本記事は、桜井 伸子氏の著書『小さな会社の「温める」商い』(セルバ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

顧客の3つの心の壁
商いには段階があり、それぞれに心の壁が存在します。この壁をどうやって壊すのかではなく、温度でどう溶かすか。お客様の心の温度を感じ取る力も必要です。その視点が温かい商いを育むカギになります。
ここで心の壁について説明します。
ステージ① :温度50℃ステージ~認知と信頼の心の壁
まだ知られていない、何者かわからない、接触回数が少ない段階で相手の心を溶かし、「もっと話したい、気になる」と興味関心を持ってもらうフェーズです。
ここを突破することで、心の抵抗をなくし「あなたにお願いしたい」と向こうから申し出てくる段階へと進みます。
誰でもできる、だけど誰もがやらない、やった人だけが非常に大きな効果を得ることができる一番大切な段階です。

ステージ② :温度80℃ステージ~商談発生と成約の心の壁
心の抵抗がなくなり、安心して相互に深い話ができるフェーズです。悩み事、困り事に対して相手から相談が出始めます。
押し売りしなくても解決策を提示でき、相手から感謝をいただきながら商談が成立する状態になります。
ステージ1で信頼の土台固めをしていなければ叶えられないフェーズです。

ステージ③ :温度120℃ステージ~成約後から紹介発生までの心の壁
十分に信頼関係が構築でき、相手の人生の本音を引き出せるフェーズです。相手にとってはサービスや商品だけでなく、関わり方の満足度が高いので、自然と紹介が生まれていきます。
この先、長いお付き合いができる、相手の人生の記憶に残る、そんなライフパートナーのような関係を築いていけます。

心の壁がなぜできるのか
人は最初、誰のこともすぐには信じません。それは冷たいからでもなく疑っているからでもなく、ただ自分を守っているだけなのです。
心の壁は「防衛本能」なのです。
過去の経験から、「もう傷つきたくない」「また同じ目に遭いたくない」などと無意識のうちに心に壁をつくってしまいます。
- しつこく売り込まれた
- 強引に契約させられた
- 商品はよかったのに、対応が冷たかったなど
こういう小さな心の不安や痛みが積み重なると、「またこの人もそうだったらどうしよう」という警戒心が生まれます。
心の壁とは、怖さや不安を隠すためにつくられるものなのです。
情報過多の時代、私たちは「決める」ことが怖いのではないでしょうか。
今の時代は、選択肢が多すぎて、正解がわかりにくいです。
だからこそ、間違えたくない、失敗したくないという気持ちが強くなります。
その結果、人は動かなくなるのです。
「よくわからないから、やめておこう」
これが心の壁の1つです。だからこそ、壊すのではなく「温度で溶かす」ことが大事です。
心の壁は壊さず「温度で溶かす」
そんな心の壁を、勢いで突破しようとすると人はもっと頑なに壁をつくり、ふさぎこんでしまいます。
大切なのは、伝える安心感・じんわりと温めるような関わり方。温度のある声かけ、対応、そういったものが少しずつ心の氷を溶かしていくのです。
あるとき、体験相談に来てくれた女性がいました。
私はいつものように、いきなりサービスの話をするわけではなく、
「どんなことがあって今に至ったのか」
「どんな未来を描いているのか」
「そもそもなにを考えて仕事を始めたのか」
その方の話をじっくり聞かせてもらいました。
途中、何度か鼻を啜る様子があり「そんなふうに聞いてもらえたの、初めてです」と言ってくれました。
その時点では、私から商品や講座の紹介はしませんでした。
ただ、その人の背景に触れたかったのです。
終了後、その方からメッセージが届きました。
「今すぐじゃないけど、あなたとなら一緒に歩んでいける気がします。また相談させてください」
売るより先に、その人を知ろうとする姿勢が、心の氷をゆっくりと溶かしていくのだと、改めて実感したできごとでした。
結局、数か月してお願いしますと申し込みが入ったのでした。
このとき私がしたのは、なにかを売ろうとしたわけでも、説得しようとしたわけでもなく、ただ心の温度を届けることだけだったのです。それだけで人の心の壁はふっとゆるみ、信頼の一歩が育まれるのだと改めて感じた出来事でした。

大阪で銭湯を営む父から商売の帝王学を幼少の頃から学ぶ。
新卒入社したメガバンクでは営業職でVIP層を担当。
最年少で過去最高の単月2億円の契約を獲得、この年にMVPを受賞。
個人事業主や2-3名の小規模な会社や老舗の二代目オーナーなどに、心の知能指数EQに基づいた客心温を元に接し強固な信頼関係を築き、メガバンク時代に培った洞察力でクライアントの強味や才能を引き出し、時代に左右されないブランディングを構築するプロデュースを展開したことで高単価の顧客が増え続け、遂には月商200万円超えを記録。
その後、コンサルティングなどの依頼が増え、サロンオーナー、セラピスト、鑑定士、子供向け教室運営などの対面事業型の小さな会社のクライアントが急増し、少人数の顧客でも高単価の契約を取れることで、自立した未来を切り拓きたい女性客からの依頼が殺到。
2025年7月にはセルバ出版より初の著書『売り込まない! 少人数の顧客でも高単価の神クライアントをつくる小さな会社の「温める商い」』を刊行。
徹底したリアル戦略で販促体制を整え、予約段階で3刷の増刷実績となり、出版業界でも注目を集める。
出版を通じて、「小さな会社でも豊かに続く温度の商い」を日本全国に広めることを使命とし、著者としても新しい一歩を踏み出している。
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