「上場基準」未達企業でTOB増加傾向

ここへきて顕在化しているのが「上場基準」未達による上場廃止を避ける動き。今年の51件のうち、上場廃止のおそれをTOB受け入れの理由にあげたケースは少なくとも6件あり、全体の1割以上にあたる。

東証の市場区分見直しから3年となる2025年3月以降、上場維持基準を満たしていなくとも上場が認められる経過措置が順次終了しているためだ。改善期間(通常1年)内に基準に適合しない場合、監理・整理銘柄(原則6カ月)に指定後、上場廃止となる。

スタンダード上場でガソリンスタンド経営などのサンオータスは今年、MBOで株式を非公開化した。その理由の一つは流通株式時価総額(10億円以上)を満たしていないことだった。

また、ITコンサルティング・システム開発のテクノスジャパンは国内投資ファンドのアント・キャピタル・パートナーズ(東京都千代田区)のTOBを受け入れた。テクノスジャパンは元々、プライム上場だったが、流通株式時価総額が95億円(2023年3月末)で、基準である100億円以上を下回っていた。

そこで2023年10月にスタンダードに移り、上場維持基準未達のリスクを回避した。しかし、中長期的に企業価値を向上させるには非公開化して経営体制を再構築する必要があると判断した。

◎東証:上場維持基準(カッコ内は市場別の上場数、5月12日時点)

市場区分プライムスタンダードグロース
(1631社)(1575社)(617社)
株主数
800人以上
400人以上
150人以上
流通株式数
2万単位以上
2000単位以上
1000単位以上
流通株式時価総額
100億円以上
10億円以上
5億円以上
流通株式比率
35%以上
25%以上
25%以上

2020年を境に復調、ついに100件の大台

TOB件数はリーマンショック前年の2007年に過去最多の104件を記録し、08年78件、09年79件と高水準が続いたが、2010年代は概ね40~50件で推移。復調したのはコロナ禍初年の2020年で、60件を数えた。21年70件、22年54件、23年74件、そして24年は一気に100件ちょうどと17年ぶりに100件の大台に乗せた。

文:M&A Online