本記事は、桜井 伸子氏の著書『小さな会社の「温める」商い』(セルバ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

小さな会社は少人数&高単価で勝負
小さな会社とは、社長と社員2~3人、オーナーとスタッフ2~3人、あるいは1人で会社を経営している、または個人事業として活動している形態を指します。
小さな会社では、1人が抱える仕事量が多いため、単純に数をこなすことが難しくなります。
さらに、介護や子育てを並行している方も多く、がっつり仕事に時間を費やせない場合もあります。
そのため、お客様との関係を深めながら、無理なく売上を上げていくためには、「少ない顧客数でもしっかりと売上を確保できる仕組み」をつくることが重要です。数を追うのではなく、売上を上げるためには、単価を上げるしかありません。
「売上=数×単価」だと言われますが、本質はそこではありません。
私は、売上は行動量と情熱、そしてお客様との信頼関係の上に成り立つものだと考えています。
売上を伸ばすためには、単に高単価にするのではなく、価値を適切に伝え、価格に納得してもらうことが大切です。
そのためには、お客様との信頼を深め、商品やサービスの価値を正しく理解してもらうことが欠かせません。
小さな会社だからこそできることがあります。それは、お客様1人ひとりに寄り添い、深い関係を築くことです。
大量生産・大量消費のビジネスモデルではなく、お客様に温度を届けながら、事業を成長させていくことが可能です。
結果として、高単価でも選ばれ続ける存在となり、売上の安定につながっていきます。
少人数×高単価はなぜ実現できる?
小さな会社は、少人数×高単価のビジネスモデルを目指すべきです。なぜなら、それが無理のないかたちで続けていけるものだからです。
小さな会社の定義はすでにお話しましたが、そもそもマンパワーが少ないのが前提です。
1人ひとりが多くの役割を担っていて、単純に数をこなす働き方は難しいです。
小さな会社は人とのつながりを大切にしています。
- リアルで人と会う
- 人脈を大事にして足を運ぶ
- じっくり話を聴く
- カスタマイズで商品をつくる
このように、関係性や心を大事にするスタイルを選んでいる人がほとんどです。
でも、そういう時間をしっかりと確保しようとすればするほど、「たくさんの人に安く売る」モデルとはどんどん相性が悪くなっていきます。
そして多くの場合、経営者自身も子育てや介護、自分の体調や家族の事情など仕事だけにフルコミットできない事情を抱えていることが多いです。だからこそ、低単価で数をやる時期を超えたら、しっかりと単価を上げていくことが必要になります。
でも、ここで多くの人がつまずくのです。
「高単価って怖い」
「こんな価格、言っていいのかな?」
「嫌がられないかしら」
「高くしたら、お客様が離れるかもしれない……」
間違えないでください、高単価は技術や肩書きだけじゃ成立しません。それを受け取ってもらうには、温度がないと絶対に無理なのです。
商品やサービスがどれだけ素晴らしくても、そこにあなたの心がなければ価格はただの数字ではないでしょうか。
でも、温度が伝わっていれば「この人だからお願いしたい」「この人にならこの価格でも払いたい」と思ってもらえる。価格は信頼があって払ってもらえるものです。
そしてその信頼は温度によってしか築けません。だから、小さな会社は「温度の通った高単価」を目指し、小さくても大きな価値を届けていきましょう。
収入も時間も豊かになる最短距離「温める商い」
私が自分のコンサル生や、研修・セミナーを受講してくださる方にいつもお伝えしていることがあります。
それは「急がば回れ戦略」です。
これは、一見遠回りに見えるようなことこそが、実は一番の近道になるという考え方です。
スピードや効率が重視される今の時代。「早く売上を出さなきゃ」「今すぐ結果を出さなきゃ」と焦ってしまう気持ちもよくわかります。
でも、信頼関係はどれだけ急いでも、ショートカットできるものではありません。
あるとき、私はあるコミュニティーの相談会で、こんな場面に立ち会いました。
入会を検討している方に対して、運営側の人がこう言ったのです。
「この入会申込書、今書いてください。あとで辞めてもいいので。お金も支払わなくて大丈夫ですから」
なんということでしょうか、その場で入会させることが目的なのです。自分の評価が上がる、数字が増える、といった理由から出た言葉でした。
私はそれを聞いて腹が立ちました。
その人は本気で悩んでいて、時間をかけてでも自分のタイミングで決めたかったのです。
目の前の数が欲しいあまり、相手の気持ちやタイミングは無視されたのです。
急がなければ、信頼関係を築けて後日ご入会につながっていたかもしれません。その焦りや自分の利益欲しさで関係は一瞬で壊れてしまいました。
私はこうした数に追われた商売は、結果的に信頼を失い、リピートも紹介も生まれない遠回りなものだと思っています。
逆に「温める商い」は違います。
- 相手のタイミングを尊重する
- 焦らずに信頼を積み重ねていく
- 売ることよりも届けることに集中する
そうやって心の温度を大切にしながら築いた関係性は長く、深く、豊かに続いていきます。
そして伝えたいのが、「非効率こそ効率である」ということ。一見、非効率に見えることの中にこそ、本当の効率があります。
信頼を積み重ねる過程は時間がかかるように見えて、実はそれが最短の道になるのです。
これこそが収入も時間も豊かになる最短距離なのです。一歩ずつ信頼を積み重ねることで心の距離は自然と縮まっていきます。
急ぐことよりも、1人ひとりと丁寧に向き合う時間こそが、あなたの未来のお客様を育てる時間です。信頼が育つからこそ、価格競争に巻き込まれず、自分らしい商いを続けることができるのです。

大阪で銭湯を営む父から商売の帝王学を幼少の頃から学ぶ。
新卒入社したメガバンクでは営業職でVIP層を担当。
最年少で過去最高の単月2億円の契約を獲得、この年にMVPを受賞。
個人事業主や2-3名の小規模な会社や老舗の二代目オーナーなどに、心の知能指数EQに基づいた客心温を元に接し強固な信頼関係を築き、メガバンク時代に培った洞察力でクライアントの強味や才能を引き出し、時代に左右されないブランディングを構築するプロデュースを展開したことで高単価の顧客が増え続け、遂には月商200万円超えを記録。
その後、コンサルティングなどの依頼が増え、サロンオーナー、セラピスト、鑑定士、子供向け教室運営などの対面事業型の小さな会社のクライアントが急増し、少人数の顧客でも高単価の契約を取れることで、自立した未来を切り拓きたい女性客からの依頼が殺到。
2025年7月にはセルバ出版より初の著書『売り込まない! 少人数の顧客でも高単価の神クライアントをつくる小さな会社の「温める商い」』を刊行。
徹底したリアル戦略で販促体制を整え、予約段階で3刷の増刷実績となり、出版業界でも注目を集める。
出版を通じて、「小さな会社でも豊かに続く温度の商い」を日本全国に広めることを使命とし、著者としても新しい一歩を踏み出している。
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