本記事は、戸田 久実氏の著書『すごいフィードバック~心が動き、行動が変わる!』(かんき出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

すごいフィードバック~心が動き、行動が変わる!
(画像=Peak_River/stock.adobe.com)

約束を守らない取引先にフィードバックをする

取引先だからといってへりくだらない

取引先が相手の場合、問題があっても遠慮して言えないことはありませんか?
でも、たとえ相手が取引先であっても、こちらが一方的に我慢して、言いたいことを言えないような関係にしないことが、ビジネスではとても重要です。

よく「取引先だから」「お客様だから」と言いますが、本来は、自分たちが提供するサービスや商品が、相手の満足を得られるものであれば、なんの問題もありません。たびたび約束を守らなかったり改善が見られなかったりする取引先に迎合することはありません。
相手が約束を忘れてしまっている可能性もありますし、ときには、こちらが受注側だからと軽く見る担当者もいますので、率直に伝えましょう。

◎ 「何月何日に、資料をいただくお約束をしました。ところが、いま現在、そのお約束した日に資料をいただけていない状況です」
◎ 「約束したことなので確認です。守れなかった、間に合わなかった理由も、あわせて教えていただけませんか? その状況を踏まえて、こちらでも進める作業があり、提供するものにも影響を及ぼすので、教えてください」

「約束を守らなかったことにより、こんな影響がある」と伝えることがポイントです。

議事録や音声をとるのもあり

取引先にネガティブなフィードバックをすることで、取引をやめられても困るという思いもあるかもしれません。しかし、過度に遠慮したり、へりくだった言い方をすると、見下されて対等な話し合いができなくなることも考えられます。

× 「いろいろご事情があると思いますし、本当にこんなことを言うのもなんですが、とても困っているもので、やはり言おうかどうしようかと…」

約束を守らなかったことに対してフィードバックをするときには、議事録をとったり、場合によっては録音をすることもおすすめです。
その際、記録に残すことに対して警戒心を示す人もいるので、
「行き違いを防ぐためにも、記録をとりながらお話を伺ってもいいですか?」
とひと言伝えてからにしましょう。
お客様だからと必要以上に遠慮するのではなく、仕事が円滑に進むようによい関係を築くことを心がけたいものですね。

ミスをする担当者にクレームにならないようフィードバックをする

改善案は提案形式で伝える

取引先の担当者のミスが続く場合も、約束を守らなかったときと同様、どんなミスがあったのか、相手と事実を確認してすり合わせをすることが重要です。
「こんなミスをされると困るんですよね」
「そういうの、ありえないですよね」
と責めたり批判したりすると、文句を言われたと思われてしまいます。
「今後、こういうふうに見直してもらえませんか?」
と提案形式で伝えるのがおすすめです。

このときも、
「お互いの認識の違いがあってはいけないので、こちらで記録をとりながらお話を伺います」
と伝え、記録に残しておくと、さらなるトラブルを防げるでしょう。
議事録は、メールで送っておくと共通認識として残しておくことができます。

◎ 「先ほどの議事録です。今後はお互いにこういうことに気をつけたいと思います」
◎ 「確認のために議事録を共有します」

このようにひと言添えて、あまり時間をあけずに共有しておくことが大切です。

嘘をつくタイプには録音が有効

なかには、自分の身を守るため、やりとりを都合のいいように解釈して
「こんなふうにEさんに言われた」
「本当はこうだったのに」
と間違った事実を上司や周囲に触れてまわる人もいます。
そのような嘘をつく危険性を感じる相手なら、証拠として音声での記録を残すのもいいでしょう。

繰り返しになりますが、議事録をとったり録音をするときは、
「お互いの行き違いがあっては今後のやりとりに影響を及ぼしますから、記録をとりながらお話を伺ってもいいですか」
と断りを入れましょう。このとき、「◯◯さんとは共通認識を持ちづらいので」「◯◯さんは忘れてしまうことがあるので」と相手に責任があるような言い方をしてはいけません。
最近はオンラインでAI議事録を使うケースも増えていますが、最初に相手の許可を得ることが必要です。日頃から記録をとって対策しておくことで、クレームと思われずにフィードバックすることができます。
ミスが起こる前に、トラブルを未然に防ぐ方法を考えておきましょう。

すごいフィードバック~心が動き、行動が変わる!
戸田 久実(とだ・くみ)
◎-アドット・コミュニケーション株式会社代表取締役、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事。
◎-立教大学文学部卒業後、株式会社服部セイコー(現セイコーグループ株式会社)にて営業職に就く。その後、音楽業界の企業にて社長秘書を経験。2008年、アドット・コミュニケーション株式会社を設立。2015年、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会の理事に就任、2024年より代表理事を務め、協会運営とアンガーマネジメントの普及に尽力している。
◎-銀行、製薬会社、総合商社、通信会社などの大手民間企業や官公庁で講演、研修講師として活躍。受講者は新入社員から管理職までと幅広い。講師歴30年以上、登壇数は4,500回を超え、指導人数は25万人に及ぶ。
◎-おもな著書に、『アンガーマネジメント』『アサーティブ・コミュニケーション』『アクティブ・リスニング』(日経文庫)、『イラスト&図解コミュニケーション大百科』『アンガーマネジメント怒らない伝え方』『アドラー流たった1分で伝わる言い方』(かんき出版)、『働く女の品格』(毎日新聞出版)など多数。中国、韓国、タイ、台湾でも翻訳出版され、累計25万部を超える。

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