2024年、小売ではドラッグストア業界で大きな動きが出た。イオン子会社でドラッグストアの最大手ウエルシアホールディングスと業界2位のツルハホールディングスが経営統合に向けた協議を開始したからだ。
そのきっかけを生んだのが物言う株主として知られる香港ファンドのオアシス・マネジメント。オアシスはツルハの収益性を課題に挙げ、キャンペーンを展開していた。競合がひしめく中、これから先の日本の人口減少を背景に一店舗あたりの収益低下が避けられず、将来的にドラッグストア業界は大手数社に収れんしていくと主張。上昇やむなしの物流費、人件費などのコストを下げるためにも、経営統合による規模の重要性を訴えていた。
オアシスの提言がどの程度影響したかはわからないが、ウエルシアはツルハと統合する道を歩み始め、ドラッグストア業界の経営の厳しさを知らしめることとなった。
小売業界で加速するM&A、ドラッグストア・スーパーの生き残り戦略
こうした状況は他のドラッグストアも同じ。同一エリアに多店舗展開するドミナント戦略を展開し、調剤薬局との併設、生鮮食品の販売拡大に取り組んでいる。
その中で積極的にM&Aを活用したのがクスリのアオキホールディングスだ。2024年内に6件のスーパーマーケット買収を発表。食品取扱のノウハウの獲得ほか、エリアに見合った店舗改装、品ぞろえを展開していく戦略だ。
スーパーマーケットも状況は厳しい。PB(プライベートブランド)商品の拡大、デリカの拡充、鮮度の高い食材ルートの確保などを進めつつ、ドラッグストア同様にドミナント戦略を掲げて競争優位性を確保しようという動きがある。
M&Aはそれを一気に進める手段として活用され、スケールメリットによる低価格化や店舗投資にも結び付けるための手段として活用された。広島県を基盤とするイズミによる西友の九州地区全69店舗の取得は、その一例といえるものだ。西友は北海道のスーパー事業をイオン北海道にも譲渡している。
耳目を集めたのは、1月に米スノコから店舗を取得するなど、コンビニの海外M&Aを積極的に行ってきたセブン&アイ・ホールディングス。同社は総合スーパーのイトーヨーカ堂ほかヨークベニマルなどスーパーマーケットなど主力のコンビニ以外の事業の経営権を手放すことを決意した。2024年春からIPO(新規株式上場)を視野に入れた事業整理を行う方針を示した。8月にカナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けるなど大きなニュースがあったが、事業整理までの根本をたどればドラッグストアをはじめとした異業種との競争激化がきっかけといえる。
一方、こうした環境下にあって、MBO(経営陣による買収)で非公開化を選んだのがアオキスーパーだ。競争激化とコスト上昇のなかで、持続的な成長を続けることが困難だと判断した。ドラッグストア、スーパーマーケットでは競争環境はさらに激化していくことが予測され、2025年も多数のM&Aが実行されそうだ。