2024年のTOB(株式公開買い付け)件数は前年比35%増の100件(届け出ベース)となった。年間100件の大台乗せは2007年(104件)以来17年ぶり、2度目だ。歴史的な活況下、証券会社による「公開買付代理人」の座をめぐる争いも白熱した。

公開買付代理人はTOBへの応募を受け付ける窓口証券会社のこと。買収者に代わって、買収対象会社の株券の保管・返還や買付代金の支払いなどの事務を引き受ける。TOBに応募する株主は代理人の証券会社に口座を開設し、株式を移管する手続きが必要となる。

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(画像=富士ソフト、常磐興産の案件(いずれも2段階)は各2件にカウント、「M&A Online」より引用)

みずほ証券、11年ぶりにトップに

2024年の代理人レースを制したのはみずほ証券。前年の9件から23件に2倍以上伸ばし、2013年(11件)以来11年ぶりにトップに返り咲いた(一覧表)。みずほは5大証券で2~3番手の“中位”が定位置となっていたが、TOB急増の流れに乗じて一気にトップに駆け上がった形だ。

一方、3年連続でトップだったSMBC日興証券は19件(前年21件)どまりで、2位に順位を下げ、これに前年より8件増やした野村証券が同数で並んだ。野村は2020年を最後にトップの座から遠ざかっている。

大和証券は年間11件と前年より4件伸ばし、2年ぶりに2ケタに乗せた。三菱UFJモルガン・スタンレー証券は前年比3件増の9件で、2ケタまであと一歩に迫った。

TOBのうちMBO(経営陣による買収)を目的とする案件の代理人に限れば、総件数19件のうちSMBC日興が7件と最も多く、野村5件、みずほ4件、三菱UFJ3件で続いた。

三田証券が引き続き健闘

中小証券では三田証券の健闘が引き続き目立ち、7件で代理人を務めた。うち1件は兵機海運をめぐる敵対的TOBだった。三田証券は対象企業の賛同を得ずに行われる敵対的TOBでの起用が多いことで知られるが、近年は敵対的案件にかかわらず、実績を積み重ねている。

既成の証券会社が幅を利かせる中、ネット専業証券として唯一、名を連ねるのはSBI証券で、その数は4件。2023年は年間8件を数え、大和、三菱UFJをしのいだが、一転、ペースを落とした。

TOB合戦が相次ぐ

2004年のTOB戦線でキーワードの一つになったのが「争奪戦」。

2023年末から24年初めにかけて、エムスリーと第一生命ホールディングスが福利厚生代行大手のベネフィット・ワンの買収を争い、年央には低温物流のC&FロジホールディングスをめぐってAZ‐COM丸和ホールディングスとSGホールディングス(傘下に佐川急便)がぶつかり合った。いずれのケースも対抗TOBを仕掛け、割って入った側の第一生命、SGが勝利した。

みずほ証券はこの2つのTOB戦に「代理人」としてかかわった。ベネワンではTOBを制した第一生命、C&Fロジでは敗れた側のAZ‐COM丸和の代理人を務めた。

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(画像=C&Fロジをめぐり、AZ‐COM丸和とSGホールディングスがTOB戦に、「M&A Online」より引用)