KDDIのローソンTOBは小売の手本に?
その他のコンビニチェーンにも目を向けたい。2024年は、KDDIがローソンのTOBを実施し、三菱商事との折半出資による共同経営に移行した。DX(デジタルトランスフォーメーション)の深化による付加価値の高いサービス提供が不可欠と判断。KDDIのテクノロジーに関する知見や会員基盤を活用して新サービスを開発し、未来のコンビニのスタンダードを築きたいとしている。
業界を越えた競争激化はコンビニも同様で、会員基盤の活用も戦略としては同じ。KDDIと共同開発するサービスが先進的なものならば、他の小売にも大きな影響を与えそうだ。業界最大手のセブン&アイHDについても、買収提案受領後、11月になって創業家によるMBO(経営陣による買収)の計画が明るみになり、その動向にも注目が集まる。
勢いづくリユース業界ではM&A頻発
小売で勢いづいたのはリユース業界だ。中古品に対する消費者の意識変化や物価上昇による生活防衛意識の高まり、環境配慮の観点から先々も市場の成長が予測されている。高級時計やブランドバッグを求めるインバウンド需要の回復も市場拡大を後押ししている。
こうしたなかで、2024年にリユース業界では活発なM&Aが発表された。高級ブランド品の取り扱いに定評のある業界大手のコメ兵ホールディングスが越境EC(電子商取引)の強化と海外展開の加速を目指し3件のM&Aを実施。同様にBuySell Technologiesも商品の買取りと販売チャネルの拡大を目的に2件の買収を実行した。
また、ジュエリーの製造・販売を手がけるヨンドシーホールディングスが中古の高級腕時計販売会社の羅針を買収したことも興味深い。新規商材の獲得を目的にしたM&Aだが、異業種参入はそれだけリユース市場が魅力的であることの証。2025年の動きも注目される。
◎2024年小売業を対象とする主なM&A
順位 | 公表日 | 案件内容 | 取引総額 |
1 | 1月11日 | セブン&アイ・ホールディングスが米スノコからコンビニ・ガソリンスタンド204店舗を取得 | 1457億8700万円 |
2 | 7月3日 | アインホールディングスがインテリア・雑貨店のFrancfrancを子会社化 | 499億7600万円 |
3 | 4月2日 | イオン北海道が西友から北海道のスーパー事業を取得 | 170億円 |
4 | 1月5日 | アオキスーパーがMBOで株式を非公開化 | 107億円 |
5 | 10月11日 | ヨンドシーホールディングスが腕時計販売・買い取りの羅針を子会社化 | 105億4200万円 |
6 | 5月13日 | G-7ホールディングスがエルアイイーエイチ傘下で「業務スーパー」フランチャイズ展開のボン・サンテを子会社化 | 47億3500万円 |
7 | 5月9日 | 歯愛メディカルがセブン&アイ・ホールディングス傘下で通販大手のニッセンホールディングスを子会社化 | 41億9900万円 |
8 | 2月29日 | ジェイドグループがファッションECのマガシークを子会社化|NTTドコモと業務提携 | 33億2600万円 |
9 | 9月24日 | ファーマライズホールディングスが経営破綻した寛一商店グループから調剤薬局事業を取得 | 31億円 |
10 | 10月8日 | ワールドと政投銀の折半出資会社がライトオンをTOBで子会社化 | 20億6700万円 |
文:M&A Online