本記事は、井上顕滋氏の著書『7つの"デキない"を変える "デキる"部下の育て方』(幻冬舎)の中から一部を抜粋・編集しています。

マネジャー
(画像=Ketrin2310 / stock.adobe.com)

実務も部下指導も多忙をきわめるプレイングマネジャー

管理職のなかには、自分自身も業務をこなしつつマネジメントをするというプレイングマネジャーも多く存在しています。

リクルートワークス研究所が、1次考課対象の部下がいる管理職を対象に行った調査(2019年)では、8割以上の管理職がプレイングマネジャーであると回答しています。また、リクルートマネジメントソリューションズの「ミドル・マネジャーの役割に関する実態調査」(2020年)によると、プレイングマネジャーが、プレーヤー業務をする理由として最も多かったのは「難度の高い業務を遂行する人材がいないため」で、次いで「難度は高くない業務だが、遂行する人材が不足しているため」「イレギュラーな業務が発生した際に、自分が対応する必要があるため」となっています。

管理職がマネジメントに集中するためにも部下を育てることは喫緊の課題です。しかしそのための研修などが会社で用意されているとは限らず、問題ある部下への対応が分からないままの上司は少なくありません。上司は自身も実務にあたりながら、限られた時間のなかで手探りで指導の仕方を試行錯誤せざるを得ないという状況におかれています。

『7つのデキないを変える デキる部下の育て方』より引用
(画像=『7つの"デキない"を変える "デキる"部下の育て方』より引用)

部下の「デキない」の原因を知ることが第一歩

マネジメントしていくうえで部下とのコミュニケーションは欠かせません。部署内で社員同士がコミュニケーションをとりやすい環境をつくるために、上司の果たす役割は重要です。

もし、部署内で良好なコミュニケーションがとれていなければ、その部署だけに限らず会社にとってさまざまな不利益が生じる恐れが出てきます。具体的にいえば、円滑なコミュニケーションがとれずに社員同士でうまく連携できない状況が続けば、社内でノウハウの共有や意見の交換がうまくできません。そうすると、会社に新たな利益をもたらすような革新的なアイデアを生み出すことは難しくなります。

それどころか、必要な情報の伝達がうまくできずにミスが起きやすくなったり、ミスへの対処も遅れたりして、事態をより悪化させてしまいます。そのため次第に社員一人ひとりにストレスが溜まり、いつしか人間関係もギクシャクするようになり、社員の仕事そのものに対するモチベーションの低下も引き起こしかねません。

そして離職者が増えていくようなことになれば、人手不足に陥ります。そうすると、業務量が変わらないのに業務に慣れた人が減って、指導が必要な新しい社員が入ってくることになるので、元からいた社員は新たな社員の教育に労力を割かれることになります。常に忙しくて精神的に余裕がなければ、職場の雰囲気もピリピリとしたものになってしまうので、新しい社員を採用することができたとしても、新入社員は定着しづらくなります。

人手不足のなかでこれまでと同様の業務量を回そうとすれば、どうしても仕事の質が落ちることは想像に難くありません。また、社内で円滑なコミュニケーションがとれていれば起きなかったようなミスを頻発していては、取引先や顧客などにも迷惑がかかり、信頼を失ってしまうことも考えられます。一度失われた信頼を回復するのは簡単なことではありません。企業に対する悪いイメージがついてしまえば当然、業績の悪化は避けられなくなります。

逆に、社内のコミュニケーションが良好であれば業績は上がります。上司が主導して前向きに仕事ができる明るい職場をつくっていけば、部下たちは会社に来るのが楽しみになり、仕事から離れている時間にも業務のヒントになるような情報を積極的に集めるようになります。すると、新規のアイデアも生まれやすくなります。新たなことに挑戦して失敗したとしても、それは本人や会社にとって成長の糧になるという共通認識があれば、仲間と協力し合って挑戦ができるようになります。それぞれの社員が主体的に仕事に向き合い、失敗を恐れずに積極的に挑戦できるようになれば、自然と会社の業績も上向くはずです。実際に、私が企業研修を行った多くの会社では、コミュニケーションの問題が解消されることによって、飛躍的に業績を伸ばしています。

ただ、自分が指導されたのと同じような方法で後輩を指導するという考えでは、うまくいかないことがほとんどです。これには世代間での価値観の違いや、コミュニケーションスタイルの変化などが主な理由として挙げられます。そのうえ少子高齢化が進行している現在は、かつてよりも少ない人数で業務を回さなければならず、多くの上司は社員の指導や育成に割ける時間を捻出することすら難しい状況に置かれているのです。

しかし、このような状況でも、上司は部下と向き合って指導していかなければなりません。そのためにも、まずは部下の「デキない」の原因を知ることこそが、部下を伸ばすための第一歩になるのです。

『7つのデキないを変える デキる部下の育て方』より引用
井上 顕滋
1970年生まれ。Result Design株式会社を2004年に設立。企業研修、経営者、経営幹部への指導実績は3,000社を超える。エグゼクティブコーチ、メンタルトレーナーとしてオリンピック出場の日本代表選手や世界一に輝いたプロスポーツ選手もサポートしている。世界最先端の心理学および脳科学を各分野の世界的権威から徹底的に学び、人それぞれのもつ能力を最大限に引き出す、独自の能力開発メソッドを確立。クライアント企業に対する実績として「1年間で離職率8分の1」「2年間で経常利益26.8倍」「営業成約率平均31.9%UP」などがある。
自らも経営者として30年以上の部下育成の経験をもつ。2011年に未来の成功者を育てるため、小学生を対象とする日本初の非認知能力専門塾Five Keysを設立。2015年には非営利型一般財団法人日本リーダー育成推進協会(JLDA)を創設し代表理事に就任。現在は特別顧問。

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『7つの"デキない"を変える "デキる"部下の育て方』
  1. 部下の「デキない」原因と多忙をきわめるプレイングマネジャーの存在
  2. 「仕事の楽しさ」を実感させる…「集中しない」部下を激変させる方法
  3. 仕事の楽しさを感じさせる6つのポイントとは?
  4. まずは上司の「評価の仕方」を見直す…新しいことに挑戦しようとしない部下を変える方法
  5. 部下の成長は、企業の成長…正しい指導・育成の仕方・考え方
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