本記事は、戸田 久実氏の著書『すごいフィードバック~心が動き、行動が変わる!』(かんき出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

すごいフィードバック~心が動き、行動が変わる!
(画像=beeboys/stock.adobe.com)

周囲に迷惑をかけたとき

今後どのような影響が出てしまうか理解してもらう

仕事でメンバーがミスをしてしまったとき、本人の経験値によっては、周囲にどのような迷惑をかけてしまったのか、その影響を想像できない人もいます。
ですから、具体的なイメージがわくようにすり合わせることが重要です。
本人に事実確認をしたうえで、次のように伝えてみてください。

上司「Dさんが情報共有しなかったことで、送り先への対処が遅れてしまった。チームみんなで取引先を担当しているので、一生懸命にがんばってきたほかの人たちの取引先との信頼関係まで損ねてしまうことにもつながるよ」
上司「Tさんの提出が遅れることで、次の後工程の仕事をする人のスタートにも影響を与えているんだよ」

このように、その人の行動で周囲にどのような迷惑がかかっているのか、どのような影響が出ているのか、本人が理解できるようにフィードバックすることが大切です。

迷惑をかけたこと自体に意識を向けてもらう

ネガティブフィードバックをする際に、
「どれだけまわりが迷惑したと思っているんだ」
「あなたのことで迷惑をかけられたとみんなが言っている」
といった伝え方をしてしまうと、
「みんながそう思っているんだ。わたしはメンバーに嫌われているんだ…」
と、必要以上に落ち込ませてしまう可能性があります。
ですから、
「あなたも大事なチームの一員なんだから、今後はこういうふうにしてほしい」
という伝え方を意識してみてください。

とくに複数名のチームで取り組んでいるときは、タイミングを逃さず軌道修正しなければ、ほかの人のパフォーマンスにまで影響を与えてしまうかもしれません。
本人が迷惑をかけたことに気づいていない場合は、メンバーが不満を抱え、メンバー同士の関係性が悪化してしまうこともあります。

さらに、それを放置してしまうと、
「なぜ、リーダーは注意をしないのだろう」
と、上司への不信感につながっていくことにもなりかねません。
周囲に迷惑をかけている人がいる場合は、自分のミスがどのような影響を与えているのか、理解できるまで伝えることが大切です。

改善してほしい点があるとき

何をどのように変えたらいいか理解してもらう

相手に改善してほしいときには、当然のことながら「このように改善してほしい」と伝える必要があります。

  • 現状
  • どのように変えたらいいのか

この2点を相手に理解してもらえなければ、問題はどんどんよくない方向へ進んでしまいます。
たとえば、部下が作成した資料へのフィードバックを例に挙げると、
「◎ページに図やグラフを入れたことで、とてもわかりやすかったですね。あとは、□ページからの内容に対して裏づけのデータが掲載されていなかったことで、説得力を欠くことになっていたから、この点について補足してもらえますか」

課題点を指摘する場合でも、「よい点+改善してほしい点」をセットにして伝えましょう。何がOKで、今後どうすればいいのかが伝わるはずです。
当人が意識しなければ結果はよくなりません。
少しでもいい方向へ向かうように、「改善してほしい」というフィードバックは早めにできるといいですね。

すごいフィードバック~心が動き、行動が変わる!
戸田 久実(とだ・くみ)
◎-アドット・コミュニケーション株式会社代表取締役、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事。
◎-立教大学文学部卒業後、株式会社服部セイコー(現セイコーグループ株式会社)にて営業職に就く。その後、音楽業界の企業にて社長秘書を経験。2008年、アドット・コミュニケーション株式会社を設立。2015年、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会の理事に就任、2024年より代表理事を務め、協会運営とアンガーマネジメントの普及に尽力している。
◎-銀行、製薬会社、総合商社、通信会社などの大手民間企業や官公庁で講演、研修講師として活躍。受講者は新入社員から管理職までと幅広い。講師歴30年以上、登壇数は4,500回を超え、指導人数は25万人に及ぶ。
◎-おもな著書に、『アンガーマネジメント』『アサーティブ・コミュニケーション』『アクティブ・リスニング』(日経文庫)、『イラスト&図解コミュニケーション大百科』『アンガーマネジメント怒らない伝え方』『アドラー流たった1分で伝わる言い方』(かんき出版)、『働く女の品格』(毎日新聞出版)など多数。中国、韓国、タイ、台湾でも翻訳出版され、累計25万部を超える。

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