新しい資本主義の担い手であるベンチャー企業。政府からユニコーン100社創出が宣言されたこの状況下において、「現在の成長企業・ベンチャー企業の生き様」は、最大の関心事項と言える。ジャンルを問わず、一社のトップである「社長」は何を思い、どこにビジネスチャンスを見出しているのか。その経営戦略について、これまでの変遷を踏まえ、様々な角度からメスを入れる。

これまでの事業変遷
—— 創業時の事業について教えていただけますか。
株式会社リバスタ 代表取締役・高橋 巧氏(以下社名、氏名略) 弊社の設立は2007年で、当時の社名は「e-reverse.com(イーリバースドットコム)」でした。社名の由来は、創業時の事業として、産業廃棄物の処理業務で発生するマニフェスト伝票を電子化するサービス「e-reverse.com」を提供していたからです。環境省が推進する電子マニフェスト制度※1に対応した形で、建設業界向けに使い勝手の良いシステムを提供したいという思いから創業しました。
当時、環境省が発表した業種別の産業廃棄物排出量において建設業は第3位となっており※2、不法投棄件数・投棄量ともに建設廃棄物が約8割を占める※3との結果が出ていました。不法投棄の防止や管理業務の効率化を図るには電子マニフェスト導入の推進が不可欠だったと思います。しかし、環境省が所管する公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センターが運営する電子マニフェストサービス「JWNET」の仕様では、支店や部署ごとに電子マニフェストを管理・集計する機能がない等、建設現場での運用に馴染みにくかったことから、我々は建設業界に特化した電子マニフェストサービスである「e-reverse.com」を独自に開発し、提供を開始しました。
「e-reverse.com」の提供により、建設現場における産業廃棄物の管理業務を効率化し、業界全体のデジタル化を後押しできたと自負しています。現在では全国3,900社以上の元請会社、1万社以上の収集運搬業者、4,000カ所以上の処分場、累計で71万以上の現場でご利用いただいており、業界最大級の電子マニフェストサービスとなっています。この圧倒的な顧客基盤が我々の強みの一つです。
—— 創業当初から成長の軸となるサービスを展開されてきたのですね。その後の展開についても教えていただけますか?
高橋 電子マニフェスト事業に続いて、建設DX領域の事業にも進出しました。17年からは「Buildee(ビルディー)」という、建設現場の施工管理業務のデジタル化・効率化をオールインワンで実現するサービスを展開しています。建設業界では担い手不足などの課題が深刻化しており、従来人海戦術で行われていた作業をICTによって効率化し、生産性を向上させることが求められています。当社は「Buildee」の提供により、建設現場で毎日行われる調整会議の作業間連絡調整や入退場管理、安全書類作成などの業務効率化を実現し、施工管理業務の生産性向上に寄与することを目指しています。現在は600社以上の元請会社、累計2万以上の現場、160万人を超える作業員の方にご登録いただいており、業界最大級の施工管理領域クラウドサービスとして普及しています。
また、20年には「Buildee」と連携した、建設現場のICT機器ソリューション「BANKEN(バンケン)」の提供を開始しました。さらなるサービスの展開を見据え、社名を現在の「リバスタ」に変更したのもこの時期です。「STANDARD(常識)をREVERSE(ひっくり返す)して、業界の改革を牽引していきたい」という思いを込めました。そして24年には新たに3つのサービス提供を開始しています。

—— これからの事業の方向性をお聞かせください。
高橋 今後の展望として、我々は二つの大きな事業の柱を掲げています。一つ目は「サステナビリティ事業」です。創業時の事業である「e-reverse.com」に加え、24年に提供を開始した、建設現場のCO2算定サービス「TansoMiru(タンソミル)」による脱炭素経営の支援などを通し、環境保全やカーボンニュートラル実現への貢献を目指します。 二つ目は「建設DX事業」で、「Buildee」や「BANKEN」、24年に提供を開始した建設技能者向けポイント付与サービス「ビルダーズポイント」と施工管理業務の標準化、ノウハウ継承を支援するサービス「GENBATON(ゲンバトン)」などを通じ、施工管理業務の生産性向上や標準化、現場の魅力向上などを実現したいと思っています。 これら二つの事業を通し、我々の強みである建設業界への深い理解や技術力なども活かしながら、建設業界の持続可能な発展に貢献していきたいと考えています。
飛躍的な成長を遂げた秘訣
—— 貴社が飛躍的な成長を遂げた秘訣についてお聞かせください。
高橋 一つ目の秘訣は、「ユーザー目線に立つ」を徹底したことです。私は、鹿島建設退社後にベンチャー企業へ入社し、事業に大失敗した経験があります。そこで深く学んだのは「ビジネスでお客様を獲得し、収益を上げ続けるためには何が必要か?」ということでした。その教訓を踏まえ、リバスタでは常に共創の姿勢で、お客様が抱える課題を解決するためのソリューション提供を追求してきました。
例えば建設業界では、元請会社において本社、支店、現場という組織構造がありますが、私たちが提供するサービスのほとんどは現場で利用されているものです。そのため、現場での評価が非常に重要です。これまで我々は、実際に現場に行ってユーザーの声をお聞きしながら、システムの改修を重ねてきました。そして各現場での活用事例を他の現場や会社にもお伝えすることで、導入社数やユーザー数が順調に増加してきているのだと思います。
—— 現場目線を重視する姿勢が功を奏したということですね。他にも成長を支えたポイントはありますか?
高橋 そうですね。もう一つは、私自身が鹿島建設に勤めていた経験から、建設業界特有の構造等を理解したうえで営業戦略を立てることができた点だと考えます。
—— 業界特性を理解した上での戦略が、結果的に大きな成果につながったのですね。さらに普及のための工夫もあったのでしょうか?
高橋 もちろんです。普及のためには、カスタマーサポートやカスタマーサクセスの強化が不可欠でした。繰り返しになりますが、我々のサービスは現場で実際に利便性を実感いただけないと導入されることはないと考えています。そのため、現場にしっかりとサービスを根付かせるためのサポート体制を充実させました。結果として、サービスを一度導入いただいたお客様が離れることはほとんどなく、継続率の高さによって経営の安定化を図れていると思います。この顧客基盤があるからこそ、新規事業開発や既存事業の強化などにも注力でき、売上・収益のさらなる増加につながっています。
経営判断をする上で重要視している点
—— 経営判断をする上で重要視している点についてお伺いしたいのですが、いかがでしょうか?
高橋 新たにサービス開発を検討する際には、実際に利用するユーザーに需要があるのか、そしてサービスとして提供する際に業界標準化を目指せるかを判断しています。新サービスによって提供できる価値は「現場が本当に望んでいることなのか」と「一社だけでなく他社にも共通の課題があるのか」を重要視します。
—— つまり、業界課題の解決を見据えた経営判断が重要ということでしょうか?
高橋 その通りです。我々が培ってきたソリューションの提供を通じて、建設業界が抱えているさまざまな課題の解決に貢献するとともに、業界全体の変革の一助になれるよう挑戦を続けていきます。
今後の事業展開や投資領域
—— 今後の事業展開を伺いたいのですが、特に投資領域についてどのようにお考えでしょうか?
高橋 今後の事業展開については、他社との協業やアライアンスも選択肢の一つとして検討し、サービスの提供領域をより拡大したいと考えています。
一例を挙げると、24年には建設業の脱炭素化支援に関する協議を進めていくため、アスエネ株式会社様と業務提携に関する基本合意書を締結しました。アスエネ様との協力関係を構築することで、脱炭素経営をより幅広く支援することができると考えています。
—— 他にどのようなステークホルダーとの連携を考えているのでしょうか?
高橋 我々が現在提供しているサービスは、元請会社や協力会社に対するものが中心ですが、今後は設計会社やデベロッパーなどにも提供範囲を広げていきたいと思っています。幅広いステークホルダーに対するサービス開発や提供を強化することが、建設業界全体の変革を促すことにつながると確信しています。
メディアユーザーへ一言
—— メディアユーザーへのメッセージをお願いします。
高橋 我々リバスタは【「つくる」の現場から、世界を変える。】をミッションに掲げ、建設現場を中心に業界の変革を促進する取り組みを続けてまいります。我々の思いや方向性に共感していただける方々、または応援してくださる方々と一緒に未来の社会に貢献したいと考えています。
- 氏名
- 高橋 巧(たかはし たくみ)
- 社名
- 株式会社リバスタ
- 役職
- 代表取締役