1716年の創業以来、宮城を中心に東北エリアで木造建築を手がけてきた山大。自社林業から木材加工、建築施工まで一貫した事業展開で、地域に根差した経営を続けてきた同社は、2024年11月、新たな転機を迎えた。人口減少による住宅産業の停滞、復興需要の収束という課題に直面する中、首都圏で事業を展開する住宅内装建材メーカーのビィ・エル・シーを子会社化した。宮城県石巻市に本社を構える山大がなぜ今、東京の同業会社を買収したのか。山大代表取締役社長の髙橋暢介氏に、M&Aに至った経緯や今後の展望を伺った。

―事業内容や特徴を教えてください。

木造建築業を展開しております。当社の特徴は、自社保有の山林から木材を伐採し、住宅用建材として加工までを一貫して行うことです。まず、木材を加工し、加工した建材をハウスメーカーや地域の工務店へ供給しています。

また、住宅のほか、商業施設や公共施設といった非住宅の建設も手がけております。さらに、環境への配慮から、伐採後は新たに植林を行い、持続可能な事業運営を実践しております。

M&A Online

(画像=山大が使う宮城県産材「伊達な杉」、「M&A Online」より引用)

首都圏進出への転換点

―M&Aを検討されたきっかけを教えてください。

2018年頃から検討を始め、市場環境を考慮し、東北地域から北関東圏への進出を構想していました。その後、ビィ・エル・シーさんの現社長である阿部が当社に入社したことにより、北関東圏に進出する本格的な体制が整いました。

展開エリアを北関東の特定地域に絞り込んだ時期に、M&A仲介のストライクから譲受先としてビィ・エル・シーさんの提案をいただきました。

東京近郊への進出には抵抗感がありましたが、埼玉県三郷市の配送拠点が北関東エリアへのアクセスに適していることが分かり、当社の事業拡大戦略と合致したことが決断の要因となりました。

―どのようなシナジーを見込んでのご決断でしたか?

エリアは大前提ですが、得意分野の違いも大きな要因です。当社は日本で古くから用いられてきた在来工法と金物工法を得意とし、ビィ・エル・シーさんは北米発祥のツーバイフォー工法を専門としています。

在来工法は日本の気候風土に適応した木造建築工法で、柱や梁による骨組み構造が特徴です。一方、ツーバイフォー工法は規格化された木材を使用し、壁全体で建物を支える構造で、高い断熱性能と施工速度を誇ります。

これら二つの工法は技術体系や施工方法が大きく異なるため、通常は専門分野を越えた連携が困難です。しかし、互いの工法の特長を活かすことでより質の高い住宅づくりが可能になると考え、この相互補完的な関係がM&Aの決め手の1つとなりました。

―具体的な協業内容について。

現在の宮城を中心とした東北エリアと関東圏では市場規模が大きく異なるため、まずは当社の製品を北関東エリアに展開し、逆にビィ・エル・シーさんの製品を東北エリアに導入することで、双方の事業エリア拡大を目指していきたいと考えています。