日鉄、USスチール買収の山場に
日米間では目下、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチール買収の帰趨に注目が集まっている。日鉄が約2兆円を投じるUSスチールの買収を発表したのは2023年12月。当初は2024年7~9月期までの買収完了を見込んでいたが、米大統領選の争点の一つになり、バイデン前大統領が今年1月早々、買収阻止を命じた。日鉄側は命令の取り消しを求めて提訴中。
先の日米首脳会談後の記者会見で、トランプ大統領は「買収ではなく、多額の投資で合意した」としたが、そのスキームなど具体的な内容は判然としていない。近く行われるトランプ大統領と日鉄幹部との協議が最大の山場となる見通しだ。
国内の上場企業同士のM&A破談も散発的に起きている。荘内銀行(山形県鶴岡市)と北都銀行(秋田市)を傘下に置くフィデアホールディングスと東北銀行(盛岡市)は2021年7月、2022年10月に経営統合することで合意したが、半年後に中止となった。
また、保育大手のグローバルキッズCOMPANYと、さくらさくプラスが2022年7月、統合の基本合意から3カ月に撤回した。
“選択肢”が限られる自動車業界
その昔、三菱銀行と第一銀行の合併合意が白紙に戻ったことがある。1969年にさかのぼる。読売新聞は元旦付1面トップで両行の合併を報じたが、第一銀行側で合併に対する行内の意思統一が得られず、結果的に幻の大スクープに終わった。
当の第一銀行は2年後の1971年、同じく中位都銀の日本勧業銀行と合併し、第一勧業銀行(現在のみずほフィナンシャルグループ)となった。当時、都銀同士の合併は戦後初。合併破談が新たな合併を呼ぶ原動力にもなった。そのころ、都銀は10数行がひしめき、ある意味、合併相手に困ることはなかった。
今回のホンダ、日産の一件が日本のM&A史に残る破談であることは間違いない。では、統合相手として別の候補が存在するのかといえば、甚だ疑問だ。
現在、国内乗用車メーカーは8社を数えるが、トヨタ自動車はダイハツ工業を子会社とし、スズキ、SUBARU、マツダとは資本関係を持ち、「トヨタ連合」ができ上がっている。日産は三菱自動車の筆頭株主。こうした中、唯一、資本面での独立を守ってきたのがホンダだった。
◎主なM&Aの中止案件(HCはホールディングスの略)

文:M&A Online