本記事は、山岡俊樹氏の著書『絞り込み思考』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

Data Funnel in Hand
(画像=Asif Munir / stock.adobe.com)

目的を示す4キーワード

無限にある情報の中から目的を絞り込む際、数多くの項目を参考にするのは時間がかかり、骨が折れます。

そのために絞り込み作業をスムーズにする項目を一覧にまとめましたが、これでも数が多いと感じる場合や、すぐに検討したいことがあるときのために、これらの項目を代表するキーワードを4つに絞り込んでみました。

4キーワードは次の通りです。

①許容
②時空間
③合理性
④感動

この4つに沿って目的を考えるのですが、4キーワードのうち1つだけを使ってもいいですし、いくつかをつなげて考えても良いでしょう。

絞り込み思考
(画像=絞り込み思考)

それでは、各項目について解説していきます。

①許容

私たちは今、近代合理主義の縛りから解放されて、許容・多様化の世界にいます。昭和の時代は効率が優先された時代でした。

1970年代、米国のUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)に行ったとき、そこの女子学生が校舎の外階段に座ってサンドイッチを食べているのを目の当たりにして驚いたことがありました。今では日本でもよく見る光景ですが、その当時は日本で、そういった行為ははしたないという認識でした。

時代が変わり、21世紀になると多様化が進み、許容の概念は、モノ・コトづくりや人間関係、組織などを考える際の重要なキーワードになっています。

許容を考える際に、役立つ最新のキーワードは、例えば次の通りです。

・ 「考え方や働き方などの多様性」「温かさ(思いやり)」「温かいビジネス(CSR、ESG、三方良し、など)」「柔軟性」「オープンな社会」

②時空間

時間と空間の視点から考えていきます。

時空間は、私たちが生活するうえで重要な不変の要素です。この視点は、どんな問題を考えるときにも必要不可欠です。

時空間を考える際に、役立つ最新のキーワードは、例えば次の通りです。

・時間:「時間軸(過去・現在・未来)」「生活時間」「労働時間」「手順/順番」
・空間:「構造」「ゆとり空間」「人とモノとの距離感」「人とモノとの最適な距離」

③合理性

モノ・コトづくりや人間関係、ビジネスでも、考え方や行動の基礎として合理性は重要です。

すべてを合理性で処理をしようとすると問題が起きますが、基礎部分では合理性は大事な要素です。

例えば、親子や友人の間でも、お金のやりとりは厳密にしなくてはならないというのも一種の合理性です。

合理性を考える際に役立つ最新のキーワードは、例えば次の通りです。

・「効率性」「システム」「論理性」「シンプル」

④感動

ここまで述べた3項目、あるいは1項目でもいいのですが、それが感動につながるとより良い答えを導き出せます。

それでは、具体的に例を挙げながら説明していきましょう。

病院の「こうありたい姿」を4キーワードに当てはめて考えてみます。

①許容: 院内では温かいもてなしがあり、自由に行動でき、ホテルに滞在している感覚がある
②時空間:自宅で過ごしている感覚がある
③合理性:効率的な運用を可能とする病院管理システムである
④感動:楽しい快適な時間を過ごせる

以上の情報から、病院の「こうありたい姿」として、従来の病気を治す場所ではなく、「『新しい人生の門出』を迎える場所にする」というのを目的とするのはどうでしょうか。

次に、同僚との理想的な人間関係の目的を考えてみましょう。

①許容:相手に対する寛容の精神、感謝の気持ちが必要
②時空間:どんなところでも、どんなときでも
③合理性:無理難題が起きても論理的な精神で対応する
④感動:これらの対応が心に響き、感動が生まれる

などを考えられるかもしれません。

ここから、「お互いが共感する人間関係をつくる」といった目的が考えられます。

このように、4キーワードで目的を考えてみるのもおすすめです。

絞り込み思考
(画像=絞り込み思考)
絞り込み思考
山岡 俊樹(やまおか・としき)
和歌山大学名誉教授/元京都女子大学教授/感性工学会・ヒューマンデザインテクノロジー研究部会部会長/人間中心設計推進機構(HCD-Net)・監事/HALデザイン研究所・顧問/認定人間工学専門家/学術博士
神奈川県横浜市出身。1971年、千葉大学工学部工業意匠学科卒。同年、東京芝浦電気(現東芝)に入社。1991年、千葉大学自然科学研究科博士課程修了。1995年以降、東芝デザインセンター担当部長他、東芝情報・通信システム研究所ヒューマンインタフェース技術研究センター研究主幹を兼務。1998年、和歌山大学システム工学部デザイン情報学科教授、2014年、京都女子大学家政学部生活造形学科教授。デザインと応用人間工学を中核にしたデザイン人間工学を提唱し、新しいモノ・コト・システムづくりを提案。
著書に、『Human Factors and Ergonomics in Consumer Product Design:Methods and Techniques』(分担執筆/CRC Press, USA)、『デザイン人間工学』(共立出版)、『デザイン人間工学の基本』(編著/武蔵野美術大学出版局)、『デザイン3.0の教科書』(海文堂出版)、『サービスデザインでビジネスを作る』(技報堂出版)、『サービスデザインの発想法』(編著/オーム社)など多数。 株式会社オージス総研のサイトにて行動観察コラムを執筆中
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