本記事は、桜井 伸子氏の著書『小さな会社の「温める」商い』(セルバ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

小さな会社の「温める」商い
(画像=Portraits/stock.adobe.com)

事業を潰してしまう本当の理由

商いとは長く続けていくものです。ですが、多くの場合、開業しても長く続かないのが現実です。
事業を潰してしまう理由に「お金」「本人の意欲・ビジョン」があります。

1つ目のお金に関して言えば、「お金儲け」に走りすぎてしまい、顧客との信頼関係を築かないことにあります。信頼を失えば、顧客は離れていきます。また、逆に低単価のまま数ばかりを追い続けることも、事業の持続を難しくする要因です。

また2つ目の「本人の意欲・ビジョン」ですが、商いを長く続けていくためになにより大切なのは、経営者自身が心の温度を保ち続けることです。
どれだけ素晴らしいコンテンツ商品があっても、提供する本人が疲れ果てて未来を見失っているなら本末転倒です。
「なぜ自分が商売をしているのか」というビジョンがないと続きません。
自分自身がどのような未来を望み、その未来に商いを通じて、なにを残したいのかを明確にし、その思いを持ち続けることも大切です。

商いは「あきない」なのに、飽きてしまうのはなぜ?

「商い」は本来「あきない(飽きない)」ものですが、途中で飽きてしまうのはなぜでしょうか。それは、心から商売を楽しめていないからではないかと私は考えます。

では商売を楽しむってなんでしょう? お金を稼ぐこと? 儲けること? もちろん資金面の潤いは必要になりますが、拡大や繁栄ばかりを追い求めたり、数を追うことに集中しすぎたりすると、自分が本当にやりたいこととズレが生じてしまいます。
その結果、やりがいを感じられなくなり、事業そのものに飽きてしまうのです。
やりたいこととのズレが続けば続くほど、心は冷えていきます。
「本当はこんなことがしたかったんじゃない」「でも、稼がなきゃいけないから」と、自分の本音を後回しにした状態が続くと、商いが「あきない」どころか、「苦しいもの」に感じてきてしまうのです。

ここで大切なのは、「なぜこの商いしているのか?」を思い出すことです。どんな想いで始めたのか、誰のために届けたかったのか。原点に立ち返ることで、忘れていた熱や想いが湧きあがります。

思い出すのは、私が銀行員だった頃、ある上司に言われた言葉です。
「お前はお客様に『なぜこの仕事をこの場所で始めたのか』って聞いたことあるか?」と。
私は「なるほど!」と思い、担当先1人ひとりに伺うようにしました。あの一言は「オリジン(起源)」を尋ねるという、とても深い意味があったのです。
人は、自分がその商いを始めた理由を思い出すと、もう一度エネルギーが湧いてくるものです。

今の私は、ブランディングやコンサルの現場でも必ずクライアントにこの質問を投げかけます。
「なぜその仕事をしているんですか?」と。すると、ご自身の起源に立ち返って涙ぐむ方もいらっしゃいます。自分の始まりを語る。原点に立ち戻ること、これは単に商品やサービスではなく心の温度を持ったストーリーなのです。
それを思い出すことが飽きかけた商いの心を取り戻せる大切なトリガーになると私は強く思っています。
商売を楽しむとは「お金のためだけではなく、誰かの心を温められることそのものに喜びを感じること」です。
そして「自分の心が温かい状態でいられる商いを自分の手で選び続けること」だと私は思うのです。

小さな会社は、なぜ「ビジネス」が向かないのか

改めて、ここでいう「小さな会社」とは社長と社員2~3人、オーナーとスタッフ2~3人など少数精鋭や家族経営をしている会社など、あるいは1人で会社を経営している、または個人事業として活動している形態を指します。
こうした小さな会社では、1人が担う業務の幅が広く単純に数をこなすような働き方がそもそも難しいのが現実です。
さらに、介護や子育てと並行して仕事をしている方も多く、毎日フルタイムでがっつり働くスタイルがそぐわない場合も少なくありません。

そして、もう1つ大きな特徴があります。それは「顧客との距離が近い」ということです。
大手企業のように分業されたりシステムに任せたりするのではなく、会社に関わるすべての人が直接顧客と交わることができます。
顧客の声を聴き、信頼関係を築いていくことが求められるし、それが可能であるのです。
つまり、小さな会社にとっての「ビジネス」は、マーケティング戦略や仕組みづくり以上に、商いとしての姿勢が問われます。
ただモノやサービスを売るのではなく、お客様の心を温めることが選ばれ続けるカギになります。
それを忘れてしまうと、距離が近いぶんすぐに温度が下がり、顧客が離れていってしまうのです。
小さな会社には「ビジネス」ではなく「商い」が必要なのです。

小さな会社の「温める」商い
桜井 伸子(さくらい・のぶこ)
株式会社Caldo.代表取締役
大阪で銭湯を営む父から商売の帝王学を幼少の頃から学ぶ。
新卒入社したメガバンクでは営業職でVIP層を担当。
最年少で過去最高の単月2億円の契約を獲得、この年にMVPを受賞。
個人事業主や2-3名の小規模な会社や老舗の二代目オーナーなどに、心の知能指数EQに基づいた客心温を元に接し強固な信頼関係を築き、メガバンク時代に培った洞察力でクライアントの強味や才能を引き出し、時代に左右されないブランディングを構築するプロデュースを展開したことで高単価の顧客が増え続け、遂には月商200万円超えを記録。
その後、コンサルティングなどの依頼が増え、サロンオーナー、セラピスト、鑑定士、子供向け教室運営などの対面事業型の小さな会社のクライアントが急増し、少人数の顧客でも高単価の契約を取れることで、自立した未来を切り拓きたい女性客からの依頼が殺到。
2025年7月にはセルバ出版より初の著書『売り込まない! 少人数の顧客でも高単価の神クライアントをつくる小さな会社の「温める商い」』を刊行。
徹底したリアル戦略で販促体制を整え、予約段階で3刷の増刷実績となり、出版業界でも注目を集める。
出版を通じて、「小さな会社でも豊かに続く温度の商い」を日本全国に広めることを使命とし、著者としても新しい一歩を踏み出している。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます。
小さな会社の「温める」商い
  1. それはビジネスか? それとも商いか? デジタル時代に見落とされる本質
  2. 商いとは「飽きない」こと、それでも心が折れそうになったときに読む話
  3. 高くても売れるのはなぜか? “信頼が価格になる”商いの作法
  4. 顧客の「心の壁」を壊すより、「温度で溶かす」商いの秘訣
  5. 「神クライアント」の5つの特徴! あなたのビジネスを劇的に変える出会いとは
ZUU online library
(※画像をクリックするとZUU online libraryに飛びます)