特集「令和IPO企業トップに聞く 〜 経済激変時代における上場ストーリーと事業戦略」では、IPOで上場した各社のトップにインタビューを実施。コロナ禍を迎えた激動の時代に上場を果たした企業のこれまでの経緯と今後の戦略や課題について各社の取り組みを紹介する。
創業時からの事業変遷
ーー2018年に創業されてから現在までの事業変遷について教えてください。
株式会社GENDA 代表取締役社長・申真衣氏(以下、社名・氏名略): 2018年に創業し、今年で7年目です。「世界中の人々の人生をより楽しく」というAspiration(大志)を実現するために、2040年に世界一のエンターテイメント企業になることを目指しています。
創業時はゲームセンターに置くゲーム機を購入してオペレーターにレンタルし、レベニューシェアを得るビジネスからスタートしました。私の共同創業者である片岡はイオンファンタジーで社長をしていた経験があり、ゲームセンターの運営に長く携わっていました。ゲームセンターの運営は将来必ずやりたいことの一つには入っていました。
ーーコロナ禍でゲームセンター自体の稼働ができなくなった時期もあったと思いますが、その後どのように回復していったのでしょうか?
申:そうですね。2020年4月と5月は、ゲームセンターが営業されなかったので、レベニューシェアの売り上げはほぼゼロになりました。その結果資金繰りにも窮するようになりました。
その際、一番大きなキャッシュアウトフローは借入金の返済だったので、毎日のように資金繰りを相談するために金融機関と連絡を取り続けました。密に連携を図ったことでスムーズに制度融資を活用できるようになり、なんとか乗り越えることができました。
上場を目指された背景や思い
ーー創業当時から上場を目指されていたのでしょうか?
申:はい。創業時からM&Aを活用して成長していくと考えていたため、資金調達の手段の多様化というのは急務でした。なるべく早い段階で上場することで、会社の経営オプションを増やしていくことができるので、非常に重要視していました。
ーーゲームセンター業界に着目されたのはなぜですか?
申:片岡がきっかけです。私が中・高校生の頃はプリクラが流行っていたのでよくゲームセンターに行っていましたが、それ以来足が遠のいていました。しかし、片岡と出会ったときに、ゲームセンター業界の現状や成長率を教えてもらいました。現在のゲームセンターでの一番の人気はクレーンゲームで、特に流行りのアニメやキャラクターなどのぬいぐるみやフィギュアを獲得することを目的として、それらのファンが大勢詰めかけていること、ゲームセンター市場は2014年までは縮小傾向にあったものの、足元では年率5%程度で成長し続けていることなどを聞き、また多くの人はその事実に気づいていない、非常に面白い市場だと感じました。そのため、事業を拡大していく中でゲームセンターというのは一つの大きなコアになっていくと考えました。
今後の事業戦略や展望
ーーエンタメの経済圏を作っていく上で、コンテンツの開発とプラットフォームの確立を掲げていますが、この2つをどのように展開していく予定ですか?
申:まず、現在のエンターテイメント業界は、アニメ等のIPコンテンツとそのファンがいて、それらの二つをプラットフォームがつないでいると私たちは考えています。まずはお客様にコンテンツを届けるためのプラットフォームを確立させ、安定的にキャッシュフローが出るようにしていきたいと考えています。現在はその中でもゲームセンターでのロールアップM&Aに力を入れています。また直近ではカラオケオペレーターのM&Aも実施しました。このようにさまざまなエンターテイメント領域でお客様との接点を作ることにより、事業シナジーを生み出しています。
例えば、直近では当社の子会社であるギャガが配給を手掛けた映画の公開時に、グループ企業のゲームセンターやカラオケなどで限定グッズやキャンペーンを展開しました。このようにしてシナジー効果を発現させていきます。
ーーこのプラットフォームから攻めることになった背景を教えてください。
申:安定したビジネスモデルを築くためです。M&Aを戦略の軸として進める際に、コンテンツに比べてプラットフォームはボラティリティが低いため、プラットフォームから確立させるのがベストな選択だと考えました。
ーー今後どのようなコンテンツを増やしていく予定ですか?
申:現在は具体的に決めているものはありませんが、様々なエンターテイメントの中から良い出会いを探している状況です。
ーー海外展開についてはどのように考えていますか?
申:海外では日本のコンテンツやサービスへのニーズが大きいと考えています。現在、アメリカ、中国、台湾でビジネスを展開しています。
その中でも特にアメリカでの事業が拡大しています。2019年にラウンドワンと合弁で立ち上げ、2023年に完全子会社化したKiddletonにて、無人のゲームコーナーをアメリカの400か所以上に展開しています。当初はアジア系のスーパーマーケットへの出店から始めました。アジア系の人々に人気があると予測していましたが、徐々に幅広い地域で展開していく中で、お客様の人種や属性に関係なく売り上げが出せることが分かりました。今後は人が多いところに積極的に展開していく予定です。
M&Aについて
ーーGENDAではM&Aが非常に活用されていると思いますが、M&Aを活用する上で最も意識されていることは何でしょうか?
申:適正なバリエーションでエントリーしていくことが大事だと考えています。シナジーありきでの投資は検討していません。それでも、エンターテイメント業界の中でM&Aをする限りにおいては現在の事業とのシナジーがどこかにはあるので、それはしっかり捕捉していきたいと考えています。
M&Aは多くの企業にとってたまに起きる大きなイベントですが、我々にとってはM&Aが本業だと考えているので、M&Aを意識した組織や会議体を作ってきました。
また、株式投資家の皆様にお伝えしたいこととしては、当社はキャッシュフローが出るビジネスをM&Aしているため、金融機関からも信頼を得ており、積極的な借入が可能であるということです。
レバレッジをかけていることが不安材料として捉えられるかもしれませんが、借入余力を示すNet Debt/EBITDA倍率は1.5倍程度と、現在の借入金は約1年半で返済できる水準であるため、まだまだ借入余力があると考えています。
今後もM&Aを積極的に進めていきます。借入を中心とした規律を持った資金調達を行っているため、株式の希薄化を伴わない成長を投資家の皆様にお届けできると考えています。
ーーGENDAといえばM&Aのイメージが強いですが、それ以外で投資家の皆さんに注目してほしい点はありますか?
申:大きな成長を作っているのはM&Aですが、グループインした会社もしっかりと業績を伸ばせています。それぞれの事業がきちんと伸びていることにも着目していただけたらと思います。
ZUU onlineのユーザーに⼀⾔
ーーZUU onlineのユーザーに対して、一言お願いします。
申:GENDAは、M&Aをドライバーに成長している企業です。投資家の方にとっては同業他社比較や業績の分析が難しいかもしれませんが、日本国内や海外にも同じようにM&Aで大きく成長している会社は存在します。私たちは連続的な非連続な成長を目指しています。実際、創業7年目の今期の通期連結業績予想は売上高1000億円と打ち出しています。今後も、高い成長率にご期待いただければと思います。
- 氏名
- 申 真衣(しん まい)
- 社名
- 株式会社GENDA
- 役職
- 代表取締役社長