本記事は、小川 仁志氏の著書『悩まず、いい選択ができる人の頭の使い方』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。

悩まず、いい選択ができる人の頭の使い方
(画像=Maishaangona/stock.adobe.com)

悩むのではなく考える

「悩む」と「考える」の本質的な違い

みなさんは、「悩む」と「考える」の違いは何だと思いますか?

「悩む」とは、何か問題に直面したとき、「ああでもないこうでもない」と同じ思考をぐるぐる循環させながらも答えが出ない状態、堂々巡りに陥っている状態です。
「考える」とは、「答えが出る」という前提に立ち、前向きな気持ち「悩む」状態から抜け出そうとする行為です。

たとえば、あなたが上司との関係がうまくいかず、転職したいと思っているとします。
しかし、ネックになっているのは上司だけであり、給与面や仕事の内容に対しては、特に不満がありません。
そのため、「あんな上司の顔は見たくない」「でも、上司以外の面では、この会社に満足している」「ここよりもっといい職場が見つかるだろうか」「転職先にも嫌な上司がいたらどうしよう」と、延々と自問自答を繰り返しています。

この状態を、「考える」ととらえる人は少なくありません。
でもこれは、ただ悩んでいるだけ、出口のない迷路の中をさまよい続けているだけです。
時間も頭も体も使っている割に、問題は何一つ解決しません。

私たちは、「悩む」と「考える」を混同しがちですが、一見同じように見えるこの二つの行為は、根本的に異なります。

よく「考えても答えが出ない」「考えるのが苦手」という言葉を見聞きしますが、それは考えているのではなく、ただ悩んでいるだけなのです。

「先延ばし」「時間のムダ」から卒業しよう

一方、「考える」というのは、問題の本質に迫り、新たな視点や解決の糸口を見出し、堂々巡りの悩みから抜け出そうとする、生産的で前向きな行為です。
そして、これからご紹介する「哲学を使った選択思考」は、まさに「考える」というプロセスを具体化したものなのです。

哲学思考を活用すれば、

・重要な選択を前に頭の中がモヤモヤして、何日も決められない
・いくつかの選択肢を前に「どれが正解か」と悩み続ける
・決断した後も「あの選択は間違っていたのでは」と後悔する
・周りの人の決断の速さを見て「なぜ自分はこんなに迷うのだろう」と自信を失う
・決断を先延ばしにして、結局チャンスを逃してしまう

といったことがなくなります。
さらに、「苦手な上司とどう付き合っていけばいいか」「転職するべきかどうか」「結婚するべきかどうか」など、仕事や人間関係、家族や育児に関することまで、悩んでも答えが出なかった問題がスッキリ解決できるようになります。

最後は自分で決める

他人の意見を根拠にしない

以前、私の知人のある男性は、長年勤めた会社での昇進の話と、同業他社からのヘッドハンティングという二つの選択肢の間で揺れていました。

昇進すれば安定した将来が約束されますが、ある程度先は見えています。
逆に転職すれば、新たな挑戦ができる可能性がありますが、今とは違う環境に飛び込むことへの不安が伴います。

判断に迷った彼は、元上司や大学時代の友人、年老いた両親に相談し、さらにはSNSの転職コミュニティに匿名で質問を投稿したりもしました。
ところが、元上司や友人は「転職したほうがいい」と言い、両親は「今の会社に残ったほうがいい」と言い、転職コミュニティでの回答も、人によってまったく内容が異なる……といった具合で、意見を集めれば集めるほど、混乱していきました。

重要な選択を前にすると、私たちは他者の意見を求めたくなります。
友人に相談したり、専門家の助言を仰いだり、ときにはSNSでアンケートを取ったりすることもあるでしょう。
こうした行動の背後には、「誰かほかの人に決めてもらいたい」という無意識の願望が隠れています。

そこで大事なのが、「最後は自分で決める」という原則です。

人生やビジネスの問題に正解はなく、人の数だけ答えがあります。
もしこの原則を自分の中に持っていなかったら、他者から何かを言われるたびに心が揺らいでしまうでしょう。

「最後は自分で決める」という原則に立ったとき、他者の意見は「選択のきっかけ」や「判断材料」にはなっても、「選択の代行者」ではないことがはっきりします。
他者の意見は、あくまでも参考意見として聞き、最終的には自分自身の価値観に基づいて選択することができるようになるはずです。

悩まず、いい選択ができる人の頭の使い方
小川 仁志
哲学者・山口大学国際総合科学部教授。
1970年、京都府生まれ。京都大学法学部卒、名古屋市立大学大学院博士後期課程修了。博士(人間文化)。商社マン(伊藤忠商事)、フリーター、公務員(名古屋市役所)を経た異色の経歴。徳山工業高等専門学校准教授、米プリンストン大学客員研究員等を経て現職。大学で課題解決のための新しい教育に取り組む傍ら、全国各地で「哲学カフェ」を開催するなど、市民のための哲学を実践している。NHK・Eテレ「世界の哲学者に人生相談」「ロッチと子羊」では指南役を務めた。
近年は、中小企業から大企業まで業種を問わず「ビジネス哲学研修」を多数実施。哲学思考を活用し、企業のコアメッセージ再定義から新規事業開発、働き方改革、部署間コミュニケーション改善まで、多様なビジネス課題をサポート。深い問いかけと対話を通じて、組織と個人の本質的な成長を支援している。
専門は公共哲学、哲学プラクティス。著書も多く、ベストセラーとなった『7日間で突然頭がよくなる本』をはじめ、これまでに百数十冊を出版。YouTube「小川仁志の哲学チャンネル」でも発信中。
悩まず、いい選択ができる人の頭の使い方
  1. なぜ、いま「選択」が大事なのか?
  2. 「いい選択」ができる人が、大事にしていること
  3. 「哲学を使った選択思考」のやり方
  4. お金は「おっかねー」の思考定義
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