新しい資本主義の担い手であるベンチャー企業。政府からユニコーン100社創出が宣言されたこの状況下において、「現在の成長企業・ベンチャー企業の生き様」は、最大の関心事項と言える。ジャンルを問わず、一社のトップである「社長」は何を思い、どこにビジネスチャンスを見出しているのか。その経営戦略について、これまでの変遷を踏まえ、様々な角度からメスを入れる。

株式会社ウインテック
(画像=株式会社ウインテック)
松本 健太郎(まつもと けんたろう)――代表取締役
大阪府出身、1970年生まれ。
公務員や大手企業での経験を経て、「人に役立つ仕事」にこだわり個人事業主として独立、2014年に株式会社ウインテックを設立した。2015年には、「魔法のふせん『magnetic NOTE』」が日本文具大賞を受賞し、5万個でヒット商品と言われる文具業界で年間20万個を販売するヒット商品となる。現在は、子どもの未来に貢献することを大切に、自然保護と日本のモノづくりに注力し、2024年に初の自社開発製品となる知育積み木「KIKKA(キッカ)」を発表した。
私たちは、「子どもの健やかな成長」と「豊かな自然を未来に引き継ぐ」ことを目指す会社です。
2014年の設立以来、子育てに笑顔をもたらす製品として、海外の新しい価値を日本に適した製品にアレンジしヒット商品を生み出してきました。2024年には、日本ならではのモノづくりを活かした知育積み木「KIKKA」を発表。キッズデザイン賞を受賞、多数のメディアに掲載されるなど、注目を集めています。
未来を担う子どもたちと、それを支える家族のために、日々楽しく新しい挑戦を続けています。

目次

  1. これまでの事業変遷
  2. 飛躍的な成長を遂げた秘訣
  3. 経営判断をする上で重要視している点
  4. 今後の事業展開や投資領域
  5. メディアユーザーへ一言

これまでの事業変遷

—— これまでの事業の変遷について教えてください。

株式会社ウインテック 代表取締役社長・松本 健太郎氏(以下、社名・氏名略) 私は公務員や金融機関を経て、個人事業主として独立しました。当初は中小企業の支援を中心に活動していましたが、取引先が徐々に拡大する中で「法人化してほしい」との要望を受け、会社を設立しました。現在も業務改善やIT関連事業でお取引させていただく企業も一部ありますが、今は自社業務に集中する体制を整えているところです。

—— 法人化後の事業展開について詳しく教えてください。

松本 法人化を機に、新たな事業の柱を立てるべく新しい挑戦を始めました。 私自身、IT管理や改善が得意であることに加え、子育てや自然環境保護の分野に深い関心を持っていました。 そうした背景から、子どもの成長や子育てに貢献できる商品の輸入販売をスタートしました。

—— なぜ輸入品を選んだのですか?

松本 日本は、新しいものを生み出すというより、既存のものを改善し、より良いものを作り上げる力に優れています。

一方、海外には先進的なアイデアや素晴らしいコンセプトを持つ製品が数多く存在していますが、そのままでは日本ではなかなか受け入れらないものも少なくありません。

そこで「どうすれば日本でも受け入れられるのか」を考え、改善して提供することに取り組みました。 こうした取り組みを通じて、「ちょっと楽しくなる」「ちょっとラクになる」ような、小さな幸せのキッカケをお届けしたいと思っています。

飛躍的な成長を遂げた秘訣

—— 次に、飛躍的な成長を遂げた秘訣について教えていただけますか。

松本 輸入事業を始めて気づいたのですが、海外には素晴らしい製品がたくさんある一方で、そのままでは日本では受け入れられないものも多いのです。その理由の一つには、品質や生産管理の基準、そして物に対する価値観の違いが大きく影響しています。

例えば、日本ではお店に並んでいる商品の箱が少し潰れているだけで、手に取られないことがよくありますよね。 一方、海外ではそうした細かい点をあまり気にしない文化があります。

箱が潰れていたり、袋が少しくしゃくしゃになっていても、中身さえ無事なら気にしない人が多いんです。 日本人は、袋や箱のきれいな商品を選ぶ傾向がありますよね。

中身は同じで、その袋や箱はすぐに捨ててしまうのに。

—— 確かに、日本の消費者はそういった細かい部分を気にしますね。

松本 そういった文化の違いは、海外の方々にはなかなか理解されにくいものです。 しかし、それを前提に海外のビジネスは成り立っており、そのまま日本に持ち込んでも、日本人には受け入れてもらえません。

そのギャップを丁寧に埋めることで、海外で生まれた素晴らしい価値観や商品を、日本でも受け入れられる形にすることができました。

商品の品質や外観を整え、売れる状態、受け入れてもらえる状態にすることで、その商品の素晴らしいコンセプトや発想が評価されるようになるのだと思います。 見た目や品質を整えると、自然と中身にも目を向けてもらえるようになります。

そうした取り組みの結果、日本文具大賞やグッドデザイン賞を受賞し、メディアでも取り上げていただきました。 それが話題を呼び、大手企業からの発注が増加。 最初は小売りからスタートした事業も、次第に卸売りへとシフトし、事業が成長していきました。

経営判断をする上で重要視している点

ーー 経営判断をするうえで、社長が最重視している点を教えてください。

松本 私が最も大切にしているのは「誠実であること」です。

これは、ビジネスにおける基本だと考えています。

私は曲がったことやごまかしが嫌いで、 そうした点に対しては、決して妥協したくないという強い信念があります。 若い頃はその姿勢が原因で衝突することもありましたが、今では衝突こそしませんが、この信念は変わらず持ち続けています。

ーー 過去に具体的なエピソードがあれば教えてください。

松本 以前、「マグネティックノート」という文房具で日本文具大賞を受賞しました。この商品は静電気を利用してどこにでも貼れる付箋で、テレビや雑誌で大きな話題を呼びました。

しかし、大手問屋さんと販売について交渉した際、提示された条件は非常に厳しく、文具1つの注文であっても送料や振込手数料をこちらが負担するという、少し無理な提案を受けました。 もちろん、その条件では取引を受け入れることができず、結果として半年間もお取引が成立しない状況が続きました。

ーー 半年間も受注がない状況は、かなり厳しかったのでは?

松本 そうですね。当時は3万個もの在庫を抱え、「このままでは会社が潰れるのではないか」と思ったほどでした。 しかし、その後多くのメディアで商品が取り上げられるようになり、消費者の皆さんから直接店舗に「この商品が欲しい」という声が届き始めました。

それが転機となり、大手問屋さんから「条件は合わせるので商品を卸してほしい」と言われるようになったんです。

ーー 結果的に在庫はどうなったのですか?

松本 3万個あった在庫は、出荷開始からわずか3日で完売しました。そこから再生産を開始し、最終的には20万個を超えるヒット商品になりました。この経験を通じて、消費者に対して誠実に向き合うことで結果はついてくると再確認できたように思います。

ーー 問屋との交渉や取引の難しさについても触れていましたね。

松本 日本の流通では、問屋を通さなければ商品が市場に流通しない仕組みが根付いています。 小さなメーカーにとって、問屋が提示する条件に応じるのは難しく、商品を市場に流通させることが非常に難しいのです。 しかし、現在ではプラットフォームやECサイトの普及により、自社で直接販売する道が広がっています。

ーー その一方で、ECサイトを活用するにも課題がありますよね。

松本 その通りです。プラットフォームの手数料や広告費などが利益を圧迫することは避けられません。直接販売では、広告やSNSを活用して自社サイトでの販売を伸ばさなければなりませんが、現在は情報が溢れている時代です。SNSでの発信や広告の出稿だけでは、昔ほどの効果が得られないのも現実です。

ーー では、今後の販売戦略はどのようにお考えですか?

松本 メディアを活用して商品の魅力を発信することは非常に重要だと考えています。そのためには、まず商品そのものが確かなものであること、そしてその価値を正しく伝え、正当に評価してもらうことが大切です。 例えば、グッドデザイン賞やキッズデザイン賞などの受賞歴があると信頼性が高まり、広く認知されるきっかけとなることがあります。

今後の事業展開や投資領域

—— 現在は自社開発の商品も販売されているんですよね。

松本 コロナ禍がきっかけで、海外と日本の貿易がほぼ停止し、工場の閉鎖や港の凍結などで、日本への物資の輸入が途絶える状況が続きました。

私たちとしては、商品の仕入れができない状況に直面し、百貨店などの店舗も苦戦。お客様がお店に足を運ばないことで、売り場が縮小され、販売市場も失われていく中で、事業をどう進めていくべきかを模索しました。

そこで、今後の展開として、日本国内で生産した商品を海外に販売する道を選びました。特に円安の影響で海外からの仕入れが厳しくなっている中、リスク分散の観点からも、日本国内での生産を大切にしていきたいと考えています。

—— 商品開発の経緯などもぜひ教えてください。

松本 日本の子どもたちの成長をサポートしたいという思いから、私は「考える力」を育ててゆくキッカケを作りたいと考えました。

現代は情報が溢れ、じっくり考える時間を取ることが難しくなっているように感じます。

しかし、人が成長するためには「自ら考えて行動する」ことがとても大切です。そこで、遊びの中で自然と考える力を育てられる積み木を開発しようと考えたんです。

最初は「積めない積み木を作る」というアイデアからスタートしましたが、それでは積み木にならないため、構想を発展させて、X型とK型の積み木が誕生したんです。

株式会社ウインテック
(画像=株式会社ウインテック)

—— X型とK型の積み木の特徴とは?

松本 X型の積み木は、4段積むだけで理論上1,331通りの積み方が可能です。通常の積み木は4段で27通り。比較するとその差は圧倒的です。さらにK型を組み合わせることで、パターン数は3万を超えます。この多様性が、子どもの想像力や思考力を引き出します。

現在、この積み木は国際的な意匠権を取得済みで、今は国際的な特許権を出願しています。

—— 世界的な特許ということは、海外展開も視野に入れているのですか?

松本 はい。日本の積み木は、海外のモノと比べてあまり有名なものはありませんでしたが、この商品で世界に挑戦したいと思っています。

日本固有の木材であるヒノキを使用し、香りや質感といった五感を刺激する製品に仕上げました。また、日本の文化やモノづくりの素晴らしさを発信できる機会にもなると考えています。

—— 自社開発商品も含めて、貴社では知育玩具や子育て支援をテーマに事業を進めているのですね。

松本 はい、その通りです。私たちが最も大切にしているのは、子どもたちの未来に貢献することです。

子どもたちが成長できる環境を作ることや、豊かな自然を次の世代に引き継ぐこと、そして人間らしく生きていける環境を守ることが大切だと考えています。自分たちの世代だけでなく、未来の子どもたちや孫、さらにはその先の子孫たちが豊かに暮らせるよう、少しでもお手伝いできればと思っています。

株式会社ウインテック
(画像=株式会社ウインテック)

メディアユーザーへ一言

—— 最後に、メディアユーザーの皆様へ一言お願いできますか。

松本 はい、もちろんです。おそらく、こちらのメディアを読んでおられる皆様は、子どもを育てる環境の重要性や自然環境の保護について、すでに深く理解されていることと思います。

経済的に余裕のある方々は、そのような大切な事柄に目を向け、投資を行い、選択をすることが可能ですが、すべての方がそうできるわけではないのが現実です。

ですので、そういったところに目を向けている方々には、ぜひ子どもたちの未来をどのように守っていくべきか、改めて考えていただく機会になればと思います。 そして、できることならば、その未来への投資として、そうした活動や取り組みにもご支援いただけると嬉しいです。 もちろん、それは弊社に対してではなく、広く社会全体のためにという意味です。

日本の文化や歴史、自然環境、産業といった素晴らしいものを守り、育てていかなければ、私たちの社会は住みにくくなり、子どもたちが成長しにくい環境になってしまうでしょう。 どうか、子どもたちの未来のために、国内の良いものに目を向け、それを選び、支えていただけることを心から願っています。

また、旅行やお出かけの際には、その地域の自然や文化を守るためにも、ぜひ地元の経済にも貢献していただけると嬉しく思います。

株式会社ウインテック
(画像=株式会社ウインテック)
氏名
松本 健太郎(まつもと けんたろう)
社名
株式会社ウインテック
役職
代表取締役

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