2024年、アニメや映画、ゲームなどのエンターテインメントコンテンツを軸にしたコンテンツ産業の動きが注目された。買い手となるのは、テレビ局や映画会社、大手ゲーム会社。いずれもコンテンツIP(知的財産)を獲得し、ヒット作を創出、グッズ販売やゲーム化、アニメ化などにビジネスを展開して、海外市場の開拓も積極的に進めている。こうしたビジネスモデルのなかで不足する経営資源をM&Aで補っていくのが基本戦略だ。

アニメやゲーム制作を行うコンテンツ制作会社の取り込みが顕著

ビジネスモデルはかねてから変わっていないが、Netflixなどの動画配信プラットフォームの台頭により、クリエーター人材の流動化が始まったこと、また、コンテンツの消費量が増えたことで、人材の需給がタイトになった。こうした流れを受け、ここ数年で起きているのが、アニメやゲームの制作を行うコンテンツ制作会社の取り込みである。

2023年、日本テレビHDがスタジオジブリを買収したのは記憶に新しく、2024年は、東宝によるアニメーションスタジオのサイエンスSARUの買収が発表された。

海外展開の強化では、TBSがコンテンツの販売代理店である米国のBellon Entertainmentを子会社化、東宝は案件を重ねて北米で海外アニメーション作品を配給するGKIDSを買収した。GKIDSは過去に配給した13作品がアカデミー長編アニメ映画賞にノミネートされ、2024年3月にはスタジオジブリの『君たちはどう生きるか』で初受賞を果たした。GKIDSの買収により開拓の余地の大きい海外ビジネスの拡大を加速させる。

アニメ・映像作品化を目的としたコンテンツIPの獲得でひときわ注目を集めたのは、ソニーによるKADOKAWAへの買収意向だ。12月19日にKADOKAWAの株式約10%を保有する資本業務提携で落ち着いたが、ソニーはかつてのようなエレクトロニクス企業からは一転、コンテンツ、それを生み出すプロダクトとサービス、CMOSイメージセンサーという三つのビジネスレイヤーをなし、コンテンツビジネスを重視する姿勢を見せている。2020年に米通信大手AT&Tの子会社でアニメ配信事業「クランチロール」を運営するイレーション・ホールディングスを買収し、海外でのアニメ配信事業を持ち、家庭用ゲーム機「プレイステーション」を始めとして、コンテンツIPを受け入れる企業へと変貌を遂げているのだ。