
2003年2月 オンボード生産部長
2006年5月 東日本営業部長
2008年8月 ユニット生産部長
2011年8月 無錫コーセル開発プロジェクト プロジェクトリーダー
2013年8月 取締役
2017年8月 常務取締役生産統括
2020年8月 常務取締役SCM担当
2022年8月 代表取締役社長 社長執行役員
現在に至る
これまでの事業変遷について
—— これまでの事業変遷について教えていただけますか。
コーセル株式会社 代表取締役社長・斉藤 盛雄氏(以下、社名・氏名略) 当社は「Electronics」で「Control」するものを事業の柱とすべく、「ELCO」:エルコー株式会社(現 コーセル株式会社 ※1)として設立(1969年)しました。当初は商社、メーカーの2つの機能をあわせ持つ「何でも屋」として事業を行っていましたが、その後はメーカー機能1本に集約、直流安定化電源専業メーカーとしてお客様の要望に応じたカスタム電源と当社独自の標準電源の2つの柱で開発、生産するようになりました。その後、市場規模の大きいカスタム電源を捨て、収益性の高い標準電源に絞って事業を進めることとし、現在に至っています。
(※1・・・1992年に社名変更:エルコーを越える会社にしたい(越すエルコー)との意)。

—— 「選択と集中」が成長の鍵だったのですね。他に重要なポイントがあれば教えてください。
斉藤 当社では「品質」を重視し、「メイド・イン・ジャパン」にこだわって事業展開してきましたが、2011年に中国(無錫)に工場を新設しました。この工場は日本と同等の“ものづくり品質”を目指して立ち上げたもので、2012年に生産を開始し、ものづくりとともに、サプライチェーン全体のグローバル化に踏み出しました。
——「ものづくりのグローバル化」が大きな転機となったのですね。その後の展開について教えてください。
斉藤 2018年にはヨーロッパのスウェーデン企業を買収しました。当社にとって初めての経験となりました。また、今年の4月には台湾のLITEON社と資本業務提携を結び、両社の知識・技術を重ね合わせることで新たなシナジー効果を生み出せるものと確信しています。この提携には大きな期待を寄せています。
自社事業の強みについて
—— 高い利益率維持のために、どのような強みや差別化要因を持っているとお考えですか?
斉藤 当社の標準電源は製品寿命が比較的長いことが特徴です。15年以上にわたって主力製品であり続けるものもあります。この点が利益率にもつながる一つの要因と考えていますが、昨今、電源に搭載する購入部品の生産中止が数多く発生しており、製品寿命を維持することが難しくなってきています。このようなとりまく環境の変化もあって、旧製品への依存から早期に脱却できるよう、新製品開発を強化しています。
—— 新製品開発の具体的な進め方について教えてください。
斉藤 新製品開発の進捗状況をトップ自らが定期的に確認し、納期を厳守する体制をとっています。また、当社の経営基盤であるTQMの取り組みのなかで、新製品開発に向けたイベントを遵守するための活動を行っています。
—— 今期は29モデルの開発を計画されていると伺いましたが、進捗はいかがでしょうか?
斉藤 TQMの一環で各部が推進する活動のなかで、現場が自ら目標を設定して取り組んでおり、各部それぞれが責任を持って進めています。私としては、自分たちで掲げた目標をきちんと形にすることが重要だと考えており、そのプロセス・過程を見ながら他の執行役員とともに支援するようにしています。
ぶつかった壁やその乗り越え方
—— どのような壁に直面し、どのように乗り越えてこられたか教えてください。
斉藤 社長に就任してからの2年間はコロナ禍の影響もあり、受注が低迷していました。この時期を大変だと言われることも多かったのですが、私はむしろ「変革」のためのチャンスだと捉えていました。皆が「変わらなければならない」と感じている時期だからこそ、変化に向けた方向性を受け入れてもらいやすいと考えていました。このような状況下で社長になれたことは、結果的に良かったと思っています。
また、中国で会社を立ち上げ、社長を務めた経験も現在の経営に役立っています。小規模な組織で経営の基本を学び、苦労を経験できたことが当社の現在の舵取りに活きていると感じています。
—— 過去の勢力との対立や、中国から戻られての感覚の違いなどはありませんでしたか?
斉藤 特に過去の勢力との対立はありませんでした。私が社長になることは、社内的にも自然な流れで受け入れられました。前任の社長も長期間務められており、世代交代の時期が来たという感覚でした。
今後の経営・事業の展望
—— 台湾のLITEON社との提携についてお聞かせください。傘下に入るのではなく、パートナーとしての提携を選ばれた背景は何でしょうか?
斉藤 当社では、次期(第11次)中期経営計画に向けて新たな成長の柱が必要だと考えていました。売上をさらに伸ばすためには新しい市場への参入が課題です。そんな中、LITEON社から訪問の申し入れがありました。
LITEON社はカスタム電源で世界第2位の売上を誇る企業です。企業規模からすれば「虎と猫」、ただ、LITEON社から一緒にビジネスを進めたいという申し出を受けてまずは両社で何ができそうかを検討することにしました。そのなかで、両社は対等であるべきとの思いを強くしたことから、LITEON社の傘下に入るのではなく、あくまでビジネスパートナーとして協業する道を選択しました。私たちコーセルにとって、このLITEON社との資本業務提携は新しい市場へ進出するチャンスがあると思っています。
資本業務提携の検討を進める過程では、社内調整が難航した部分もありましたが、海外企業との交渉はスピードも求められることもあり、ベースとなる考え方を内部で共有し、譲れるところとそうでないところを明確にしながら交渉を重ね、最終合意に至りました。
—— 提携後の進展についてはいかがですか?
斉藤 提携後もLITEON社のスピード感には驚かされています。提案内容の迅速さや的確さは非常に印象的です。 また、この資本業務提携の一環としてLITEON社から当社取締役を1名迎え入れることになりましたが、LITEON社の会長が自ら当社の取締役に就任いただくことになりました。LITEON社の本気度が伝わってきて、何としてもこの資本業務提携を成功させたいとの思いをあらためて強く持ちました。
M&Aの捉え方
—— M&Aに対する経営者の考え方は非常に興味深いです。株式を19.99%以下という割合で保有するという決断について、特に交渉やコミュニケーションの際に工夫された点や重視されたポイントを教えてください。
斉藤 前述のとおりLITEON社の傘下に入るのではなく、あくまでビジネスパートナーとして協業する道を選択したこと、また当社の株主構成上、将来に向けて安定性を確保する必要もあったことから、19.99%以下とすることとしました。
—— 株式の譲渡割合についても戦略的な決定が必要だったのですね。その具体的なプロセスについて教えてください。
斉藤 大株主との交渉により保有株式の一部を拠出していただけることとなりました。このことは本件に関し、大株主が同意してくれていることの意思表示にもつながるとともに、株式の希薄化の影響を最小化する意味合いもあり、とても重要な対応であったと思っています。 これにより、第三者割当による新株式の発行及び自己株式の処分、株式の売り出しを合わせて当初の目論見どおり、19.99%を実現しました。
今後は、LITEON社との業務連携を具体化しながら、同社とのシナジー創出に努めていくとともに、当社としての新しいビジネス創出につなげていきたいと考えています。もちろん、そのためのM&Aも視野にいれたうえで取り組んでいく所存です。
—— 本日は貴重なお話をありがとうございました。

- 氏名
- 斉藤 盛雄(さいとう もりお)
- 社名
- コーセル株式会社
- 役職
- 代表取締役社長