復興需要の終焉と新たな挑戦

―復興需要の落ち着きもM&Aの背景にあると伺いました。東北における復興需要が落ち着いた現在の市場環境をどのようにみられていますか?

東日本大震災の被災3県(岩手・宮城・福島)の復興事業は、現在では福島県浪江町の整備を残すのみとなっています。震災後の7、8年間は急速な復興需要により建築ラッシュが続きましたが、これは言わば20年分の需要を先取りした状態でした。

特に沿岸部では、将来の需要を前倒しで消化したことにより、今後の市場の縮小は避けられない状況です。そんな状況下では著しい成長は見込めないので、東北外にもエリアを広げていくことは必要不可欠だと感じています。

一方で、全国各地で地震や豪雨などの自然災害が増加している中、被災地での復興経験を活かし、他地域の災害復興支援にも貢献していく使命があると考えています。

―戸建て需要が縮小する中での経営戦略はどのようにお考えですか?

今後の人口減少は確実であり、それに伴う新築需要の減少は周知の事実です。当社はこれまで、資材の卸売りから建築の請負まで幅広く事業を展開してきました。

当社の強みである施工管理のノウハウを活かしつつ、今後は工事職人の管理体制強化と育成プログラムの確立を進めてまいります。このように、当社は物販から住宅建築のトータルサポート企業への転換を図り、「ヒト」を中心としたサービス提供体制を構築していく所存です。

―今後M&Aを検討される方にメッセージをお願いいたします。

経営者の立場では、従来M&Aについて「買収する側・される側」という単純な図式で考えがちでした。しかし、ビィ・エル・シーさんとの統合を通じて、そのような考え方が現代には適していないことを実感しています。

これからの時代は、一社で頑張るよりも、複数の企業がグループとして結束し、業界のニーズに対応していくことが求められています。特に地域企業においては、同族経営にこだわる必要はありません。M&Aを検討する際は、両社が共通のビジョンを持ち、同じ方向性を確認できれば、それは真剣に検討すべき選択肢です。これは私の経験から得た確信です。

写真・文:M&A Online