本記事は、井上顕滋氏の著書『7つの"デキない"を変える "デキる"部下の育て方』(幻冬舎)の中から一部を抜粋・編集しています。

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(画像=yumeyume / stock.adobe.com)

評価の仕方を見直すことでチャレンジしやすくなる評価の仕方を見直すことで、部下の挑戦しようという気持ちを引き出すこともできます。これまでに結果のみを評価してきたのであれば、結果に至った過程も評価するようにすると、部下はチャレンジがしやすくなります。結果に至るまでには本人もいろいろ考え、努力してきたので、上司側はそこを客観的に見て評価するようにします。

部下の挑戦を振り返って良かったことと改善すべきことを挙げていくと、すべてがダメだったわけではないということが分かります。失敗すると悪かったことにばかり目がいきがちです。しかし、挑戦していった過程には、うまくいったこともあったはずですし、その挑戦によって前に進んだこともあるはずです。そこを汲み取って評価するようにすると、部下は失敗を恐れずチャレンジしやすくなります。

失敗を分析して前に進むためのツールとして勧めたいのがクリアリングです。取り組みを振り返って、良かったこと、改善すること、今後どのように改善するかについて、それぞれ箇条書きのような形で挙げていきます。うまくいかなかったことを反省するというスタンスではなく、前に進むための分析をするのだというスタンスで取り組みます。

これに上司が目を通して必要に応じてフィードバックしていけば、次に活かすことができます。上司の目から見て、部下が挙げている要素だけでは不十分だと思うことがあるようなら「ほかにも良かったところ(改善点)があると思うよ。もう少し考えてみて」と再考を促します。

私の会社ではビジネスチャット上にクリアリング用のグループをつくっています。どんなツールでも構いません。グループをつくり、互いのクリアリングを共有することがチーム全体の成長につながります。

部署のメンバーに書いてもらったら、上司は必ず目を通すことが重要です。だからといって、その都度すべてに詳細なフィードバックをする必要はありません。クリアリングをするうえで大切なのは、部下本人がクリアリングの重要性を理解し、自分の頭で考え、自分の業務を自分で修正していけるようになることです。ですから、上司は部下がクリアリングをしっかりやっているかどうかだけをチェックすればよいということになります。

ビジネスチャットなどのツールを使ってクリアリングのグループをつくると、上司だけでなく部下同士でも互いのクリアリングの内容を目にすることになります。そこでほかの人のクリアリングから学ぶこともできます。上司が目を通すだけでなく、部下同士でクリアリングの内容について自然と話し合う空気が出てくれば、チームとしての成長が加速していきます。

私は社員と月に1回面談をしています。社員には事前にその1カ月を振り返ってクリアリングをしてきてもらい、面談のなかで部下の話を聞きます。社員の話を聞いていると、なかには本当の原因が見えていないケースもあることに気づきます。ただ、ほとんどは経験値の問題で、気づけないのも仕方ないだろうと思えることがほとんどです。その場合は、本当の原因がどこにあるのか、どのように対処すればよいのかを私からアドバイスしています。

逆に、話を聞いていてその社員の気づきが重要なことだと感じれば、すかさず素晴らしい気づきだと称賛したうえで、ほかのメンバーに共有したのかを確認しています。まだしていないということであれば、すごく大切なことだから、ほかのメンバーにも詳しく共有するように伝えます。

毎日のクリアリングに詳細なアドバイスをすることは物理的に難しくても、月に1回、1人あたり30分の面談のなかでのフィードバックであれば、それほど難しくないと私は感じています。

クリアリングをもとにした面談は、私が社員を称賛する場にもなります。クリアリングには良かったところがたくさん書かれているので、それを見て「すごいね、素晴らしいね!」というように、声を掛けることができます。うまくいかなかったために生じた改善点であっても「よく考えているね。これ、とってもいいアイデアだよね」と褒めることができます。さらには「このアイデアを実行すれば、うまくいきそうだね。めちゃくちゃいいアイデアだから、みんなにも共有してね」などと伝えると、社員は肯定的な感情をもちながら改善しようと思えます。

失敗したことの報告の場合、うまくいかなかったことを伝えるだけだと、報告する部下も気が重くなりますし、報告を受ける上司もあまりいい気分ではありません。しかし、うまくいったことの話から入り、改善点と次にどうするかという本人の考えを共有していく流れで話ができれば、上司も部下も前向きな気持ちで面談を終えることができます。

挑戦というのは本人にとって困難なことに取り組んでいるわけですから、成功するまでには時間がかかります。もし、上司が最短期間で結果を出したいなら、その業務をするにあたって十分な能力のある人に仕事を振るべきです。

しかし、部下を育てるうえで大切なのは、その仕事について最速で結果を出すことではなく、その仕事に挑戦したことで部下が成長し、前に進めるかどうかです。なかでも、新卒社員を育てる場合にはどうしても時間がかかります。ただ、時間がかかったとしても部下が成長していけば、その部下の経験や身につけた能力は会社にとって素晴らしいリソースになります。

社員の挑戦による失敗を糾弾するような組織に成長はありません。社員が新しいことに挑戦でき、失敗から学べる組織にしようと考えるならば、社員が安心して挑戦できる環境をつくり、上司は長い目で見ていく必要があります。

『7つのデキないを変える デキる部下の育て方』より引用
井上 顕滋
1970年生まれ。Result Design株式会社を2004年に設立。企業研修、経営者、経営幹部への指導実績は3,000社を超える。エグゼクティブコーチ、メンタルトレーナーとしてオリンピック出場の日本代表選手や世界一に輝いたプロスポーツ選手もサポートしている。世界最先端の心理学および脳科学を各分野の世界的権威から徹底的に学び、人それぞれのもつ能力を最大限に引き出す、独自の能力開発メソッドを確立。クライアント企業に対する実績として「1年間で離職率8分の1」「2年間で経常利益26.8倍」「営業成約率平均31.9%UP」などがある。
自らも経営者として30年以上の部下育成の経験をもつ。2011年に未来の成功者を育てるため、小学生を対象とする日本初の非認知能力専門塾Five Keysを設立。2015年には非営利型一般財団法人日本リーダー育成推進協会(JLDA)を創設し代表理事に就任。現在は特別顧問。

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