本記事は、小川 仁志氏の著書『悩まず、いい選択ができる人の頭の使い方』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。

悩まず、いい選択ができる人の頭の使い方
(画像=Andrew5055/stock.adobe.com)

選択思考の具体的な進め方

「哲学を使った選択思考」は、「核となるワードを一つ選ぶ」で始まり「選択する」で完結する、7つのステップで構成されています。
各ステップには目的があります。また、この順序で進めることによって思考が深まり、今のあなたにとって最適な選択基準が生まれます。そうて、最終的に納得のいく選択をすることができるようになります。
なお、普段、私は哲学を使った思考プロセスを、ケースに応じて少しずつカスタマイズして使っています。
ですから、私のほかの本では別の表現をしていたり、ステップの数が違ったりしていることもありますが、基本的な部分は変わりません。

「哲学思考を使って、いい選択をする」方法をお伝えするため、それに合わせた表現およびステップ数にしています。

ステップ① 核となるワードを一つ選ぶ
まず問題の本質を表す一語を選びます。仕事と家庭の両立に悩むなら「仕事」や「時間」、人間関係に悩むなら「人間関係」といった具合に、核となる言葉を特定します。複雑な問題も、本質をシンプルな一語に集約することがポイントです。

ステップ② 定義する
選んだワードを自分なりに定義します。たとえば「人間関係とは、苦手な他者との付き合い方」といったように、現在の自分のとらえ方を素直に表現してください。辞書的な定義ではなく、あなた自身が感じていることを言葉にすることが大切です。

ステップ③ 疑う
自分の定義に疑問を投げかけます。「人間だけが関係を持つのか?」「家族関係も人間関係なのか?」など、あらゆる角度から自分の定義を疑ってみましょう。当たり前と思っていた前提を崩すことで、頭の中の棚卸し、思考の大掃除をしていきます。

ステップ④ 視点を変える
人間以外の視点から物事を見直します。たとえば植物や動物、消しゴム、お茶、ハサミ、壁、空気、空、宇宙人などでもなんでもかまいません。人間以外の何かになりきって考えてみるのです。想像もしていなかった視点から物事をとらえ直すことで、これまで見えていなかった考えや気づきを得られます。

ステップ⑤ 再構成・再定義する
ここが、選択思考における重要な転換点です。ステップ②〜④で生まれた新しい言葉、気づき、考え方を一度すべて並べてみましょう。それらを素材として再構成していきます。

たとえば、「人間関係」について考えた場合

・最初の定義(ステップ②):「苦手な他者との付き合い方」
・「疑う」で出た言葉(ステップ③):「動物との関係も関係では?」など
・視点を変えて出た言葉(ステップ④):「自己中になれ、黙ってればいいのに、もっとよく噛んで、円滑になる、理性が必要」

この中から、あなたが「好き」「しっくりくる」と感じる要素だけを選び取ります。
そして、これらの要素からまったく新しい定義を作ります。

ちなみに、私は人間関係を再定義したとき、「人間関係とは、よく噛んでモノにすること」という新しい定義を生みだしました。これはもはや最初の「苦手な他者との付き合い方」とはまったく異なる独自の定義です。

ステップ⑥ コンセプト化する
新しい定義に新しい名前をつけます。
たとえば「人間関係」を「人間噛んで」と名付けるなど、自分だけの概念・コンセプトを作り出すことで、再定義した内容をより鮮明にとらえられるようになります。
20世紀フランスの著名な哲学者ジル・ドゥルーズ(1925–1995)が言うように「哲学とは概念の創造」なのです。

ステップ⑦ 選択する
最後に、新しいコンセプトや視点を実際の問題に応用して選択を行います。
たとえば、人間関係の定義が「苦手な人との付き合い」から「よく噛んでモノにすること」と変わったなら、苦手な上司との関係も「異なる世界観を持つ人との交流をよく噛んで味わう機会」として、前向きにとらえ直せるかもしれません。

選択思考を使うと、どんな問題でも、おおむね10分〜15分で新しい考え方やもののとらえ方、選択基準が手に入ります。

信じられないかもしれませんが、この7ステップで考えると、世界の見え方が違ってくるのです。

それまで自分が、いかに世の中の常識や思い込み、他人の価値観などにがんじがらめになっていたか、限られた選択肢の中だけで右往左往していたかがわかるでしょう。

「自分が本当は何を望んでいるのか」「自分が本当はどう生きたいのか」がはっきりし、自由にものを考え、選択できるようになるのです。

これは実際にやってみた人だけがわかることです。

悩まず、いい選択ができる人の頭の使い方
小川 仁志
哲学者・山口大学国際総合科学部教授。
1970年、京都府生まれ。京都大学法学部卒、名古屋市立大学大学院博士後期課程修了。博士(人間文化)。商社マン(伊藤忠商事)、フリーター、公務員(名古屋市役所)を経た異色の経歴。徳山工業高等専門学校准教授、米プリンストン大学客員研究員等を経て現職。大学で課題解決のための新しい教育に取り組む傍ら、全国各地で「哲学カフェ」を開催するなど、市民のための哲学を実践している。NHK・Eテレ「世界の哲学者に人生相談」「ロッチと子羊」では指南役を務めた。
近年は、中小企業から大企業まで業種を問わず「ビジネス哲学研修」を多数実施。哲学思考を活用し、企業のコアメッセージ再定義から新規事業開発、働き方改革、部署間コミュニケーション改善まで、多様なビジネス課題をサポート。深い問いかけと対話を通じて、組織と個人の本質的な成長を支援している。
専門は公共哲学、哲学プラクティス。著書も多く、ベストセラーとなった『7日間で突然頭がよくなる本』をはじめ、これまでに百数十冊を出版。YouTube「小川仁志の哲学チャンネル」でも発信中。
悩まず、いい選択ができる人の頭の使い方
  1. なぜ、いま「選択」が大事なのか?
  2. 「いい選択」ができる人が、大事にしていること
  3. 「哲学を使った選択思考」のやり方
  4. お金は「おっかねー」の思考定義
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