トランプ米政権の関税措置に世界経済が揺さぶられた4月。上旬には日経平均株価が急落し、過去3番目の下げ幅を記録した。中旬以降は関税措置の軌道修正を受け、持ち直し基調となったが、「トランプ関税」への警戒感は高まったままだ。振幅の大きい相場展開の中、アクティビスト(物言う株主)の動向は?
フジ・メディアHDの筆頭株主に
4月を振り返ると、アクティビストによる5%超の新規取得が相次いだ。少なくとも10件を数え、うち4件は旧村上ファンド系の投資会社によるものだった。フジ・メディア・ホールディングス(HD)、三井住建道路、月島ホールディングス、日本特殊塗料がその銘柄だ。
なかでも注目銘柄は元タレントの性暴力問題に揺れるフジテレビを傘下に持つフジ・メディアHD。旧村上系の複数ある投資会社の一つ、レノ(東京都渋谷区)は4月3日、フジ・メディアHDの株式5.19%を取得したとする大量保有報告書を関東財務局に提出した。保有目的は「投資及び状況に応じて経営陣への助言、重要提案行為等を行うこと」としている。
レノは買い増しを進め、4月10日までに変更報告書を5度提出し、保有割合を11.81%に高めた。このうちの8.96%は旧村上ファンドを率いていた村上世彰氏の長女・野村絢氏が個人として共同保有しており、事実上、綾氏がフジ・メディアHDの筆頭株主に躍り出た。
旧村上系は投資先企業に株主還元策を強硬に求めることで知られ、フジ・メディアHDへの出方が注目される。
フジ・メディアHDに対しては7%超の株式(共同保有を含む)を保有する大株主の米投資ファンド、ダルトン・インベストメンツが企業統治の不備や不動産事業に傾斜した経営のあり方などを強く批判。今年6月の定時株主総会では12人の社外取締役の選任を求める株主提案を予定している。
三井住友建設傘下の道路会社も新規取得
三井住建道路、月島HD、日本特殊塗料の3銘柄については旧村上系の別の投資会社であるシティインデックスイレブンス(東京都渋谷区)が各5%超を新規取得した。
このうち、中堅道路会社の三井住建道路は同じく旧村上系の南青山不動産(同)が約28%を保有し筆頭株主となっている三井住友建設の子会社で、旧村上系がグループで親子企業の株式を買い占めた形だ。
ありあけキャピタル、滋賀銀株を大量保有
滋賀銀行の株式を5.31%の新規取得したのは、ありあけキャピタル(東京都中央区)。同社は地銀など金融セクターに特化したファンドで、昨年5月にはスルガ銀行の株式を大量保有(5.54%)したことが分かっている。
ありあけキャピタルは今年3月、約20%を保有し筆頭株主となっていた千葉興業銀行の株式の大部分を千葉銀行に売却。これを契機に経営統合の協議がスタートし、地銀再編を仕掛ける格好となった。
