前田建設工業を中核とするインフロニア・ホールディングスは三井住友建設へのTOB(株式公開買い付け)を7月初旬にも始める。約940億円を投じて完全子会社化を目指す。上場ゼネコン(総合建設会社)同士のM&Aは2013年、ハザマと安藤建設が合併して「安藤ハザマ」を発足して以来12年ぶりだ。業界に地殻変動をもたらす契機となるのか。ゼネコン再編・淘汰の変遷を振り返る。
インフロニア、準大手の断トツ首位に
インフロニアHDは2021年、前田建設工業、前田製作所、前田道路のグループ上場3社の経営統合に伴い、その持ち株会社として誕生した。
買収対象の三井住友建設自身も2003年、三井建設と住友建設の合併で発足。バブル崩壊で損失が膨らんだ不動産開発事業の後遺症などで経営危機に陥り、生き残りに向けて旧財閥系のゼネコン同士が身を寄せ合った経緯がある。
インフロニアHDの2025年3月期売上高は8475億円。三井住友建設が加わることで、売上高は単純合計で約1兆3000億円に拡大する。スーパーゼネコンと呼ばれる鹿島、大林組、清水建設、大成建設、竹中工務店の大手5社に続く準大手グループで断トツのトップに立つ。
インフロニアHDといえば、2022年、海洋土木大手の東洋建設の買収(約580億円)に着手したものの、対抗馬が現れてTOBが不成立に終わったことがあり、今回、捲土重来を期す形だ。
バブル崩壊で準大手・中堅が総崩れに
ゼネコンに再編・淘汰の大波が押し寄せたのは1990年代。バブル崩壊後で大幅な受注減と不良資産問題のダブルパンチに見舞われ、準大手・中堅クラスは総崩れの様相を呈した。これに対し、大手5社は多少の順位変動があったにせよ、トップグループの地位を今日まで確固としている。
1997年、東海興業が会社更生法適用を申請し、上場ゼネコンとして戦後初めて倒産した。以降、ゼネコンの経営破たんが雪崩を起こし、日本国土開発、青木建設、佐藤工業、日産建設、大日本土木など20社近くが上場廃止に追い込まれ、その多くが買収された。
青木建設(現青木あすなろ建設)、大都工業(現みらい建設工業)はいずれも高松コンストラクショングループの一員となり、日産建設(現りんかい日産建設)は造船国内最大手の今治造船の傘下に入った。道路舗装最大手のNIPPOは大日本土木を子会社化した。
松村組は現在、パナソニックホールディングスとトヨタ自動車が共同設立した住宅会社・プライムライフテクノロジーズ(東京都港区)の子会社に収まっている。