本記事は、桜井 伸子氏の著書『小さな会社の「温める」商い』(セルバ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

小さな会社の「温める」商い
(画像=Peffy's_Photography/stock.adobe.com)

意外と知らない! ビジネスと商いの違い

あなたがしているのはビジネスですか? それとも商いでしょうか?
この質問に答えることができる人はどれだけいるでしょうか。大前提として、ここを間違えると後々、大変なことになってしまいます。
起業して、発信してSNSも頑張って集客もがんばっているけど、結局あなたがやっているのはビジネスなのか、商いなのか、どちらなのでしょう。
意外なことに、ビジネスと商いは違うということを知らない人が多いのです。ここで簡単に違いを説明します。

  • ビジネスは、戦略的に利益を生み出し、拡大を目指すもの
  • 商いは、人との縁や信頼を大切にし、地道に続けるもの

こう聞いて、あなたがやっているのはどちらだと思いましたか? また、あなたはどちらをやっていきたいでしょうか。
上場を目指して利益出して大きく展開をしていきたいですか?
それとも地域密着を大事にして、長く老舗のような居場所でありたいでしょうか?
どちらがいい悪いではなく、どちらも正解なのです。
しかし、初めに自分がどちらをやっているのかをわかっていないと、方向性を見失ってしまうのです。
本当は自分は商いをやりたいのにビジネスな関わりをして、心が疲弊している、なんていうことが経営者と話していると実際に起こっています。

ある会社の創業者は、もともと商いタイプで人と人のつながりを大切にしていたのに、上場を目指して事業を大きくしていく中で大事な気持ちを忘れてしまい、社員とのズレが生じ倒産寸前にまで追い込まれてしまいました。このような出来事は少なくないのです。

もう一度聞きます。あなたはビジネスをやっていきたいのですか、商いをやっていきたいのですか。
このことを明確にせずに、あなたが内観をせずに、テクニックやマーケティング手法を求めるならば、私はこれ以上、あなたに伝えられることはありません。
なぜなら、正直に申し上げますが、私はビジネスの話はできないからです。私は商いしかしたことがないのですから。
私がお伝えできるのは、ずっと変わらない日本人の持つ「商い」の神髄なのです。

どうやったら温度の交換ができるのか、どうやったら人から紹介が生まれる人になるのか、どうやったらサービス・コンテンツじゃなくて、人に集まるのか。
ごりごりの押し売り、無理やりなセールス、集客はうまくいっても、そのあとのセールスの段階で上手くいかない/申し込みにつながらない、そういう人を多数見てきました。
集客や起業ノウハウについては、たくさん情報が出ています。そうではなく、本書を手に取っていただいた方には、今後もお客様と温度の交換をして長いお付き合いをしていくための、今の時代だから必要不可欠な商いの心得をお伝えしていきます。

小さな会社の9割は「商い」をしなさい

上場を目指したり事業を拡大していきたいという野望を持った経営者以外の小さな会社、地域密着型の経営者や、個人事業主は「商い」をしましょう。
繰り返しになりますが、「商い」とは、人との縁や信頼を大切にし、地道に続けるものです。
小さな会社だからこそ、お客様1人ひとりとの距離が近いことがなによりの強みになります。大企業にはできない「商い」の魅力がたくさんあるのです。
まずは、お客様ごとの細やかな対応が可能です。大手のマニュアル対応ではなく、「この人のために」と考えられるお客様ごとの細やかな対応です。

お客様の変化にすぐ対応できることも商いの特徴です。
「最近こういうのがほしいな」と言われたら、すぐに商品やサービスに反映できます。
大企業のようにいろんなルートを通って決裁を待つ必要がなく、柔軟に動けるのが強みです。
そうすることで1人ひとりの想いを大切にしながら、心を込めたやりとりができるのです。直接「ありがとう」と言われる商売を目指し、心が温まる瞬間を増やせるのが商いではないでしょうか。
さらに、商いはお客様と直接関わることが多いため、お客様とともに成長できます。結果、お客様の人生の記憶に残る存在になれるのです。

商いは「対面が原則」

SNSが台頭している今、スマホ1つで誰とでもつながれる時代になりました。オンラインでのやりとりが当たり前になり、商談や販売、レストランの注文、診察でさえデジタル化されています。
しかし、だからこそ「対面」の価値を見直す時期にきているのです。
商いで本当に大切なのは、「時間と空間の共有」なのです。これはオンラインでは決して完全に再現できないのではないでしょうか。

私はオンラインを否定したいわけではありません。大変恩恵を受けています。遠方の方とお話ししたりできますし、時間の効率もいいですよね。効率を考えたときにはオンラインは外せないです。
ですが、忘れてほしくないのは温度感。人と人との「温度感」までは伝わりにくいのです。
画面越しの会話、メッセージだけのやりとりでは、相手のちょっとした表情の変化や、声のトーン、息づかいといった微細な情報が伝わりにくいのです。

一方で、対面の場では、目を見て話すことができ、相手のちょっとした反応を感じ取ることができます。それが「信頼」につながっていきます。
商いにおいて、商品やサービスのよさだけでなく、「この人から買いたい」「この人になら任せられる」「またお願いしたい」と思ってもらえるのかがカギです。そのためには、直接会って話し、相手の心を感じることが欠かせません。
「このお店はなんとなく居心地がいい」「この人といると安心する」といった感覚は、オンラインでは味わうことが難しいものです。
なぜなら、人は言葉だけでなく、空間や雰囲気によっても多くのことを感じ取っているからです。

たとえば、老舗の和菓子店や高級レストランを訪れたとき、店内の空気、店員の所作、香り、流れる音楽、照明の雰囲気など、五感を通じて「このお店なら信頼できる」と感じることがあります。
このような体験は、対面の場でこそ生まれます。オンラインでの販売やサービスが増えている一方で、「リアルの価値」はむしろ高まっているのです。
対面でのやりとりには、言葉には表せない「温かみ」があります。

たとえば、コンビニの店員が「今日は寒いですね」と声をかけてくれたり、行きつけのお店の店員さんが「最近お仕事忙しそうですね」と気遣ってくれたりすると、それだけで心が温まるものです。
人はそういった昔ながらの商店のような場所を求めているのではないでしょうか。
こうした細やかな心配りは、オンラインのやりとりではなかなか感じ取ることができません。
だからこそ、商いにおいては「対面」を大切にすることで、より長く愛されるつながりを築くことができます。

商いというものは、単なる取引ではありません。「人と人との関係づくり」なのです。
その関係を築くために大切なのは、時間と空間を共有すること。そして、それができるのが「対面」なのです。
デジタルの時代だからこそ、リアルなつながりの価値を見直し、対面での商いを大切にすることが、小さな会社には必要なのです。

小さな会社の「温める」商い
桜井 伸子(さくらい・のぶこ)
株式会社Caldo.代表取締役
大阪で銭湯を営む父から商売の帝王学を幼少の頃から学ぶ。
新卒入社したメガバンクでは営業職でVIP層を担当。
最年少で過去最高の単月2億円の契約を獲得、この年にMVPを受賞。
個人事業主や2-3名の小規模な会社や老舗の二代目オーナーなどに、心の知能指数EQに基づいた客心温を元に接し強固な信頼関係を築き、メガバンク時代に培った洞察力でクライアントの強味や才能を引き出し、時代に左右されないブランディングを構築するプロデュースを展開したことで高単価の顧客が増え続け、遂には月商200万円超えを記録。
その後、コンサルティングなどの依頼が増え、サロンオーナー、セラピスト、鑑定士、子供向け教室運営などの対面事業型の小さな会社のクライアントが急増し、少人数の顧客でも高単価の契約を取れることで、自立した未来を切り拓きたい女性客からの依頼が殺到。
2025年7月にはセルバ出版より初の著書『売り込まない! 少人数の顧客でも高単価の神クライアントをつくる小さな会社の「温める商い」』を刊行。
徹底したリアル戦略で販促体制を整え、予約段階で3刷の増刷実績となり、出版業界でも注目を集める。
出版を通じて、「小さな会社でも豊かに続く温度の商い」を日本全国に広めることを使命とし、著者としても新しい一歩を踏み出している。

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小さな会社の「温める」商い
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