ホンダと日産自動車の経営統合がとん挫した。実現すれば、世界第3位の自動車グループが誕生する見通しだったが、協議開始から1カ月半あまりで振り出しに戻った。今回の破談劇はスケールの点で別格とはいえ、実は、買収や経営統合で基本合意しながら、最終的に条件が折り合わず、M&Aを中止するケースは決して少なくない(一覧表参照)。

日産、ホンダによる子会社案に反発

ホンダと日産は2月13日、経営統合の協議を打ち切ったと正式に発表した。業績不振に陥っている日産の事業再生(ターンアラウンド)計画の進捗や、統合方式などをめぐって両社の意見の隔たりが大きく、溝が埋まらなかったのが主因だ。

両社が経営統合に向けた協議入りで合意したのは昨年12月下旬。共同持ち株会社を2026年8月に設立し、その下にホンダと日産が事業会社としてぶらさがる形を想定。ただ、持ち株会社のトップと取締役の過半数はホンダが指名することが前提で、ホンダ主導が鮮明になっていた。

日産は当初、1月末をめどに人員や生産規模の削減を柱とする事業再生計画の具体案を策定することにしていたが、取りまとめが難航。ホンダは日産を傘下に置く子会社化を提案したが、「対等の関係」を主張する日産が強く反発し、今年6月の最終契約を目指す統合協議に赤信号が点滅していた。

2024年の販売台数はホンダが380万台、日産が334万台で世界7位、同8位に位置する。経営統合で合計台数は700万台を超え、韓国の現代自動車・起亜にほぼ並ぶ世界3位グループに浮上する見通しだったが、画餅に帰した形だ。

SBG、富士フイルムのケースは

日本企業がかかわるM&Aで過去最大の破談劇として記憶に新しいのはソフトバンクグループ(SBG)による半導体設計子会社・英国アームの売却案件。

SBGは2020年9月、米半導体大手のエヌビディアに4.2兆円で売却することを発表した。しかし、半導体市場での寡占などを懸念する各国競争当局の審査が難航したことなどを理由に1年半後の2022年2月に売却を白紙に戻した。

SBGは売却断念に伴い、アームの株式上場(2023年9月に米ナスダックに新規上場)に方向転換することで資金化を図った。

日米を揺るがす1年半にわたる騒動の末、富士フイルムホールディングスが事務機器大手の米国ゼロックスの買収断念を発表したのは2019年11月のことだ。富士フイルムは事務機世界トップに立つ構想だったが、想定外の事態に翻弄された。

ゼロックスは富士フイルムによる買収に合意しながら、大株主の反発を受けて一方的に合意を破棄したことから、法廷闘争にまで発展した。

M&A Online
(画像=富士フイルムホールディングスの本社(東京・六本木)、「M&A Online」より引用)