TOB(株式公開買い付け)が最速で増加中だ。2025年は4カ月あまりで50件(届け出ベース)に到達し、前年よりも3カ月ペースが速い。前年の年間件数は100件ちょうどで、過去最多の2007年(104件)以来17年ぶりに100件の大台に乗せた。今年はさらに勢いを増しており、最多更新が有力視される。

NTTデータTOB、歴代2位のスケール

今年のTOBが50件に達したのは5月9日(TOB一覧)。この日、芝浦電子、NTTデータグループ、三菱食品に対する3件のTOB開始についての届出書が関東財務局に提出された。週明け12日には51件目としてIMAGICA GROUPの非公開化に向けたMBO(経営陣による買収)関連のTOBがスタートした。

センサーメーカーの芝浦電子にTOBを始めたのは台湾電子部品大手のヤゲオで、同意なき買収に乗り出した。芝浦電子をめぐっては精密部品メーカーのミネベアミツミによるTOBが5月2日から始まっており、争奪戦の様相を呈する。

NTTはNTTデータグループ、三菱商事は三菱食品をTOBで完全子会社化し、親子上場を解消する。意思決定の迅速化や資本効率の改善などが狙い。

NTTは2兆3700億円を投じる予定で、国内TOB案件として歴代2位の規模となる。歴代トップもNTTで、2020年、NTTドコモを総額約4兆2500億円で完全子会社化した。

M&A Online
(画像=※2025年は5月12日時点、M&A Online作成、「M&A Online」より引用)

51件中、22社がスタンダード上場

ここまで51件(芝浦電子は2件とカウント)の対象会社を市場区分別にみると、東証スタンダードが22社と最も多く、東証プライム17社、東証グロース7社、名証3社、上場リート(不動産投資信託)2社で続く。前年も年間100件のTOB中、スタンダードが47社と半数近くを占めた。目的別では親子上場解消が7件、MBOが8件。

同意なき買収案件では工作機械大手の牧野フライス製作所を標的としたモーター大手のニデックによる2500億円規模のTOBが注目された。買収防衛策で応戦の構えを見せた牧野フライスとの攻防が続いたが、ニデックが実施中だったTOBを突如撤回し、ひとまず幕引きとなった。

東証の上場会社数はプライム1631社、スタンダード1575社、グロース617社(5月12日時点)。プライム、スタンダードの上場数はさほどの開きはないが、スタンダードの場合、中堅クラスの企業が主体で、上場基準への適合や上場維持のためのコストなど業務負担が相対的に大きいとされる。このため、同業大手の傘下に入ったり、MBOで非公開化したりするケースが目立つ。