異母兄弟の相続権とトラブル回避法について知っておくべきポイント
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相続人に異母兄弟がいる場合、相続トラブルが発生する可能性があります。

どのようにしたら、異母兄弟とスムーズに相続をおこなえるのでしょうか。

異母兄弟の相続権とトラブルを回避する方法について知っておくべきポイントを解説します。

この記事でわかること
  • 異母兄弟は、父親が同じで母親が異なる兄弟を指し、相続順位は現在の家族の子と同じである
  • 相続争いを避けるためには、法的に有効な遺言書を作成することが重要
  • 遺言執行者の指定、異母兄弟への連絡は手紙でおこなう、専門家(弁護士)を活用するなど、事前の準備が円滑な相続に不可欠

目次

  1. 異母兄弟とは?
  2. 異母兄弟の相続順位と相続割合
  3. 異母兄弟の相続における法律的な注意点
  4. 異母兄弟に財産を渡したくない場合の対応方法
  5. 異母兄弟に相続する場合の手続きの流れ
  6. 必要書類とその取得方法
  7. 調停・審判・訴訟など法的手段の可能性も
  8. 異母兄弟との遺産分割の方法
  9. 異母兄弟の相続をスムーズに進めるための対策
  10. 相続に関して異母兄弟に連絡しなかった場合
  11. まとめ|異母兄弟との相続トラブルを避けスムーズな相続を目指そう

異母兄弟とは?

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異母兄弟とは、父親が同じで母親が異なる兄弟(または姉妹)を指します。

いわゆる「腹違いの子」と呼ばれる存在です。

正式な読み方は「いぼけいてい」ですが、「いぼきょうだい」という呼び方が一般的になっています。

自分が前妻との子である場合は、自分から見て後妻との子が異母兄弟となります。

反対に自分が後妻との子であれば、前妻との子が異母兄弟になるという関係にあります。

異母兄弟の相続順位と相続割合

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異母兄弟の相続順位と相続割合がどのくらいになるかは、被相続人となる父親にとって大きな関心事でしょう。

異母兄弟の相続権と順位

被相続人が亡くなって相続が発生したときに、誰が相続人かを洗い出すことになります。

相続人の中に異母兄弟がいた場合、現在の家族ではないので、相続権に差が出るようなイメージがあります。

しかし異母兄弟であっても現在の家族の子と同じように相続権が認められます。

異母兄弟の相続権順位は、現在の家族の子と同じく第1位です。

異母兄弟だからといって順位が低くなるわけではないので、注意して遺産分割協議に臨む必要があります。

被相続人である父親が同じであれば相続権は平等と覚えておけばよいでしょう。

異母兄弟の相続割合の計算方法

異母兄弟の相続割合における計算方法を確認しておきましょう。

・親の遺産を相続するケース

被相続人である父親の配偶者(妻)が存命であれば遺産の1/2を相続します。

そして残りの1/2を子と異母兄弟で均等に分けることになります。

【計算例】
父親の遺産総額:5,000万円
相続人:配偶者、子1人、異母兄弟1人の場合

配偶者
5,000万円×1/2=2,500万円


5,000万円×1/4=1,250万円

異母兄弟
5,000万円×1/4=1,250万円

・兄弟姉妹の遺産を相続するケース

前妻との間に子Aが生まれ、現在の妻との間に子B子Cが生まれたとします。

その場合、子Cが亡くなったケースでは相続割合が少し複雑になるので注意が必要です。

子Cに配偶者や子、祖父母等がいない場合は、父母が同じである子Bと、異母兄弟で前妻の子Aが相続人になります。

このケースでは、子Aの相続分は子Bの半分になります。

ここでは父母が同じ子と異母兄弟の相続割合は均等ではなく差が生じます。

【計算例】
子Cの遺産総額3,000万円、相続人:子A、子Bの場合

前妻の子A
3,000万円×1/3=1,000万円

現在の妻との子B
3,000万円×2/3=2,000万円

異母兄弟の相続における法律的な注意点

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異母兄弟が相続人の中にいる場合、法律的に注意すべき点があります。

以下の4つの点は特に注意が必要です。

1.認知されていた子も相続人になる

同じ異母兄弟でも、隠し子が名乗り出た場合はどうなるのでしょうか。

隠し子にするということは、家族に知られたくない子ということになるので、現在の家族から見れば相続人として認めたくないと思ったとしても無理はありません。

隠し子の場合は、認知されていれば相続人になることができます。

被相続人である父親が自分の子として認めた子であれば、法律的に拒否することはできません。

一方、認知されていない場合は、「認知請求」の手続きが必要です。

2.遺留分に注意する

遺産相続では、法律で遺留分が保証されています。

遺留分とは、一定の範囲内の相続人に最低限保証されている遺産の取得割合のことです。

一定の範囲内に該当するのは、被相続人の配偶者、父母、子、孫までです。

被相続人の兄弟姉妹には遺留分はありません。

したがって、異母兄弟も子に該当するので、遺留分を主張する権利があります。

3.遺言書の有無と効力を確認する

遺言書があるからといって、すべてが有効なものとは限りません。

以下のような内容の遺言書は無効になる可能性が高いです。

1.民法上の方式と異なる方式で作成された遺言書
2.内容が不明確な遺言書
3.不貞相手などが入った公序良俗に反する遺言書
4.認知症など遺言能力のない人が作成した遺言書
5.錯誤・詐欺・脅迫によって作成された遺言書
6.偽造された遺言書

・1.民法上の方式と異なる方式で作成された遺言書

遺言書は全文自筆で作成し、日付と自署・押印が必要です。

したがって、日付の無い遺言書やパソコン、ワープロ、ビデオレターなど自筆によらない方法で作成した遺言書は無効です。

ただし、添付する目録はパソコン等で作成したものでも有効です。

その場合、ページごとに署名・押印する必要があります。

・2.内容が不明確な遺言書

遺言の内容を確定できない遺言書は無効です。

内容が確定できない遺言書とは、財産や相続人の特定が曖昧、相続割合や方法が不明確、遺言内容が矛盾しているなど、遺言者の意図が正確に読み取れない遺言書のことです。

このような遺言書は、相続トラブルの原因となり、無効となる可能性もあります。

内容を確定できないと、各相続人が自分に有利なように解釈して相続争いの原因になります。

ただし、内容が不明確でも本人の真意を解釈して可能な限り遺言書が有効になる努力はなされます。

・3.不貞相手などが入った公序良俗に反する遺言書

妻以外の女性と不貞をおこない、その相手に遺贈により財産の一部を渡す場合などは公序良俗に反するので、不貞相手が入った遺言書は無効です。

ただし、不貞相手がもっぱら被相続人に生計を頼っていたため、不貞相手の生活を保全する目的の遺贈なら認められる可能性もあります。

・4.認知症など遺言能力のない人が作成した遺言書

認知症などの理由で、被相続人が作成能力のない状態で作成した遺言書は無効です。

相続人の誰かが自分に有利な内容に誘導して書かせることが可能だからです。

ただし、認知症の程度は人によって異なるため、認知症=遺言能力なしと単純に判断できない難しさがあります。

・5.錯誤・詐欺・脅迫によって作成された遺言書

錯誤・詐欺・脅迫など特殊な状況によって作成された遺言書は無効です。

これらは本人の意思に反した遺言内容になる可能性が高いです。

しかし、すでに被相続人が亡くなっているので、詐欺や強迫されたことを立証するのが困難という事情があります。

立証できれば遺言の取り消しは可能です。

・6.偽造された遺言書

偽造された遺言書は当然無効です。

筆跡鑑定など専門的な鑑定方法で偽造を見抜くことは可能です。

偽造が明らかになった場合、偽造した人は相続することができません。

また、遺言書を偽造した場合、刑事上および民事上の責任を問われる可能性があります。

刑事上の責任としては、有印私文書偽造罪や有印偽造私文書行使罪に問われ、3ヵ月以上5年以下の懲役刑に科されます。

民事上の責任としては、民事上でも相続権を失うことになります。

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4.異母兄弟がいる場合の遺産分割協議は難しい

異母兄弟がいる場合の遺産分割協議は難航が予想されます。

前妻の子と現家族の子が円満に交流しているケースもありますが、交流がまったく無い場合はほとんど他人の感覚に近くなります。

遺言書がない場合、相続人同士の話し合いで財産の分割をおこなうことになるので、現家族は少しでも異母兄弟の取り分を少なくしようとする可能性があります。

異母兄弟が、普段交流がないからと遠慮して、少ない配分を受け入れれば良いのですが、遺産分割協議が決裂した場合は、後述する調停・審判・訴訟などの法的手段に進む可能性が高くなります。

そのためにも、あらかじめ遺産分割協議に詳しい弁護士に入ってもらったほうが無難でしょう。

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異母兄弟に財産を渡したくない場合の対応方法

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異母兄弟に財産を渡したくないというケースもあるでしょう。

異母兄弟への相続を阻止するには、以下の2つの方法が考えられます。

異母兄弟に財産を渡したくない場合の対応方法

1.遺言書を作成しておく

異母兄弟に財産を渡さないためにもっとも有効な方法は、遺言書を作成しておくことです。

たとえば、異母兄弟の遺留分を計算して、最低限の財産額を記載しておけば、大部分の財産は現家族のために遺すことができます。

ただし、現在の妻や子からすると異母兄弟に財産を渡したくなくても、被相続人の父親にとっては前妻の子も可愛い実子です。

したがって、差別的な遺言書を作成してくれるかどうかは未知数です。

2.相続放棄を要請する

異母兄弟に家庭裁判所で相続放棄の手続きを要請するのも1つの方法です。

相続放棄に応じた場合は相続人ではなくなるので、遺産分割協議に参加してもらう必要もなくなります。

ただし、強制はできないので、異母兄弟が拒否すればそれまでです。

異母兄弟に相続する場合の手続きの流れ

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異母兄弟の相続手続きの流れや必要書類などについて確認しておきましょう。

相続が発生して、異母兄弟への連絡から遺産分割協議の開催までは、以下のような流れで進みます。

1.異母兄弟の連絡先を入手する

はじめに異母兄弟の連絡先を調べる必要があります。

連絡先は親戚に聞くか、戸籍の附票を取得することで知ることができます。

戸籍の附表は本籍地の市区町村に保管されているので請求が必要です。

異母兄弟の本籍地は、被相続人の戸籍に記載されています。

被相続人の死亡までの戸籍をすべて集め、その中から探したい相手とその本籍地の記載を確認します。

探したい相手の本籍地がわかったら、その本籍地の市町村役場に戸籍の附表を請求します。

ここで問題になるのが、請求できるのは本人・配偶者・直系血族のみという点です。

それ以外の人は本来請求できませんが、「自分が遺産分割の共同相続人であり、遺産分割を進めるために相手方の戸籍の附表が必要である」という正当な理由があれば請求できます。

2.手紙を送付する

戸籍の附表から住所がわかったら、連絡を取ります。

この場合、一度も会ったことがない異母兄弟にいきなり電話連絡したら警戒されてしまうかもしれません。

そこで、手紙に必要な内容を書いて送る方法がおすすめです。

手紙に書く内容は、以下のとおりです。

・自分の氏名(亡くなった父の子であることを知らせる)
・父親が亡くなったこと(日付を記載する)
・遺産の内容(遺産の種類を記載。借金がある場合も記載する)
・住所を知った方法(戸籍謄本や戸籍の附票を取得して調べたことを伝える)
・手紙を出し理由(相続手続きへの協力をお願いする)
・連絡先と期日(こちらの連絡先といつまでに連絡してほしいという期日を指定する)

3.遺産分割協議する

異母兄弟と連絡が取れたら遺産分割協議を開催し、遺産の分割方法について相続人全員で話し合いをおこないます。

分割する内容が合意に至った場合は、「遺産分割協議書」に記載して、書面として残します。

異母兄弟とどうしても会いたくない場合は、遺産分割案を手紙に記載して送付し、内容に納得したら

署名・押印してもらい手続きを進める方法もあります。

万が一異論があったり、連絡がない場合は、弁護士に相談する必要が生じます。

必要書類とその取得方法

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異母兄弟を探すための必要書類と取得方法は以下のとおりです。

亡くなった人の戸籍

窓口で申請する場合 戸籍交付申請書(窓口で交付)
申請する人の戸籍謄本
印鑑
本人確認書類
委任状(申請する人が亡くなった人の配偶者・直系血族以外の場合)
郵送で申請する場合 戸籍交付申請書(役場の公式サイトからダウンロード)
定額小為替(手数料分を郵便局で購入)
申請する人の戸籍謄本のコピー
本人確認書類のコピー
委任状(申請する人が亡くなった人の配偶者・直系血族以外の場合)
返信用封筒(切手貼付)

探したい相手の戸籍の附票

窓口で申請する場合 戸籍の附票交付申請書(窓口で交付)
申請する人の戸籍謄本
印鑑
本人確認書類。
郵送で申請する場合 戸籍の附票交付申請書(役場の公式サイトからダウンロード)
定額小為替(手数料分を郵便局で購入)
申請する人の戸籍謄本のコピー
本人確認書類のコピー
返信用封筒(切手貼付)

調停・審判・訴訟など法的手段の可能性も

異母兄弟との遺産分割協議が不調に終わった場合、調停・審判・訴訟などの法的手段で解決しなければならなくなる可能性もあります。

3つの法的手段の内容について確認しておきます。

調停

調停は裁判所でおこなう手続きの1つで、当事者同士で話し合って解決することを目指す目的でおこなわれます。

この方法では、裁判所の調停委員という職員が話し合いの間に入ってくれます。

調停の話し合いによって決まったことは裁判所が書面に残すので、きちんと守ることが義務づけられます。

審判

審判はある出来事を審理して、判断や判決を下すことです。

訴訟よりも解決までの期間が短いのがメリットで、期日は3回までと決まっています。

弁護士を付けることも可能なため、自分に有利な判決に近づけることも可能です。

訴訟

訴訟は争いや対立を解決するために、公平な第三者である裁判官に関与してもらい、解決のための意見を得ることで、問題の解決を図る手続きをいいます。

法廷でお互いの主張を述べ、言い分を裏付ける証拠を出し合って、最終的に判決を下してもらいます。

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異母兄弟との遺産分割の方法

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異母兄弟とどのように遺産を分けるかは大きな課題です。

異母兄弟への遺産分割には以下のような方法があります。

異母兄弟との遺産分割の方法

1.現物分割

現物分割は、遺産を相続分に応じて物理的に分ける分割方法です。

財産は形を変えずそのまま分けます。

たとえば、相続人Aは預貯金、相続人Bは株式、相続人Cは不動産という具合です。

はっきり分けることができる半面、ぴたり1/2や1/4にはならないので、不公平が生じるおそれがあります。

2.代償分割

代償分割は、1人の相続人が財産を相続し、ほかの相続人に代償金を支払う分割方法です。

たとえば、相続人Aが3,000万円の不動産を取得し、相続人Bに相続割合に応じて1,500万円を現金で支払うケースが該当します。

この方法を実施するには、相続人Aに現金を支払うだけの能力があることが条件になります。

遺産分割の調停・審判になった場合は、預貯金の残高証明や預金通帳の写しなどの提出を求められます。

3.換価分割

換価分割は、相続財産を売却して、売却代金を相続分に応じて分ける分割方法です。

株式も不動産も売却して現金化するので、ほぼ平等に分けられるのがメリットです。

実施が可能なら最も争いを避けられる方法といえます。

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異母兄弟の相続をスムーズに進めるための対策

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異母兄弟の相続をスムーズに進めるために、以下のような対策をおこなうことが必要です。

異母兄弟の相続をスムーズに進めるための対策

1.遺言書を作成しておく

相続においては「遺言書」の内容が最優先されます。

異母兄弟がいる場合は、トラブルにならないように財産の分け方をきちんと遺言書に記載しておくことが望ましいです。

再婚で、前妻との間に子(異母兄弟)がいるとわかっている場合は、あらかじめ家族の了承を得たうえで遺言書を作成したほうが、相続が発生した際にスムーズに遺産分割することができます。

2.遺言執行者を指定する

遺言書の内容に沿って、遺産分割を取り仕切る「遺言執行者」を指定しておくことも、相続をスムーズにおこなうために大事な方法です。

遺言執行者は弁護士などの専門家に依頼するのが一般的です。

遺言執行者は遺言内容を実現するために活動し、手続きも進めてくれるので現家族が直接異母兄弟と話し合う必要がないというメリットがあります。

3.連絡は手紙でおこなう

異母兄弟への連絡は必ず手紙でおこなうことが大事です。

相続という作業は人生の中でも重要なことの1つであり、メールや電話番号がわかっている場合でも、手紙で状況を丁寧に書いて知らせることで誠実に対応してくれたと好感を持たれるでしょう。

相続に関して異母兄弟に連絡しなかった場合

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遺産相続において、異母兄弟を相続人であるにもかかわらず 意図的に連絡しなかった場合、法律上の責任が生じる可能性があります。

主に以下の点が問題となるでしょう。

1.遺産分割協議の無効

相続人全員が参加していない遺産分割協議は無効となります。

異母兄弟が相続人である場合、その存在を無視して遺産を分けることは認められません。

後になって異母兄弟が権利を主張すれば、分割協議をやり直さなければなりません。

2.民法上の不当利得・損害賠償請求

異母兄弟の相続分を知りながら故意に連絡を取らなかった場合、相続権を侵害したとして、不当利得の返還請求や損害賠償請求をされる可能性があります。

3.刑事責任(相続財産の横領)

相続財産を故意に隠し、異母兄弟に知らせずに独占した場合、「遺産の使い込み」として 刑法の横領罪に該当する可能性があります。

特に、遺産分割前に相続財産を勝手に処分した場合、「相続財産管理人による横領」として 業務上横領罪が適用されることもあります。

4.遺留分侵害請求の可能性

異母兄弟が「子」である場合は遺留分が認められているため、遺留分を侵害するような遺産分割がおこなわれた場合、異母兄弟は「遺留分侵害額請求」をすることができます。

異母兄弟が相続人である場合、連絡せずに相続を進めると、法的なトラブルに発展する可能性が高いです。

最悪の場合、 横領罪に問われるリスク もあるため、正当な手続きを踏んで相続手続きを進めることが重要です。

まとめ|異母兄弟との相続トラブルを避けスムーズな相続を目指そう

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異母兄弟との遺産分割は、普通の兄弟との場合より難しいのは事実です。

前妻が子を引き取り、現在の家族とまったく交流がない場合、相続になっていきなり異母兄弟が現れる形になります。

父親と毎日生活を共にしていた子と、まったく離れて暮らしていた子が同じように財産を受け継ぐことを不公平と感じるのも無理はないでしょう。

しかし、自分が遺した財産を巡って骨肉の争いになるのは、亡くなった被相続人の本意に反するので避けなければなりません。

本記事で紹介した各種対策を参考にして、少しでも争いを避けるよう配慮することが望ましいです。

相続も人間関係が大事なので、異母兄弟とは誠実に対応し、スムーズな相続を目指しましょう。

そして、少しでも不安がある場合には、遺産相続に強い弁護士に相談するようにしましょう。

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丸山優太郎
丸山優太郎(著者)
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。企業系サイトを中心に執筆し、得意執筆領域は金融・経済・不動産。市場分析や経済情勢に合わせたトレンド記事を、毎年約200本執筆している。主な掲載媒体は「YANUSY」「THE Roots」「Dear Reicious Online」「auじぶん銀行お金のコラム集」「ZUUonline」など。

(提供:ACNコラム