
2002年、株式会社ビースタイル(現・株式会社ビースタイルホールディングス)を創業し、代表取締役社長に就任。2024年12月、東証グロース市場に新規上場。
創業時からの事業変遷
—— では、まずは創業時から現在に至るまでの事業の変遷についてお聞かせください。
株式会社ビースタイルホールディングス 代表取締役社長・三原 邦彦氏(以下、社名・氏名略) 当社は2002年の設立当初から女性のキャリア支援をしている会社です。元々私は大手の人材会社にいたのですが、当時は女性の結婚・出産後のキャリア形成が難しい時代でした。そこで、女性の結婚後のキャリアを支援するために会社を設立しました。
弊社ではあえて「主婦」という言葉にとらわれず、ライフスタイルを重視しながら働きたい方々を、未既婚や性別を問わず、シングルマザーや家事・育児を担う男性も含めて「しゅふ」と表し、支援しています。
事業としては、人材派遣/人材紹介事業と、求人媒体を運営するメディア事業、そして約80名ほどのエンジニアを抱えたDX事業を展開しています。

—— なるほど、では事業の成長についてもお聞かせください。
三原 創業期からリーマンショックまでは派遣事業が中心でした。その後、2011年頃からはリーマンショック後の回復期に入り、メディア事業を開始するなど、徐々に多角化を進めてきました。2016年頃からは派遣事業とメディア事業が右肩上がりで成長し、2024年度は売上108億円に達しました。
しかし、コロナの影響でメディア事業が半減し、派遣事業も三分の一程度に縮小しました。一部事業を売却し、残りの事業に投資を集中させることで、成長を維持し、2024年には株式上場承認を受けることができました。
現状でいうと、しゅふJOBという事業が昨年対比140%〜150%の成長を遂げており、マーケットからも高く評価されています。今後は新しい事業と既存事業の両方を成長させ、全ての事業を右肩上がりで発展させていきたいと考えています。
—— もともと創業の時からその層にサービスを展開するという思いで始められたと。
三原 そうです。マクロ的に見れば、一番想像できるのは人口動態です。若年労働人口が減少していく中で、将来的に働き手として考えられるのは女性、シニア、外国人かロボットしかいないと思いました。
当時は、労働力が足りなくなるという予測はありましたが、実際には、家庭と仕事の両立に対応したワークスタイルを企業側が持っていなかったのが事実です。特にホワイトカラーの仕事ではそうでした。結婚・出産後もホワイトカラーの仕事で働きたいという女性を集めること自体は難しくなかったのですが、企業側がリモートや時短、短時間で働くということを受け入れるのは大変でした。そこからスタートしたわけです。
—— 今では短時間で働くスタイルが一般的になっていますが、創業当時はそういった感性が全くなかった時代ですよね。前職の大手人材会社での経験から、すでにそうした着想を持っていたということですか?
三原 そうです。社会課題の解決と売上利益の最大化を同時に実現できる会社を作ろうと思い、その時代に合わせて価値を作り続けることが重要だと考えました。ビースタイル(b-style)の社名の由来は「best basic style」であり、その時代に合わせたbestを追求し、それを世の中に広めてbasic化し、一つのスタイルにしようという考えです。売上だけでなく、社会課題も同時に解決できるような会社を志してスタートしました。
—— 2016年以降の伸びが加速しているように見えますが何が影響されているとお考えですか。
三原 二つあると思います。ブランド認知が上がってきたことと、女性活躍の推進が追い風になったことです。2016年の女性活躍推進法の施行という形で社会の空気感が変わったことは大きかったですね。 加えて、当社での経営スタイル自体も少し高度化したのが大きいかもしれませんね。それが全て合わさって、結果が出るようになったのかなと思います。
運動会の大玉送りを見たことがありますか?あれは、みんなが同じ方向に手を動かさないと早く進まないんですよ。子どもたちは喜んで手を上げていますが、目指す方向が同じでなければ、バウンドしてしまったりするんです。
仕事も同じで、各セクションや各人が同じ方向に向かって進むことが大切です。当時は予算や計画の立て方が部署主導で、部長が上げてくる形で合わせていました。しかし、一つの目的を達成するために、一貫した行動を下まで作り上げるような形で計画を立て始め、マネジメント体系を変えたのも大きかったですね。
—— ちなみに、当時の会社規模や従業員数はどのくらいだったのですか?
三原 その頃は100名ぐらいで、そこから400〜500名まで急速に増えました。
上場を目指された背景や思い
—— 上場はいつから視野に入れていたのですか?創業時から目指されていたのでしょうか。
三原 2016年には上場を視野に入れていました。リーマンショックの影響で一旦オーナー企業を目指そうかと思った時期もありました。しかし、業績が右肩上がりになり、2016年から2017年にかけて上場を目指して準備を始めました。2020年を上場の申請期としていましたが、コロナの影響で、業績が大きく落ち込んでしまいました。結果、足踏みすることになりましたね。
—— なるほど。上場しようとお考えになった理由はどのようなところにありましたか。
三原 上場の目的の一つとして、資金調達の手段を増やしたいというのは大きいですね。M&Aや銀行からの借り入れがしやすくなりますし、時価総額が上がれば調達のバリアも低くなります。一方でレギュレーションの厳しさもありますが、それを乗り越え、攻めの経営をする覚悟があります。今回の上場で、より攻める経営をしていくつもりです。
—— 上場された今のお気持ちはいかがですか?
三原 上場によって社会的責任が増したと感じています。コロナの影響で受けたダメージが大きい会社でもありますから、成長している事業もあれば、まだ厳しい状況の事業もあります。そこをテコ入れしながら、上昇ムードに向かっていかなければならないという危機感と責任感を感じています。
—— 未上場企業の社長と上場企業の社長では、周りの見方も変わってきますよね。社内の雰囲気は上場前後で変わりましたか?
三原 上場によって社内の雰囲気は非常に明るくなったと思います。特に、長くビースタイルにかけてくれた社員にストックオプションや株式を提供できたことは良かったです。社員とともに良い会社を作り、お客様や転職者の方々に満足いただけるサービスを提供していきたいと思っています。
今後の事業戦略や展望
—— 今後の事業戦略や展望についてお聞かせいただけますか?
三原 現在は「しゅふJOB」という求人媒体が非常に好調です。テレビCMの効果もあり、求職者の約半数がこの媒体を認知し、求人サービス認知度ランキングでは6位になりました。また、自社調査機関の「しゅふJOB総研」を通じて、主婦や働く女性に関するデータをPRしているのも効果があると感じています。
—— しゅふJOBさんの認知度の高さには驚かされます。CMで15秒間に5回「しゅふJOB」とコールするというのは、社内のマーケティングチームのアイデアですか?
三原 そうですね。CMの作り方には非常にこだわりを持っています。CMでの効果を考えたとき、ブランド名である「しゅふJOB」をしっかり覚えてもらうことが重要だと考えました。より印象に残るよう、「ブーコ部長」というブタのキャラクターを登場させたのもこだわりです。
そして、こうした背景を基に、今後の成長戦略として、しゅふの活躍支援をさらに強化したいと考えています。しゅふJOBでは、自宅近くで働けるようにローカルエリアでの求人づくりにも力を入れ、しゅふJOBとしてのメディア自体を強化しながら、派遣/紹介事業も強化していく方針です。これまではホワイトカラーを中心に強化してきましたが、女性の約四人に一人が医療・福祉系の仕事に就いているため、これらの分野にも注力したいと思います。
また、新たな代替労働力の提供として、副業や外国人労働者、生成AIなどを活用した新規事業も展開していきます。DX推進も重要なテーマで、特に自動化や生成AIの領域でソリューションを拡大していく予定です。
私たちの方針としては、人が必要な部分には人を提供し、人ではなくても良い部分にはテクノロジーを活用します。企業の労働効率性を高めることを目指しています。これらが私たちの成長戦略です。
—— やはりそれができるのは、プロパーエンジニアの方々が80名いらっしゃるからこそですね。
三原 そうですね。DX推進の実績は累計2000件を超えていますので、自動化には非常に自信があります。人が関与しなくてもいい部分は徹底的に自動化を進めていきたいと考えています。
—— 各事業の売上が総計で108億円に達しているとのことですが、特にメディア事業の利益率が非常に高いようですね。この背景にはどのような秘訣があるのでしょうか。
三原 メディア事業はテクノロジーを駆使したもので、売上がそのままほとんど利益になる構造なんですよ。システムを基盤にしているので、顧客数が増えるほど効率が上がります。なので、規模の拡大が重要ですね。
—— なるほど、規模の拡大がそのままメリットに繋がるということですね。労働集約的なビジネスモデルではない点も強みですね。
三原 そうですね。営業がいる部分もありますが、営業効率はCMやブランド力の向上で大きく変わります。商品力が上がると営業効率も良くなります。この成長が継続できるかが鍵ですね。
—— 現在、成長のスパイラルに入っている最中ということでしょうか。
三原 はい、成長をどれだけ持続できるかがポイントです。これまでの事業をより高い成長軌道に乗せることが重要です。
—— なるほど、ユーザーやクライアントの地域展開についてもお伺いしたいです。やはり関東が中心なのでしょうか。それとも地方にも展開されているのでしょうか。
三原 しゅふJOBは全国展開していますが、CMを放映していた首都圏と関西圏での認知度が特に高いです。これからは政令指定都市にも放映エリアを拡大し、最終的には全国での放映を目指しています。
メディアユーザーへ一言
—— 最後に、メディアユーザーに一言いただけますか?
三原 まだまだ労働参加余力というのは、しゅふ層の活用で上がると考えています。しゅふ層の働き方はこれまでアルバイトやパートといった非正規での働き方のイメージがあるかもしれませんが、昨年はパートタイマーの増加が2万人ほどだったのに対し、正社員は39万人も増えています。これからは正社員で柔軟な働き方ができるように移行する必要があると思います。
そのうえで、「時短正社員」での採用をすることがこれからのトレンドになりつつあると思います。しゅふJOBでも、時短正社員の求人はまだまだ少ないのですが、逆にしゅふ人気は非常に高いので応募が殺到します。企業は正社員はフルタイムで働くことを前提にしていることが多いですが、やはり短時間勤務の必要性は非常に高いことがわかります。目的は優秀な人材を適正な価格で採用することですから、過去の常識にとらわれず、新しい採用のあり方にチャレンジしていただきたいですね。時短の働き方に関しては、ぜひ私たちにご相談ください。
—— 経営者側が過去からの固定観念を変えることも大切ですね。
三原 そうですね。労働生産性のあり方を変える必要があります。一部の業界では、優秀な人材は普通の人の5倍のアウトプットを出すこともあるとも言われていますので、柔軟な働き方で優秀な人を採用し、アウトプットを上げることに注力してもらいたいですね。
最近では、限定正社員として人事制度を作るケースもあります。採用ポートフォリオを上手に作りながら、採用を進める時代です。そういった制度設計などのお悩みがあればサポートできますのでぜひお問い合わせいただければと思います。
※ 2025年2月取材時点
- 氏名
- 三原 邦彦(みはら くにひこ)
- 社名
- 株式会社ビースタイルホールディングス
- 役職
- 代表取締役社長