3. 今後の事業戦略
  4. 今後のファイナンス計画や重要テーマ
  5. ZUU onlineのユーザーに⼀⾔

創業時からの事業変遷

ーーこれまでの事業変遷について教えてください。

株式会社ブシロード 代表取締役社長・木谷 高明氏(以下、社名・氏名略): まず、私自身は前の会社でトレーディングカードゲーム(TCG)の事業を行っていました。その際にTCGの市場はまだまだ開拓の可能性があると感じ、2007年に株式会社ブシロードを創業したのです。

そして、2008年に様々なアニメやゲームの作品で遊べるプラットフォーム型のTCG「ヴァイスシュヴァルツ」で大きな成功を収めました。その成功を受けて、2011年には「カードファイト!! ヴァンガード」という自社IPのTCGも展開しました。

2012年からは新日本プロレスリング株式会社を子会社化し、プロレスビジネスも始めました。さらに、2015年からスタートして2017年にアニメとモバイルゲームをリリースした「BanG Dream!(バンドリ!)」という作品が非常にブレイクしました。これはアニメ、ゲーム、コミック、声優によるリアルライブなど様々なメディアミックスを展開する次世代ガールズバンドプロジェクトです。直近では、「MyGO!!!!!」というバンドが中華圏でも高い人気を得ています。 来年には新作アニメの放送も予定しており、さらに伸びていく可能性があると考えています。

このように、ブシロードはTCGを中心に事業展開をしつつ、アニメやデジタルゲーム、プロレスなどの様々な事業が集合した企業です。自社IPと他社のIPを上手く活用して、TCGを中心とした商品やサービスとしてグループ全体で連携しマネタイズしている点が当社の特徴だと考えています。

ーー順調に事業を伸ばされていますが、ブシロードならではの強みはどのような部分にあると考えていますか?

木谷: やはり、TCGだと考えています。TCGは開発ライン、製造ライン、そしてグローバルに展開する展開力が必要で、昨今ではこの3つの強化・充実に力を注いでいます。当社のTCGは国内でもグローバルでも認知されており、今後はグローバルにおけるランキングを上げることに力を入れるつもりです。

上場を目指された背景や思い

ーー上場を目指された背景について教えてください。

木谷:最初の頃は上場についてあまり考えていませんでした。ただ、2014年頃に会社の存続を考えると上場した方が良いと考え、上場を目指すようになりました。少しずつ準備を進め、2019年に上場しています。

ーー会社の存続を考えたときに、上場しようと考えたのはなぜでしょうか?

木谷:外側から常に注目されることでしっかりと経営をしようという力が働くためです。上場していると合理的な判断をしなければいけない場面が非常に多くあります。一方で、上場していなければ、極端ですが赤字でなければ良いという考え方もあります。上場することで、窮屈な部分もある反面、ちゃんとした経営をしなければいけないという意識が働くのです。

さらに、規模の大きい事業を実行する際に、株主にきちんと説明すれば応援していただくことができます。採用面や取引先に説明する際にも、一定の信用があることを証明するために上場を目指しました。

今後の事業戦略

ーー今後の事業展望についてお伺いしたいのですが、海外展開やTCG以外のエンタメ分野への進出はどのようにお考えでしょうか?

木谷:まずは、TCGで世界一を目指すことを経営の第一目標にしています。売上規模では、世界一の企業と約5倍〜7倍の差がありますが、それは決して遠い目標ではないと考えています。TCG以外のエンタメ分野では当社の得意分野である音楽系のIPを活かし、力を入れていくつもりです。

ーー今後もオリジナルコンテンツを出していこうとお考えですか?

木谷:新たなオリジナルIPを生み出すことは難しい環境になってきていると感じているため、次世代のオリジナルIPを生み出すための土壌作りに力を入れています。現状でも、既存のコンテンツをさらに発展させたり、他のライセンスIPを活用したりすることは十分可能だと思っています。しかし実は、今の事業の軸となっている「ヴァイスシュヴァルツ」「カードファイト!! ヴァンガード」「BanG Dream!(バンドリ!)」の企画原案は私なのです。私自身も年齢的に新たなオリジナルIPを生み出すことは難しいです。そこで会社として新たなオリジナルIPを生み出すために、出版やビジュアルノベルゲーム、ボードゲームなどの分野へ取り組んでいきたいと考えています。

ーー事業の中で、特に重要だと考えるポイントは何でしょうか?

木谷:まずは、既存のTCGをさらに伸ばすことの優先順位が高いと考えています。現在、新たに複数のTCGをリリースする環境が整ってきています。既存タイトルも同時並行で力を入れつつ、今年から来年にかけてはタイトル数も増やし、ブシロードのTCGを世界一にすることを目指して取り組んでいきます。

今後のファイナンス計画や重要テーマ

ーーファイナンスの活用についてどのように考えられていますか?

木谷:環境整備に活用しています。工場に対する出資や、製造ラインや開発ラインを整えるための出資を行っています。また、海外でのイベント主催や出展に力を入れるためにも資金が使われています。TCGは製造がネックになる場合があるため、提携工場には当社が設備投資した設備や機械を導入することもあります。

このように、TCGで世界一になるための環境を整えています。

ZUU onlineのユーザーに⼀⾔

ーーZUU onlineのユーザーへ一言お願いします。

木谷:現在、市場環境の激化を受けてデジタル部門で苦戦をしており、業績も少し低迷していますが、今期中には改善できる見込みです。デジタル部門は投資にメリハリをつけて収益性の改善を進めつつ、TCGの事業拡大に一層力を入れていきます。来期から新たな成長軌道に乗れるのではと考えておりますので、ぜひご期待ください。

氏名
木谷 高明(きだに たかあき)
社名
株式会社ブシロード
役職
代表取締役社長兼CEO

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