この記事は2025年4月1日に「第一生命経済研究所」で公開された「花見コスト指数は上昇 」を一部編集し、転載したものです。


夏,辛い,食べ物
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目次

  1. 花見コスト指数
  2. 食料インフレ
  3. お花見の予算
  4. 食料品の値上がり

花見コスト指数

新年度がやってきて、季節は明るくなった印象がある。丁度、桜が満開になって、お花見のシーズン到来である。2025年は、東京の桜の満開が3月30日(平年3月31日)だという。

ところが、最近はお花見の費用が高騰してきているようだ。筆者が、テレビ番組に依頼されて、物価高がお花見にどう影響しているのかというデータを調べてみた。筆者が考えたのは、お花見に持っていく食べ物・飲み物14品目を抽出して、その物価水準がコロナ前(2019年平均)よりもどのくらい上昇しているかという視点で、物価指標を作れば、お花見のコストがわかるという内容だ。

花見の定番の食品・飲料として挙げられるものを調べて列挙すると、

(1)おにぎり
(2)弁当
(3)すし弁当
(4)調理パン
(5)やきとり
(6)からあげ
(7)だいふく類
(8)まんじゅう
(9)ポテトチップス
(10)茶飲料
(11)炭酸飲料
(12)ビール
(13)ワイン
(14)チューハイ

になる。これらを消費者物価指数の構成ウエイトで加重平均したものを「花見コスト指数」とした。この指数は、2022年秋くらいから上昇して、消費者物価以上に価格高騰している(図表1)。2024年秋から再び高騰が進んで、2025年2月時点では、2019年平均=コロナ前に比べて、21.4%のコストアップになっていた(図表2)。消費者物価・総合がコロナ前に比較して10.8倍に上昇しているのと比べると、伸び率は約2倍の高騰が起こっていることがわかる。

第一生命経済研究所
(画像=第一生命経済研究所)
第一生命経済研究所
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食料インフレ

花見コスト指数の構成品目の14品目の価格変化を個別に調べると、①まんじゅう、②だいふく類、③炭酸飲料の上昇が目立つ(図表3)。この3つの共通するのは砂糖を材料に使っていることだ。まんじゅう、だいふく類は、材料に小麦も使っている。砂糖の自給率は15%、小麦は13%と低い。自給率が低いと、円安や海外市況の高騰の影響を受けて材料価格が上がりやすい。

第一生命経済研究所
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おにぎりは最近のコメ高騰の影響が出ているのだろう。ポテトチップス、からあげは油の高騰が響いている。

逆に、値下がりはビールと茶飲料である。ビールは2023年10月に酒税法改正で350ミリリットル当たりにかかる税率が70円から63.35円に下がった効果がある。飲料はいずれも価格上昇が小幅だが、炭酸飲料のように砂糖が多く入っていると高騰する。茶飲料は、ペットボトルのお茶なので、容器のプラスチック素材の高騰も影響している。

ここ数年、食料品全体が高騰しているのは、同様に自給率が低く、その裏返しとして輸入物価の高騰の影響を受けやすいからだ。花見コストに限らず、最近の食料品の価格高騰は、物価上昇を牽引している格好だ。

お花見の予算

人々はお花見にどのくらいの費用をかけているのだろうか。ウェザーニュースが毎年調べている調査(お花見調査)では、2025年は1人2,997円になるそうだ。仮に、2019年から2025年にかけて花見コストが1.214倍になっているとするならば、2019年の2,469円だった費用が、+567円ほどコスト増になっている計算になる。お花見の参加者が同じ内容の食事をしようとしても、コロナ前より▲567円分の内容を切り詰めなくてはいけないことになっている。

このウェザーニュースの2019年のお花見費用は2,728円である。これが1.214倍になったと仮定すると、3,312円になる計算だ。それが実際には2,997円なのだから、食べ物・飲み物の内容は逆算して、▲9.5%ほど圧縮されていることになる。つまり、お花見に持っている質や量を約▲1割ほど節約しているということがわかる。

食料品の値上がり

帝国データバンクの調査では、主要な食品メーカーは2025年4月に飲食料品を4,225品目ほど値上げする方針だという。酒類・飲料、菓子がそれぞれ20%、19%の値上げ率になるとされる。そうなると、2月までのデータで計算した花見コスト指数は、3・4月の実績データで計算し直すと、1.214倍よりも高くなっている可能性がある。食料品の高騰は、2025年春以降もさらに継続しそうである。

では、いつくらいに食料品の高騰は落ち着くのあろうか。輸入物価の高騰が原因であれば、円安が一服することが前提条件になるだろう。ドル円レートが対前年比で円安になれば、それは輸入物価の上昇につながる。おそらく、2025年4~6月は対前年比の円安が落ち着いてくるので、食料品インフレは夏場にはやや鎮静化してきてもおかしくはない。ただし、コメ価格高騰は政府の備蓄米放出でもなかなか下がっていかない。この要因だけで、消費者物価指数は+0.30%ポイントも押し上げられている(2025年2月)。コメの高騰が治まらないと、食料品の割高感はしばらく続くとみられる。

第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト 熊野 英生